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ライク・ア・ローリング・ドッグ  作者: 来城
水曜日
4/22

2-2 ナオ

 車の持ち主を待ち始めてから、かれこれ1時間が過ぎた。

 ショータは待つのが嫌いなのかイライラとした様子で、車の傍を行ったり来たり繰り返している。そんなショータは少し子供っぽい。


「少しは落ち着こうよー」


 ナオはケラケラ笑う。その声にショータが立ち止まり、呆れたようにナオを見やる。


「お前って、気ぃなげーのな」

「あー、よく言われる」

 

 ナオはまた笑う。ナオが上機嫌でいるのにはワケがある。

 車の持ち主が戻ってくると同時にはじまるショータイム。

 きっとショータは、長時間待たせた分の怒りも込めて、車の持ち主を殺すだろう。血しぶきドバーッて感じで。

 きっとすごいショーになるはずだ。楽しみでならない。ナオはニコニコとその時を待つ。


「……お前、なにがそんなに楽しいんだ?」

「なにって――あっ!」


 言葉の途中でナオは声を上げた。


「なんだよ?」


 ショータが眉を寄せる。その目がナオの視線を辿るように動く。そして、悟ったようだ。

 視線の先には、二人が狙っている青いスポーツカーにキーを差し込む男。


「やっと来たか」


 ショータが音も立てずに動き始める。銃を出し、男に忍び寄って行く。

 そして――静かな路地に猛々しい銃声が二度響いた。


 ショータが、一発撃つたびに肘は滑らかに折られ、前腕は優雅に頭の方へ持ち上がる。


「かっこいー」


 ナオは、素直にそう思った。


「おい!」


 ボンヤリ見ていたナオをショータが呼ぶ。ナオは子犬のようにショータの元へ駆け寄った。


「コレやるよ」


 ショータが黒光りする物を差し出してくる。受け取ってみると、それはずっしりと重い――拳銃だった。どうやら、マヌケな格好で倒れている男の持ち物らしい。


「お前も欲しかったんだろ」


 ショータはそう言って笑った。


 2日前、ショータと出会わなければ、こんな感情知らなかっただろう。――今、ナオの世界は世界は、とても充実していた。





 ナオはショータから貰った銃をバッグから出し入れする。嬉しくてならない。

 その隣でショータは、片手ハンドルで運転しながら大きく伸びをしていた。

 この車を奪ってから3時間ずっと運転しっぱなしだ。そろそろ疲れもたまってくる頃なのだろう。


「なんか喋ってくんね?」


 不意にショータが言う。


「なにを?」

「なんでもいい。喋ってないと寝そうだ」


 ショータは、本当に眠たそうに言う。

 それはヤバイと、ナオはなにか楽しい話を考えようとするがいまいち思いつかない。もともとあまり喋るのは得意ではない方だ。


「えーと……」


 そこからがなにも続いてこない。


「じゃぁさ、これからなにしたいこととかあるか?」


 ショータが見かねたように質問する。


 ――したいこと?


「……もっと刺激たっぷりな生活っ!!」


 ナオは少し考えてそう答えた。


「刺激たっぷりか」


 ショータの口元に笑みが浮かぶ。


「そ、だから今度は私が撃ってもいいでしょ?」


 ナオの言葉に、ショータは笑みを深める。


「そりゃ、いいな。お前も誰か殺さないと楽しくなんねーよな」

「そうそう。2人で決めポーズとかしちゃったしてさー」

「それはいらん」

「えー、いいじゃん」

「よくねーよ」


 ショータが笑う。ナオもつられて笑う。

 2人は、まだ出会って2日とは思えないほど仲良く笑った。

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