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ライク・ア・ローリング・ドッグ  作者: 来城
土曜日
16/22

5-2 ショータ

 太陽がぎらぎらと照りつけている。車のエアコンを全開にしたところで暑いことには変わりない。


「もし、うまくダイヤをものに出来たら、待ち合わせ場所に直行するからな。ダイヤ渡す前に捕まったらシャレになんねーし」


 暑さを紛らわせようとショータはナオに話しかける。


「そうだね」

 

 ナオは短く答え、ふと思い出したように続ける。


「あっ、でも、カエデが一緒に逃げようって言ってた」

「あー、なんかそんな気はしてたんだよな」

「そうなの?」


 ナオが目を丸くする。


「ああ。でも、あいつらは、俺たちとは違うからな。なんか一本信念持ってる気がするし、渡すもん渡したらさっさと別れよう。その方が互いの為だ」

「うん。そうだね。私たちと一緒じゃ、逃げれるものも逃げられなくなるよね」

「そういうこった」


 ショータは、笑いながら頷く。

 そのあとも、家に侵入するときの方法やその次にすべきことなど、いろいろな作戦を二人で話し合ったが、満足のいく答えが見つからないのでやめにした。

 途中で、ナオが言ったのだ。


「計画なんて私たちらしくないよ」と。


 その一言で、作戦会議は終了。

 とりあえず決まったことは、自分たちがアンケートの調査員だってことだけ。そのあとは、きっとどうにかなる。

 行き当たりばったり――それが一番、俺たちらしいやり方だから。





 手入れの行き届いた広い庭。その奥に、窓がいっぱいついた大富豪の家は建っていた。

 灰色の石段。溢れんばかりの花。絵に描いたような庭、絵に描いたような大邸宅。

 ショータが想像していたのは、もっといかにもという感じの悪趣味な豪邸だったが、それとはぜんぜん違って、逆に好感の持てる造りになっている。

 ショータは、呼び鈴を鳴らした。

 ナオと相談した結果、ショータが喋ることになっている。ナオ曰く、そのほうがいいと思う、らしい。

 もし、家に上がるのを断られたら、ナオがすかさず銃を出してムリヤリ中に入る。

 ゲームの最終目的は、ダイヤの入った金庫。その間の過程はポイントにはならない。


 ――ドアが開く。出てきた男は、中肉中背、まぁ普通のおっさんだ。

 ショータは、予定通りに話を進める。男は特に疑う様子もなく2人を家へと招き入れた。

 ヒカリたちの情報通り、男はこんな大邸宅に一人暮らしをしているようだった。中は誰もいない。

 2人にソファを勧めると男はコーヒーを入れにキッチンへと足を運ぶ。

 ソファはふかふかで部屋は明るい。


「すっごい家だね」

 

 ナオがボソッと言った。

 確かに、こんな家はショータもはじめてだった。

 ようやく男がコーヒーを持って、ソファに腰を落ち着ける。その瞬間、ショータは銃を男に突きつけた。

 どんな作戦でいくかは相変わらず思いつかない。とりあえず、銃を前にした男の表情をよく見ようと少し近づいた。

 男は、訝しげに銃を見ている。恐れやパニックとはまったく無縁なのだろうか、顔色一つ変わらない。


「……俺たちのこと知ってるか?」


 ショータは、男に聞いてみる。


「知ってると思うよ」

「そうか。なら話は早い。隣の部屋の奥にダイヤの入った金庫があるよな? それを開けろ」


 男が無抵抗のしるしに両手を宙に上げる。


 やけにあっさりいきすぎる――でも、案外そんなものかもしれない。

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