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錆びた妖刀と落ちこぼれ当主 ~現代に潜む妖怪を従え、奪われた家名を取り戻すまで~  作者: 橘壮馬


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第3話 黒い石

戦闘終了後の処理と、レベルアップ(?)回です。

 餓鬼が消滅した路地裏に、静寂が戻ってくる。

 僕はゆっくりと息を吐き、刀を振って残心ざんしんをとった。

 同時に、身体を包んでいた青白い光が霧散していく。

 凛とした和装の感触が消え、いつもの薄汚れた学生服の重さが戻ってきた。

 変身が解けたのだ。

「……ふぅ」

 ドッと疲れが押し寄せてくる。

 膝に手を突いて呼吸を整えていると、カツン、と足元で音がした。

 餓鬼が消えた場所に落ちていた、小石ほどの大きさの『黒い石』だ。

(妖怪の核……か)

 一般的には『妖石』と呼ばれるものだ。退魔師の市場に売れば、数千円にはなるだろうか。

 今の僕には喉から手が出るほど欲しい臨時収入だ。

 拾おうとして、手を伸ばした瞬間だった。

『寄越せ』

「え?」

 頭の中にあの声が響くと同時に、手に持っていた錆びた刀が勝手に動いた。

 切っ先がまるで生き物のように地面の『石』に触れる。

 ジュワッ。

 石が溶けるような音がしたかと思うと、一瞬で刀身に吸い込まれてしまった。

 と同時に、ボロボロと刀身から赤錆が剥がれ落ちていく。

『……ふん、下級妖怪の核ひとつでは、腹の足しにもならんな』

 不満げな声だが、刀身を見ると、切っ先から五寸ほどが輝きを取り戻していた。

 どうやら、この刀は妖怪を喰らって本来の力を取り戻していくらしい。

(売れば金になったのに……)

 少しだけ惜しい気持ちになったが、命を救ってくれた相棒だ。文句は言えない。

 僕は刀を竹刀袋に納め、ようやく背後を振り返った。

「あ、あの……!」

 腰を抜かしていた女子生徒が、ようやく声を絞り出す。

 助けた手前、無視して立ち去るわけにもいかない。

「怪我はない?」

 努めて冷静に声をかける。

 街灯の光の下で、彼女の顔がはっきりと見えた。

 肩まで切り揃えられた黒髪に、少しつり上がった意志の強そうな瞳。

 見覚えがある。

「き、君は……C組の、天城くん?」

 やっぱりだ。

 隣のクラスの委員長、如月さんだ。

 学校では目立たない、というか「貧乏な没落貴族」として浮いている僕の名前を知っているとは思わなかった。

「……そうだけど」

「今の、何? あの着物と、刀……それにあの怪物は……」

「ガス中毒の幻覚だよ。君は疲れてるんだ」

 僕は無理やりな嘘をついて、背を向けた。

 一般人を巻き込むわけにはいかないし、僕が「力」を取り戻しつつあることを知られるのはマズい。

「待って!」

 立ち去ろうとする僕の制服の裾を、彼女が掴んだ。

 振り返ると、彼女は震えながらも、真っ直ぐに僕を見ていた。

「私には見えた。君が、助けてくれたこと」

「……」

「ありがとう。……このことは、誰にも言わないから」

 その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。

 僕は短く「どういたしまして」とだけ返し、今度こそ路地裏を後にした。

 背中越しに、彼女がずっと僕を見送っている気配がした。

刀が妖怪ドロップアイテムを食べて成長するシステムです。

助けた如月さんは、今後どう関わってくるのか。

次回、学校生活と、嫌味なライバルの登場。

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