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小さな探偵、愛理の事件簿  作者: けろよん


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第17話 熊との戦い

 事件が解決したと思ったその瞬間、突如として山の中に響く、耳をつんざくような大きな咆哮がスタジオの中にまで響き渡った。全員がその音に驚き、瞬時に緊急事態が起きた事を理解していた。


「なんだ……!? あの音は!」


 和宏が顔をしかめて言った。愛理も慎重に身構える。


「まるで山の神の怒りのようです」

「熊だ……! 熊が来たんだ!」


 金井がすぐに状況を理解して猟銃を掴もうとするが、愛理のした拘束がしっかりしていたので身動きが取れなかった。

 桜子は震えながら言った。


「ああ……熊の声! どうして……? スタジオの周りには熊が入ってこれないようにバリケードを敷いていたのに……」


 その言葉で愛理は全てを理解した。熊はバリケードが無くなった事に気付いたのだ。今まで事件の裏に潜んでいた狡猾な犯人がこのチャンスを見逃すはずがなかった。

 その瞬間、スタジオの玄関の横の窓をぶち破って、巨大な熊が突然、目の前に現れた。目つきは凶暴で、体格も大きく、まるで獲物を見つけたかのように唸っていた。


「く、熊が……!」


 和宏は一歩後退りながら、愛理を見つめた。


「愛理ちゃん、逃げた方が!」

「いえ、駄目です。あの熊は私たちを見逃しません。それに私も犯人を見逃したくはありませんから」

「だったら僕たちも協力して……!」


 愛理はその言葉を聞くことなく、冷静に身構えた。


「和宏さんは桜子さんを守っていてください。やっと再会できたんですから。ここは私に任せてください」


 愛理は勇敢にも熊の前に立ちはだかる。

 和宏はそれを驚いたが、愛理がその小さな体にどれほどの実力を持っているかを知った今、もう何も言わずに彼女を信じることしかできなかった。


「探偵さん、大丈夫なの……?」

「大丈夫だ。僕と桜子を引き合わせてくれた探偵さんを信じよう」


 みんなの見ている前で探偵と犯人の最期の戦いが始まろうとしていた。




 愛理は無言で拳を構える。さすがに熊が相手では緊張の汗が流れてしまうが、逃げる場所も理由もなかった。

 相手を差し出された小物と見たのだろう。熊が猛然と駆け寄ってきた。体全体を大きく振り上げ、恐ろしい牙をむき出しにして愛理に向かって襲い掛かろうとしたその瞬間、愛理は素早く動き、熊の攻撃を避けた。

 熊は壁に向かって突っ込んだが、それで倒れる事はせず、ゆっくりと振り返ると愛理を睨みつけてきた。


「来なさい。あなたの相手は探偵ですよ」


 愛理の声は冷静だったが、そこには僅かの焦りがあった。

 熊はそのまま愛理に突進してきたが、愛理は一瞬で身をかわし、熊の後ろに回り込んだ。その途中で相手の足を払う。

 熊の体勢が崩れ、愛理はその隙を逃さず、熊の背中に素早く乗り込み、両手で熊を掴んで地面に投げ飛ばす。


「凄い! 熊を投げたぞ!」


 和宏が驚愕の声を上げた。熊はさらに反撃してくるが、愛理は無駄なく動きを制御して裁き続けた。


「凄い、熊と戦える人間がいるなんて」

「あれが愛理ちゃんなんだ!」


 熊は地面に倒れ込み、さらに激しく反撃しようとした。しかし、愛理はすぐに立ち上がり、熊の頭に一発、鋭い蹴りを入れた。


 その一撃で熊はしばらく動きを止め、愛理はその隙に熊の動きを制し、素早く地面に押さえ込んだ。


「やれるか! ワン、ツー!」

「いや、まだだ!」


 熊は鋭く愛理の手を跳ねのけると、大きく咆哮を上げて跳ね飛ばした。愛理は受け身を取れず、地面を転がってしまう。


「あの子じゃ無理だ! 熊とは体力に差がありすぎる! 僕の猟銃を取ってこの拘束を解いてくれ!」


 金井の叫びに和宏は拘束を解かなかった。代わりに猟銃を手に取るが、撃ち方が分からなかったので、熊に向かって投げつけた。


「ぐるるるる……」


 熊が恨みの視線を向けてくるが、怯える桜子と金井を見てはすぐに捕食者としての笑みへと変わる。

 だが、それはこの戦いにおいては致命的な隙だった。


「あなたの相手は私だと言ったはずです!」


 愛理の拳が横を向いた熊の頬に叩きこまれ、さらに次々と体に命中させていく。

 熊はたまらず距離を取ろうとするが、その時にはすでに愛理の姿は熊の頭上にあった。


「これで……終わりです!」


 愛理の足蹴りが熊の脳天に叩きこまれ、膝を落として崩れ落ちる熊をしっかりと押さえ込み、動きを完全に封じた。

 熊はしばらく暴れようとしていたが、愛理の固めに次第に動きを止めていった。

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