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04 捕獲作戦

―――――――――――――――

 9月1日 夕方 新学期二日目

  学校

―――――――――――――――

「拓郎、駅前のドーナツ屋の割引券今日までだから行かない?」


 と緋鞠が誘いに来るが……。

 

「悪い、今日はちょっと用事が」

「バイト?」

「いや、バイトじゃなくて」

「お待たせたくろー。早速行こう」


 説明しようとしたタイミングで寝屋の奴が来た。

 間の悪い……。

 

「この辺とかが統計的に良い感じー」


 当たり前のように、ダンジョンの出現マップを見せようとしてくる寝屋の手を掴んで止める。

 

「その話は後で……緋鞠、すまん。今日は寝屋との約束がある」

「寝屋ちゃんと?」


 緋鞠の表情は露骨に訝しげ。

 確かに、高校入ってから帰りに寝屋とどこかに行くような事は殆どなかった。

 主に俺が忙しがってたからなんだが……。

 

「珍しいね」

「ちょっと相談事ー。お兄ちゃん借りていくねー」

「それは悪質なデマだから。私が姉」

「そうなのー?」


 どっち? と視線で問いかけてくるが、愚問だ。

 原則俺が兄。


「後、蛍火散歩に連れて行くから!」

「あ、うん。分かった」


 とは言っているが、背中に突き刺さる疑惑の視線。


「何で止めたのー?」

「緋鞠には探索者やってること言ってないんだよ」


 校舎を出て、周囲に人が居なくなった辺りで俺はそう答える。


「あんまり関わらせたくない」

「うーん、多分だけど―。そのうち気付くと思うよー?」


 だから先に自分から言っておけと暗に寝屋は言うが、俺はそれには答えなかった。

 分かってる。

 緋鞠は馬鹿じゃない。

 俺が何かやっているなんてもう気付いているだろう。

 

 彼女をだましている罪悪感。

 それを覚えてでも……俺は関わってほしくないと思ってしまう。

 この、訳も分からず命を狙われるような非日常に。

 

 家によって蛍火を回収。

 

「……蛍火、後を尾けている気配は?」

「ありません」


 当初寝屋はストーカーと言いつつ気のせいかもと言っていた。

 それを確定としたのは蛍火の一言だ。

 

 ダンジョンから寝屋の家までの間、誰かにつけ回されていたという。

 

「ただの人間なら、私が確実に察知できます。お任せください」


 言われてみれば犬科だものな。臭いの探知はお手の物か。

 

「じゃあ尾行対策は蛍火に任せるとして」

「ダンジョンへごー」


 つまり、当分の間放課後は寝屋を送り迎えしつつダンジョンを攻略して行くという形になる。

 

「チーム登録出来たー」

「悪い、助かるよ」


 今回俺と寝屋はチーム登録を行っている。

 リーダーにした寝屋が入れるダンジョンは、メンバーも一緒に入れる――つまり、☆2ダンジョンへ行けるようになる。

 

「たくろー。今日は何時間潜れるー?」


 場所を見る。俺達二人の移動の事を考えると、学校の近くが一番楽だった。

 幸い、と言っていいのか歩いていける範囲に一つあったダンジョンが今回の狙いだ。


「……移動時間とか明日の事考えると、外で一時間くらいだな」

「じゃあ、今日は休みつつ二層くらいだー」


 と、そんな算段を立てながらダンジョンへと突入し――。

 

 ……一気に四層突破してしまった。

 

「びっくりだ」

「びっくりだねー」


 原因はシンプルだ。

 蛍火である。

 

 ジャイアントビートルに加えて、寝屋のがーちゃん、あるくんがしっかりと俺たちの守りを固めた結果。

 蛍火が完全にフリーになった。

 

 そして縦横無尽に暴れまわる。

 

 それはフロアマスター戦でも同様。

 敵の攻撃を紙一重で避けつつ、張り付きながら只管拳を蹴りを叩き込んでいくストロングスタイル。

 

 曰く、瞬間移動してくるユニークモンスターに比べれば、見えるだけ全然マシとのこと。

 

「なんだか、私強くなった気がします!」

「レベルは上がってないんだけどなあ……」

「もしかしたらスキル増えてるかもー」


 と寝屋がぽつり。

 

「スキル?」

「Eランクになったらスキャンで見れる情報が増えるー。モンスターの技能とかも見れるようになるよー」

「マジか」


 探索者用スマホに入っているスキャンアプリは、実際のところ召喚ブレスレットと連動しているらしい。

 なので、詳細なスキャンが出来るのは自分のモンスターだけ。

 

「レベルアップとか、強敵との戦いで覚えることもあるってー」


 だとしたら、ユニークモンスターとの戦いが契機か?

