表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/16

プロローグ

その日は、どこにでもある平凡な一日だった。

朝は慌ただしくコンビニのコーヒーを片手に出勤し、書類の山と格闘して、気づけば夜――。

残業帰り、ネオンが反射する歩道を歩きながら、俺はため息をひとつついた。

「明日も残業確定か……」


そう呟きながら交差点を渡ろうとしたその瞬間――地面が唸った。

ドンッ、と巨大な力が大地を揺らし、舗道に亀裂が走る。

目の前が崩れ、暗い裂け目が口を開けた。

逃げるより先に、足元のアスファルトが砕け、俺は叫ぶ暇もなく闇の中へ吸い込まれていった。


……気がつくと、視界はぼんやりと白く霞んでいた。

全身が柔らかい膜に包まれている。身体を動かそうとしたが、うまくいかない。

ぐにゅ、と自分の形が奇妙に歪む感覚。

どうにか力を込めると、周囲の殻がピシリとひび割れ、温かい空気が流れ込んできた。

俺は――卵の中にいたのか?

這い出すと、床はざらついた岩肌で、空気はかすかに湿っている。

そして、自分の体を見下ろした瞬間、思わず息をのんだ。

そこには、漆黒の闇に白銀の粒子を溶かしたような、不思議な光を帯びる鱗が連なっていた。

角度を変えるたび、黒と銀が混ざり合って煌めき、まるで宇宙を切り取ったかのようだ。

細くしなやかな体がゆらりとうねり、舌の先が二股に割れて空気を探っている。

……俺は、どこか得体の知れない蛇になっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