第五話 伝説の装備を見た俺
通された宝物庫で俺は泣いた。
すっげーしょぼい。
こいつらはギンギラギンでケバケバしいのに宝物庫がほぼ空とは。
まあ俺には関係ないか。
さっさと貰うもん貰っておさらばするだけだしな。
宝物庫の中をお妃さまの後を追って、ついでに物色する。
たいした量もなく、指輪とか腕輪が黒い台の上にぽつぽつ転がってるだけだ。
まじでしょぼい。
こんなところに勇者の装備なんてほんとにあるのかよ?
あたりを見回しため息を吐きかける。
『なぁんじゃお主!いったいどこに目をつけておるのじゃ!妾の可憐な姿が目に入らぬのか!?この無礼者がっ!』
「ぃ!」
うろうろ纏わりつくちっちぇえのを無視していたら、怒鳴られたうえブーツの踵で足を踏まれた。
それなんて凶器。
急に蹲った俺をお妃さまが不思議そうに振り返る。
何でもないですと立ち上がったが、背中には銀髪幼女が首を絞めるようにぶら下がっている。
みんな総スルーなので無視していたが、これはいただけない。
半分透けてるからきっと幽霊だ。宝物庫に住み着く幽霊・・・おお、恐ろしや。
『なっ、妾は幽霊などではないわ!』
器用にぶら下がりつつ後頭部を強打される。
まじで痛い。それと俺そんな趣味ないからね?
あと人の思考を勝手に読まないでほしい。
後頭部をさすりながらたどり着いたのは、そんなに広くない宝物庫の一番奥だった。
そこには燦然と輝く鎧・・・ではなく、一枚のマントがあった。
壁に掲げられた古ぼけた茶色の、ポンチョみたいな・・・
なにこれ。絶対魔王倒せないだろ。
むしろ足手まとい、
『見てわからぬか!』
人の背中を蹴って飛び降りると、そこから「とうっ」と掛け声一発、マントの手前に華麗に着地する。
しゃがんだ背中を向ける、黒いドレスに銀髪縦ロールの半透け幽霊。
もったいをつけてゆっくり立ち上がると、さらっと手で髪を払いながら振り返った。
『妾こそ数百年の時を経て今ここに復活せし・・・お主、何をやっておる?』
俺はさっきお前に蹴られたせいでぶっ倒れてるんだよ。
訝しげな眼差しを向けてくるのはこいつだけじゃない。
お妃さまも見てるし後ろの5人の視線も感じる。
よろりと立ち上がり、何事もなかったようにお妃さまを見た。
「これがそうですか?」
「え、ええ、そうですわ。今まで誰も装備できたものがいないといわれておりますの。」
装備する気がなかっただけじゃないのか?
改めて見てみても、ただの古ぼけたポンチョ、
『うっさいわこのたわけ!』
「ぁがっ!」
横から飛び膝蹴りを脇腹に食らって俺は悶絶した。
それがどう見えたのか、お妃さまが「やはり伝説の装備だったのですわ!」とか言い出すし後ろでは「これが継承の儀式!?」とか言ってるヤツもいるし。
俺は本気で泣いた。