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錆びた妖刀と落ちこぼれ当主 ~現代に潜む妖怪を従え、奪われた家名を取り戻すまで~  作者: 橘壮馬


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第6話 錆び落ちる刃

一対多数の乱戦。

しかし、覚醒した妖刀は、素人の剣術を凌駕します。

 四方八方から、獣の臭いが押し寄せる。

 飛びかかってくる『野衾のぶすま』の鋭い爪。

 普通なら、反応すらできずに喉を掻き切られていただろう。

 だが。

(――見える)

 スッ、と世界がスローモーションのように感じられた。

 意識するよりも早く、右手が勝手に動く。

 ヒュンッ。

 風を切る音と共に、僕の目の前に迫っていた野衾の首が宙を舞った。

 血飛沫を浴びるよりも早く、僕は次の敵へと踏み込んでいる。

『右だ』

 脳内に響く声に従い、体を捻る。

 直後、僕の頬を爪が掠めていった。

 回避と同時に、逆袈裟に斬り上げる。

 ズパァッ!

 硬い毛皮も、強靭な筋肉も関係ない。

 まるで豆腐でも切るような手応えのなさ。

 僕の腕力じゃない。刀が、自ら軌道を描いて敵を断ち切っているのだ。

(これが、天城の刀の力……!)

 呼吸をするように自然に、流れるように斬る。

 一歩動くたびに、一体が黒い霧となって消える。

 恐怖はいつしか消え去り、ある種のトランス状態のような高揚感が支配していた。

 十体以上いた野衾が、最後の霧となって消えるまで、体感で三分もかからなかっただろうか。

「はぁ……はぁ……」

 残心。

 静寂が戻った廃墟で、僕は荒い息を吐いた。

 刀を見る。

 野衾たちの血を吸った刀身からは、さらにボロボロと赤錆が落ちていた。

 中央あたりまで、濡れたような鈍色の輝きが戻っている。

『悪くない切れ味だ。だが、まだ足りぬな』

「……グルメな刀だな」

 僕は苦笑しながら、散らばった『妖石』を回収した。

 これだけあれば、しばらくの食費には困らないだろう。

 戦いを終え、僕は目的の『蔵』の前に立った。

 分厚い土壁は焼け焦げているが、鉄の扉は健在だ。

 鍵は壊されている。おそらく、久遠寺の連中が中の物を運び出した後なのだろう。

 重い扉を、ギギギ……と押し開ける。

 中は、もぬけの殻だった。

 家宝の骨董品も、古文書も、すべて持ち去られている。

 棚は倒され、床にはゴミが散乱していた。

「……やっぱり、何も残ってないか」

 落胆しかけた、その時だ。

 手の中の刀が、小さく震えた。

『床下だ。我が主よ』

「床下?」

 言われるままに、奥の床板を剥がしてみる。

 そこには、埃にまみれた細長い木箱が隠されていた。

 略奪者たちも見落とした、隠し収納だ。

 ゴクリ、と唾を飲み込み、蓋を開ける。

 中に入っていたのは――黒塗りの『鞘』だった。

 装飾のない、無骨な黒鞘。

 だが、その表面には微かに金色の粒子が混ざり、星空のように輝いている。

「これ……お前の鞘か?」

 試しに、剥き出しの刀を納めてみる。

 カチン。

 吸い込まれるように収まり、小気味よい音が響いた。

 まるで、最初からこうあるべきだったかのように。

 その瞬間、僕の腰回りにフワリと温かい霊力が宿るのを感じた。

『久しいな。我が半身よ』

 刀が満足げに唸る。

 これでようやく、竹刀袋に入れて持ち歩く怪しい高校生を卒業できる。

 僕は腰帯に鞘を差し、廃墟を後にしようとした。

 だが、出口へ向かう僕の足を、不意に呼び止める声があった。

「――誰だ? 僕の飼育場で勝手な真似をしているのは」

 心臓が凍りつくような、冷徹な声。

 フェンスの向こう、月明かりを背に立っていたのは。

 昼間、教室で僕を嘲笑った男――久遠寺蓮だった。

ついに鞘をゲット。これで帯刀が楽になります。

そして、最悪のタイミングでライバルとの遭遇。

次回、因縁の対決……?

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