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ライク・ア・ローリング・ドッグ  作者: 来城
木曜日
7/22

3-2 ナオ


「ねぇ、こんなとこでなにするの?」


 地下駐車場で車を止めたショータにナオは問いかける。


「銃があっても弾がなくなったら意味ないだろ」

「それはそうだけど、それとこれとなにか関係あるの?」

「大有りだ」


 ショータは車から降り、明確な目的がある人の足取りで駐車場の奥へ歩いて行く。ナオは溜息をつき、そのあとを追った。

 少し歩くと、黒いバンが停まっているのが見える。どうやらショータの目的はその車のようだった。


 車を変えるのだろうか? 


 ナオはショータの背中を見つめる。ショータはバンの運転席側に近づき、その窓を規則的に数度叩いた。

 その音が合図だったかのように、パワーウインドウが開く。

 ショータが一言二言、車内の人物と言葉を交わす。

 ナオのいるところからはよく見えない。足を一歩踏み出す。同時に、ガチャリとドアが開いた。


 運転席の男と、助手席からもう一人男が出てくる。どちらも顔を隠している。いかにも怪しい風体だ。

 男たちは、そのままトランクの方へ向かう。その間に、ショータがナオの方へ戻ってきた。


「おい」

「なに?」

「あいつらを殺る。準備しとけ」


 小声でナオに告げると、ショータは男たちの方へ小走りに戻っていく。


「準備って……」


 ナオはゴクリと息を飲み、腰に挟んだ銃に手をかける。

 使い方は、銃をもらってすぐショータに教えてもらった。

 きっと大丈夫だ。そうは思うものの、銃に触れている手が震えるのは止められない。

 心臓がドクドクと鼓動を早くする。恐怖か、それとも、興奮か。

 ナオはショータを見つめる。ショータは男たちとなにやら取引をしているようだった。

 男たちに気づかれないように安全装置を外し、ゆっくり近づく。男の一人がナオを一瞥し、ショータに疑問の視線を投げかけた。


「連れだ。分かるだろ?」


 ショータが意味ありげに笑い、ナオの腰を抱き寄せた。

 男は微かに呆れたような息を漏らし、取引の続きを始める。取引されているのは銃器だった。当然、銃弾もある。

 ショータの目的はこれだったのかとナオは今さらながら気づいた。

 しかし、お金もないのにどうやってこれだけのものを購入するのだろうか? そんなことを考えていると、いつのまにか取引は決裂していた。

 男たちが苛立たしくスーツケースを閉じて立ち上がる。

 その瞬間、ショータが有無を言わさず銃を抜いた。

 パン、と相変わらず軽い音が上がり、男の一人が倒れる。もう一人が銃を出しショータに向ける。

 ナオはその男がショータに銃を撃つより先に銃を撃った。


 反動で体が後ろへ。ふらつきながらも、自分の放った銃弾の行く末を見やる。

 ナオの撃った弾は男の腹に当たったらしい。だが、致命傷ではないようだ。憤怒の表情でナオを睨みつけ、男が銃を向けてくる。

 ナオは慌ててもう一発撃つ。

 今度は足に当たる。男がたまらず倒れこむ。それを見たナオは男に近づき、しっかり頭に狙いを定めて最後の一発を撃ち込んだ。

 やっと男の体が動かなくなる。ナオは呆然と自分が作った死体を見つめた。


 ――見るとするのでは大違いだ。


 ナオは全身に汗をかいていた。


「無駄撃ちが多いな」

「五月蝿い」


 ショータの言葉に言い返す。

 ショータは苦笑を浮かべながら、スーツケースを拾った。中に入っているものを確認していく。

 そうして、全ての確認が済むと、スーツケースを手に元の車の方へ歩き出した。ナオは来た時と同じようにそのあとに続く。


「……それで、どうだった? 初体験は?」


 思い出したようにショータが聞いてくる。


「んー……やったあとはすごく怖かった。死体が襲ってきそうで……でも、今はすっごくいい気分で、また……」

「またやりたい、だろ?」


 ショータがくるくると目を小動物のように動かす。ナオは笑顔で頷いた。


 全身がぶるりと震える。確かに、これはクセになる。

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