第14話 事件の繋がり
愛理と和宏は、桜子が悩んでいた原因に少しずつ迫りながらも、その全貌を掴むにはまだ何か足りないと感じていた。音楽の世界、金井の影響、熊の目撃情報。それらがどこかで全て交差し、一つの大きな真実に繋がっているかのようだった。
「今までに得た情報の全てが、桜子の事件に関わっているのだろうか」
和宏が真剣な顔で言った。
「熊は事件に関係ないと思うんですけど。もちろんないがしろにしていい問題ではありませんが」
「音楽があの子の心の支えだったなら、金井との関係がどんなものであれ、それを乗り越えるためには何かが必要だったはずだ」
愛理は黙って頷きながら答える。
「それが熊ではないにしろ、桜子さんが本当に信じていたもの、それが明らかになれば、彼女の行動が理解できるかもしれません」
二人は再び音楽の関係者を当たり、桜子が通っていたギターのレッスンを担当していた講師に話を聞くことにした。授業内での桜子の様子、そして彼女が抱えていた問題を知ることができるかもしれないからだ。
ギターの講師は、桜子のことを覚えていたようで、悲し気に弦を鳴らしながら少し寂しそうに話し始めた。
「桜子ちゃんは、最初から音楽に夢中だったね。でも、最近は元気がなくなって、レッスンも途中で休んでしまったぜ。それに、金井さんが関わるようになってから、桜子ちゃんは少し変わったんだよ」
「変わったって?」
「それはね」
愛理の質問に講師は弦をもう一度弾いて少し考えた後、
「彼女が少し警戒心を持つようになったというか、どこかで不安そうな顔をするようになったんだよ。特に金井さんと話をしている時は、表情が曇ることがあったんだぜ」
和宏はその言葉に眉をひそめた。
「桜子は、金井さんを完全には信じきれていなかったのか?」
講師はゆっくりと頭を振って頷きながら、
「その通りだと思うよ。彼女は、金井さんが何かを隠しているような気がしていたんじゃないかな。音楽を通じて金井さんに惹かれていたのは確かだけど、心のどこかで彼に対して警戒していたんだろうね」
愛理はその話を静かに聞いていた。桜子が抱えていた心の葛藤が少しずつ明らかになり、彼女がなぜ行方不明になったのか、その理由が見えてきたような気がした。
その後、愛理と和宏は、過去に金井がこの町の音楽活動とどう関わりを持っていたのかを調べるため、音楽関係の資料を当たることに決めた。
「少し古めの本がいいですね。古すぎても駄目です」
「ならあそこがいいかもしれないね」
さっそくそこへ移動する。どこの町にもある見慣れた黄色と青の看板はすぐに見つかった。
「本を売るならブックオフ~♪」
「愛理ちゃんはメルカリは使わないのかい?」
「新しい物ってよく分からなくて。何か玩具が多い! 懐かしい!」
「欲しい物があるなら僕が買ってあげるよ」
「いえ、今はそれより資料です!」
少し古めの音楽関係の本から情報を集める中で、金井に関する驚くべき事実が浮かび上がった。
「金井は、もともとは地元の音楽プロデューサーだったんだ」
和宏は雑誌の記事を見せながら言った。
「しかし、数年前に大きなスキャンダルに巻き込まれて、それから姿を消したらしい。どうやら、彼には隠された過去がある」
愛理はその情報に驚きながらも、すぐに自分の直感を信じた。
「桜子さんが警戒していたのは、金井さんの過去に何かあるからですね。音楽だけじゃなく、彼の本当の姿に気づいてしまったのかもしれません」
「金井があの子に近づいたのは、桜子に何かを強要するためだったのかもしれない。桜子が彼から離れようとした時、何か恐ろしいことが起きたんじゃないか?」
愛理は和宏のその言葉に少し黙ってから続けた。
「金井さんは、桜子さんが逃げることを許さなかった。桜子さんが彼から離れようとしたことで、彼を刺激して追い詰められたのかもしれません」
さらに雑誌の記事からは金井の驚くべき情報が分かった。
「このページ! 金井さんのスタジオがこの町の山の中にあるって!」
「それじゃあ、桜子もそこにいる可能性が高いのか!」
いよいよ事件の核心に迫ってきた。次の行動が決まった。
だが、山へ行くには一つの大きな問題があった。




