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ライク・ア・ローリング・ドッグ  作者: 来城
水曜日
3/22

2-1 ショータ

――


気違いじみた夜の中


激情のままに突き進め


――

 ナオと連れ立ってから3日目。

 昨日は都心の安いラブホに泊まった。

 その間、ショータは彼女と色々な話をしていた。

 意外なことにナオは17歳のショータよりも二つ年上の19歳だった。とてもそうは見えない。容姿というか、雰囲気が幼く感じられるのだ。ショータがそう言うと、ナオは微妙な表情で「中二病のせいかな」と言った。


 そんな和やかな夜があけると、待っていたのは不愉快な一日のはじまりだった。

 ホテルを出て車に乗り込むと、エンジンがかからなくなっていた。何度キーを回してもプスンプスンと機嫌の悪い音を立てるだけで、一向にエンジンがかかる様子はない。

 ショータに車を修理する技術はなく、また盗難車であるが故、修理に出すわけにはいかない。

 仕方なく、車はそのままにして、二人は雑踏を歩き始めたのだ。


 あのおんぼろ車め、見た目だけキレイで役に立たない。


 ショータは苛々と歩を進める。

 別に変装はしていない。これまでもそうだったし、これからもそうするつもりだ。今まで問題がなかったのだから、人は歩いている時に他人の顔などさして見ていないのだろう。


「ねぇ、ショータ」


 後ろからナオがのん気な声をかけてくる


「なんだ?」


 ショータはイライラを隠さずに振り返る。

 ナオはそんなショータに呆れたような笑みを浮かべて「私、新しい足が必要だと思うんだけど」と言った。


「は?」

「だから、私たち逃亡中の身じゃん。お金だってあんまりないし、こんな風に歩いていたら、いずれ捕まっちゃうんじゃないかな?」


 真っ当な意見だ。ショータは頷く。


「……しゃーねーな。またやるか」

「うんっ」


 ショータの言葉の意味を知っているであろうナオは楽しそうに頷いた。


 ――ホントにこいつ、俺と会うまで普通に生活してたのか?


 呑気に鼻歌なんかを歌っているナオを見ながらショータは思う。そう思われても仕方のないほどの落ち着きっぷりだった。



※  ※  ※



 大通りから少し外れると違法駐車をしている車がたくさんあった。


「どれがいい?」


 とりあえずショータはナオに聞いてみる。

 ショータの中ではいいと思う車はあったが、一応、ナオの意見も聞いておきかった。


「んー」


 ナオはてろてろと車を見てまわり、ある一つの車の前で泊まる。


「コレ、かっこいー」


 そう言って、ナオが晴れ渡った空のように真っ青なスポーツカーを指差す。それはショータが目を付けていたものと同じで、偶然の一致に、自然と顔がほころんだ。


「あっ、でも、キーないよ」


 今ごろ、気づいたかのようにナオが言う。


「……持ち主、待つか」


 ショータは答えた。

 知識があれば、キーなしでも動かせると聞いたことがあったが、あいにくそんな特殊技能のようなものはない。それならば、奪うまでだ――ショータは腰に挟んでいた銃に触れる。

 ナオはそんなショータをワクワクしたような目で見ていた。

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