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錆びた妖刀と落ちこぼれ当主 ~現代に潜む妖怪を従え、奪われた家名を取り戻すまで~  作者: 橘壮馬


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第2話 覚醒

主人公、覚醒回です。

「グガアアアッ!」

 耳をつんざくような咆哮とともに、餓鬼の鋭い爪が迫る。

 僕はとっさに赤錆の刀を盾にした。

 ガギィンッ!!

 重い衝撃が手首に走る。

 刀身が砕けることはなかったが、僕は勢いに負けてアスファルトの上に転がった。

「うぐっ……!」

「君、逃げて……!」

 背後で腰を抜かしている女子生徒が、震える声で叫ぶ。

 逃げたい。今すぐこの場から全力疾走したい。

 この刀は、今はただの鉄屑だ。斬れ味なんてない。叩いて怯ませることしかできない「鈍器」だ。

(でも……!)

 ここで逃げたら、天城の名が泣く。

 なにより、あの日の「兄様」のように、弱い者を笑う側にはなりたくない。

「ハアッ!」

 僕は立ち上がり、無我夢中で刀を振るった。

 だが、餓鬼の皮膚はゴムのように分厚い。錆びた刃は皮膚を滑り、浅い傷一つつかない。

「効カヌ……!」

 餓鬼がニヤリと笑った気がした。

 次の瞬間、裏拳が僕の横腹にめり込む。

「がはっ!?」

 体がくの字に折れ、ゴミ捨て場へと吹き飛ばされた。

 視界が明滅する。激痛で呼吸ができない。

 口の中が鉄の味で満たされる。血だ。

 餓鬼がゆっくりと近づいてくる。

 死ぬ。ここで終わるのか。

 家を取り戻すことも、あいつらに一泡吹かせることもできずに。

(ふざけるな……)

 悔しさが涙となって滲む。

 僕は切れた唇から垂れる血を拭い、刀の柄を強く握りしめた。

 その時。

 僕の手についた血が、錆びついた刀身に吸い込まれていくのが見えた。

『――渇いているな』

 頭の中に、直接響く声。

 低く、地を這うような、けれどどこか懐かしい声。

『力が欲しいか。我が主よ』

「……当たり前だろ」

 僕はうわ言のように呟く。

「力がなきゃ、何も守れない……! 力を貸せ、天城の刀!」

『よかろう。契約は成った』

 ドクンッ!!

 心臓が大きく跳ねた。

 刀から爆発的な熱量が流れ込んでくる。

 錆びついていた刀身が、カサブタが剥がれるように赤光を放ち始めた。

「な、ナニ……!?」

 餓鬼が動きを止める。

 僕の体を、青白い霊力が包み込んだ。

 ボロボロの制服が光に溶け、書き換わっていく。

 顕現したのは、眩い純白の着流し。

 そして、白銀の袴。

 天城家当主が、戦いの儀で纏う正装――『狩衣』姿だ。

「身体が、軽い……」

 さっきまでの痛みがない。

 手の中にある刀は、まだ錆びている。けれど、そこから立ち上る霊気は、先ほどとは別物だった。

「グルァアアアッ!」

 恐怖を感じたのか、餓鬼が捨て身の特攻を仕掛けてくる。

 遅い。

 止まって見える。

 僕は自然と足を前に踏み出し、刀を一閃させた。

「――天城流剣術、『不知火しらぬい』」

 ザンッ――!!

 手応えすら、なかった。

 すれ違いざま、餓鬼の巨体が上下にずれる

 遅れて噴き出す黒い霧。

 餓鬼は断末魔すら上げることなく、霧となって消滅した。

 後に残ったのは、静寂と、カランと音を立てて落ちた小さな『黒い石』だけ。

 ふと刀を見ると、刀身を覆っていた赤錆の一部がパラパラと崩れ落ちた。

 切っ先の一寸だけが、月光を反射して鋭く輝いている。

『ふん……まずはこんなものか』

 刀から、満足げな声が聞こえた気がした。

ついに覚醒!

普段は制服、戦闘時は和装。このギャップを楽しんでいただければ幸いです。

次回、助けたヒロイン(?)との会話と、ドロップアイテムについて。

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