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ライク・ア・ローリング・ドッグ  作者: 来城
木曜日
9/22

3-4 瀬田

 西通りの駐車場、大通り、駅前の地下駐車場、そして、カフェ/アンシャンテ。全ての事件に少年と少女の姿が目撃されている。特にアンシャンテでは多数の目撃者がいた。

 その情報を元に三棟翔太に同行する少女のモンタージュがつくられた。

 モンタージュは、目撃情報とアンシャンテの監視カメラに残った映像から、これ以上、精巧なモノはできないだろうという代物に仕上がっている。恐らく、少女についてなんらかの情報は得られるはずだ。


「石田。大至急、これを各所に回して来い」

「はい!」


 毎回、返事だけはいいヤツだ。


「……アレ?」


 モンタージュを受け取った石田が、なにかに気づいたような声を出す。


「なんだ?」

「いえ、こっちの子なんですけど……」


 石田は少女のモンタージュを見ながら、胸ポケットの手帳を取り出す。そして、そこに挟んでいた写真を瀬田に差し出してきた。


「ほら、この子に似てませんか?」

「あ?」


 瀬田は、石田から一枚の写真を受け取る。


「……おいおい、どういうことだ」

「え?」

「似てるどころか、まんまじゃねーかよ。おい、誰なんだ、これ。お前の知り合いなのか?」


 瀬田は石田の肩を乱暴に揺さぶる。


「ちょ、や、やめてくださいよ。この子のこと、この間、言ったじゃないですか」

「はぁ? この間?? いつだよ。お前はどうしてそう重要な情報を……」

「捜索願の話、したじゃないっすかー」

「……捜索願?」


 瀬田は、ようやく石田を解放する。

 そういえば、そんな話を訊いたような気がする。確か、殺人じゃなかったから、石田に任せたものだ。


「……それで、この子の名前は?」


 瀬田の問いかけに石田は乱れた上着をなおしながら答える。


「えっと、樫井奈緒。16歳ですね。市内の高校に通っていて、犯罪歴はありません。えーっと、火曜の朝には、もう姿が見えなくなっていたそうです」

「……火曜の朝」


 月曜に西通りの殺人。水曜日に大通り。そして、今日の事件――その現場で目撃されている。


 ――だが、何故だ?

 樫井奈緒には、全くといっていいほど動機がない。被害者同士は、なんの繋がりもないし、三棟翔太の捜査情報にも樫井奈緒という名前はあがったことがない。ただの偶然なのか、それとも、たまたま知り合った二人が共に行動しているのか。

 しかし、どうにも解せない。一介の高校生であった樫井奈緒が理由もなく人を殺して回っているなんて。


「なぁ、石田」

「なんすか?」

「まったく見知らぬ人を理由もなく殺せるもんなのか?」

「……そうっすねぇ。最近の若い奴には多いですよね、衝動殺人って」

「お前はあるのか? 人殺したいって思ったこと」


 飛び級してきた石田は、まだ若い。年齢的には瀬田よりも容疑者に近い。


「ありますよ、瀬田さんとか……あっ!」


 石田はバカだ。瀬田は呆れた目で石田を睨む。


「いや、あの冗談ですよ、冗談……あ、僕、これ回してきますんで。失礼します!」


 石田は逃げるようにその場から飛び出していった。瀬田は息を吐く。


 衝動殺人――瀬田には到底考えられないことだ。

 しかし、確かにそういった行き当たりばったりに行われる事件は多くなってきている。

 繰り返される平和な毎日が彼らには物足りないのかもしれない。

 贅沢な悩みだとは思うが、皆、刺激を求めているだけなのかもしれない。

 瀬田は2人の写真をただじっと見つめた。

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