 蛍火がどんなスキルを覚えているか気になるが、それは俺がEランクに上がれた時に取っておこう。

 

「でも魔石少ないねー」

「……蛍火の戦闘力からすると10層まではもう適正から外れてるんだよな」


 正直寝屋と組めたのは助かる。

 ☆2ダンジョンの11層以下なら蛍火でも適正だろう。


「もう一層行っとくー?」

「……いや、今日はここまでにしておこう」


 歩いた距離は相当だ。

 休み休みの攻略ではあったが、明日へ疲れを残さない為にもこの辺で切り上げよう。

 

「寝屋の方はデータは取れたのか?」

「ばっちりー。これを今晩解析にかけてみるーたのしみー」


 生憎と、今日のモンスター構造的には一貫して火属性だったので、衝突ダンジョンの可能性は低いのだが……。

 寝屋が楽しそうにしているので言わないでおこう。

 

 ダンジョンから外に出ると眩しさで目が眩む。

 

 歩き始めてすぐ、蛍火がくーんと情けない声で鳴く。

 隣を歩いてる寝屋の身体が強張った。

 

 事前に決めていた合図……誰かに後をつけられているという。

 

 だけど早すぎないか!? まだダンジョンを出て数分……待ち構えていたのか?

 

 だとしたら、相手は相当粘着質だぞ。

 

「そこの角を曲がったら走って引き離すぞ」


 自分たちで捕まえる、というのも考えたがダンジョンの中なら兎も角外ではただの高校生。

 蛍火の力を借りればどうとでもなるかもしれないが、それは本当の本当に最終手段。

 

「行くぞ!」


 寝屋の手を引いて走り出す。

 蛍火の唸るような声――追ってきた合図!

 

 まさかここで走って追いかけて来るとは……。

 

「気合、入ってる、ストーカーだな!」


 振り切る予定だったが計画変更。

 人通りの多い所へ逃げ込む。

 

 正直、こいつが何をしてくるか予想が出来ない。

 

 駅前に、辿り着いて俺は後ろを振り向く。

 

 見えるのは普通の人混み。ちらほらとうちの制服が見えるくらいだ。

 不審な人影は、見当たらない。

 

「振り切った……いや、諦めたのか?」


 いや、蛍火が微かに唸っている。

 まだ、近くに気配があるという事だ。


「たくろー、もしかしたら、ストーカーじゃないかもー」


 ちょっと寝屋が嫌そうに顔を顰めていた。

 

「所謂、研究スパイって奴かもしれないー」

「それは……読んで字の如く?」


 研究を盗み出すスパイ……そりゃ世の中にはいるのだろうが。

 

「……こういっちゃなんだけど、寝屋の研究ってそんな価値あるものなのか?」

「私に頼っておいてその言い草ー」

「すまん」

「でも実際そうー。衝突ダンジョンの研究なんてそんなに価値がないー」


 あったら、佳作じゃなくて大賞だったとある意味納得の理由。

 

「でも、他に私が狙われる理由がないしー」

「いや、普通に可愛いからってのも理由になるだろ」


 好みはあるだろうけど、寝屋は可愛い側に属する人間だ。

 単純に恋愛感情からのストーカーもあり得る。

 

 一体相手は何が狙いなのか。

 目的が分かればもう少し対処のしようもあるんだけどな……。

 

 或いはもう、誰かにつけられてるのは確定なので犯人捜しは警察に任せてしまうというのも一つか……?

 

 考え込んでいると、寝屋にふくらはぎを蹴られた。あんまりいたくない。

 

「たくろーはー、誰にでもー、そういうこと言うのー、やめるべきー」

「四度も蹴るな。何がだよ」

「分かってないのが罪深いー」


 真剣に寝屋の事を考えていたというのに、何故蹴られないといけないのか。

 そんなことを考えていたので――この一部始終を寄り道していた緋鞠が見ていたことに気付かなかった。

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