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ライク・ア・ローリング・ドッグ  作者: 来城
金曜日
10/22

4-1 ナオ

――――――



誰も止める者はいない


飛び出すなら

            

今だ!



――――――

 いつのまにか眠ってしまっていたようだ。運転席にいるはずのショータはいない。


 ――どこに行ったんだろう?


 疑問に思いながらナオは車を降り、座ったままで寝ていたせいで強張った筋肉を解すため、大きく伸びをした。

 冷ややかな空気を含む朝の風が心地よい。寝起きでぼんやりしていた頭も目覚めてくる。

 ナオは辺りを見回す。見たことのない、ただただだだっ広い道路。


 ――こんなところがあったんだなぁ。


 はじめて見る景色に少し感動しながら、ナオはきょろきょろとショータの姿を探す。と、道の先から見慣れたシルエットが走ってくるのが見えた。

 ショータだ。手になにかを持っている。


「ショータ!」


 ナオはショータに手を振る。


「おう、起きたか」


 駆け戻ってきたショータの言葉は、いつものことだが素っ気無い。手に持っていたのは新聞のようだった。


「うん。おはよ。それどうしたの?」

「ああ、あっちにある家から取ってきたんだ。お前も見ろよ」


 人の郵便物を勝手に取ってきても、まったく悪びれる様子はない。

 ――ま、当たり前だけど。ナオは内心苦笑しながら、ショータが広げた一面に視線を落とす。


「一面びっしり、俺たちの特集だ」


 ショータは、興奮しているのか少し顔が紅潮している。


「え? ってか、私の写真載ってるじゃん」


 モンタージュだが、それはかなり似ているように思えた。

 人目の多いところで動いたからそれも当然だろうが、それにしても――


「……まずくない? これ」


 ナオは、顔をしかめる。


「まぁな。でも、よかったな、昨日、ホテルに泊まらなくてさ」


 ショータの心配は、根本的にナオとずれているようだ。


「とりあえず、今日はガンガン走らせるから乗れよ」


 ショータはナオにそう促し、車の運転席へ。ナオは手渡された新聞を綴じ、助手席に乗り込む。


「ガンガン走らせるって、どっか行く宛でもあるの?」


 あれだけ精巧なモンタージュが出てしまったら、これまでみたいに、悠々と街を歩いていられないかもしれない。一体、どこに逃げるというのか?

 そんなナオの不安をよそに「そんなのねーよ」と、ショータがあっけらかんと答える。


「……じゃぁ、どうすんの?」

「そうだな。星に祈りつつ魂の欲するままに動けばいいって。どうするか考えるなんて、俺たちらしくないだろ?」


 ショータはそう言うと、ゆっくりと車を発進させた。


 ――星に祈る、か。それもいいかもね。


 逃げ場なんて、きっととうになくなってる。立ち止まってるヒマはない。なら、欲望のままに突っ走るのみだ。

 ナオは不安になっていた自分を嘲笑するような笑みを口元に浮かべると、車の振動を子守歌に再び眠りについた。

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