6-1 ナオ
――
楽しい終わりなんて
くるわけなかった
――
時計の針が日付の変更を告げるのを見計らって、暗い部屋の中、ナオは身の回りのものを手探りで集めると大急ぎで廊下に出た。
幼い頃、ケンカばかりしている両親の傍にいたくなくて家を飛び出したときのことを思い出す。あの時も誰かに見つからないか気が気じゃなかった。
ナオは不自然じゃない速度でホテルの出口へ向かう。
何気ない仕草でロビーを通り抜け、自動ドアを潜り外へ。一歩、外に出た途端、緊張が解ける。
チラリと後ろを振り返る。カエデやヒカリが追ってくる気配はない。
ナオは深呼吸を一つ、顔を正面に戻す。
これから先は一人だ。どこへ行くのもなにをするのも。
そう考えると気は滅入るばかりだが、立ち止まっていられない。
とりあえず、街に出よう。ナオは思う。
雑踏に紛れて歩けば、今よりは幾分かマシな気分になれるだろう。もし、街に出ても気が晴れなかったらドラッグをやるのもいい。それくらいのお金はあるのだから。
ナオはゆっくりと一歩を踏み出す。
――後悔はしているの?
自分自身に聞いてみる。
答えは、NOだ。ショータと知り合ったことを後悔なんてするわけがない。
――さよならも言わずにあの2人と別れたことは?
別に気にならない。ただ、あの2人には幸せになって欲しいとは思う。
ナオはショータの銃を指の腹で撫でる。すぐ傍にショータがいるようで、なんとなく力が湧いてきた。