3章 とある日の休日
休日というモノは最高だ。誰にも邪魔されず、一人で有意義な時間を丸一日過ごせるのである。そう、誰にも邪魔されず…
ピンポーン
亮真は自室で寛いでいたら、家のインターホンの音が聞こえた。あまり興味は無い。
「亮ちゃ〜ん、お友達が来てるわよ〜」
その瞬間、嫌な予感がした。そして、玄関に向かうとその予感は的中してしまった。
「ごきげんよう、高遠亮真」
華やかな服を着た中山嬢子が立っていた。
「なんだよ」
「これから皆と一緒に〇〇ンモールに行こうと思ってな、お前も来い」
「やだ」
すると後ろから、
「亮真くんも行こうよ!」
「嬢子の高級車乗れるぞ」
「…来てほしい…な…」
後ろから渡辺双葉、足立綾野、十川新羅が出てきた。
「俺は部屋でゴロゴロするのに忙しいんだ」
「五月蝿い、わた、妾と一緒に来い」
亮真は少し目を瞑り、
「ったく…仕方ねぇな」
「やったー!亮真くん来てくれるって!」
「さっさと準備しろ高遠亮真」
「わあったよ…」
(ああ、休み潰れた)
「じいや、出発しろ」
「かしこまりました」
エンジンがかかる音がする。多分高級車なのだろうが、車に興味が無いためなんの車かわからなかった。
「高遠亮真、お前はこんな道の狭いところに住んでるのか」
「いや俺チャリだし」
「亮真」
綾野が真剣な眼差しで言う。
「例の怪物課の男、その後どうなった?」
車内はシンと静まる。
「…話してやる」
数日前。病室にて。
「亮真くん」
「はい」
「君の内臓に傷がついている、だから完治までかなり時間がかかるかもしれない」
「そうですか」
医師はもう片方の人物に目を向ける。
「そして源郎さん」
怪物課の男の名前だろう。
「全身に打撲が出来ていますが、幸い骨折等はありませんでした」
「…はい」
亮真と源郎は同じ病室に入れられていた。
「今日はもう遅いので、明日また様子を見に行きますね」
医師はそう言うと、部屋から出ていった。
「…」
「おっさん、名前ゴツいんだな」
少し冗談を言う。
「…君に…いや、亮真、大切な話がある」
「なんだよ」
すると、
「…私が…お前の"義父"なんだ」
「…は?」
頭が混乱する。
「おっさん…いや…お義父さん…?」
「…お前のお義母さんの夫だ」
「俺のこと殺しに来てたのに?」
「…それは本当にすまない」
段々と混乱が驚きに変わっていく。
「俺がお義母さんに拾われて顔を一回も見てなかったけど、まさかおっさんがお義父さんとはな…」
亮真は孤児だった。中学生まで亮真は孤児院で暮らしていて、受験期に今の家族と出会ったのだ。
「てことは、"佐藤源郎"が本名なのか」
「…その通りだ」
「なんか変な感じ」
「…実はもう一つある」
源郎は続ける。
「…亮真、お前の使う"帥曹流"についてだ」
亮真は源郎の目を見る。
「何故知っている」
亮真がそう問いかけると、
「…本当に偶々、ある文献を見つけてな」
「文献?」
「…あぁ、そこに気になった言葉があった」
「それはなんだ」
「"魂"」
「魂?」
「これは私の仮説だが、聞いてほしい」
亮真は頷いた。
人々が取り出すことのできるモノ、"武器"。それは長年正体を掴むことが出来ていなく、謎のままだった。でも、私はお前と文献を見てとあることが浮かんだ。それが"魂"。人々が取り出し、操っているものは魂そのものなのではないかと思ったのだ。
それが良く分かったのが、"帥曹流"だ。あの時お前は怒り、つまり"感情"が爆発していた。その時からお前の力は強大なものになっていた。目印として、髪や目などが怒りを表す赤色になっていた。
これは"魂の感情"の力なのでは無いだろうか?お前自身の魂の感情が、魂そのものの武器に反映され、強大な力となった。それが、"帥曹流 赤水木"なのではないかと。"帥曹流 青躑躅"もそうだ。あの時見えた青い閃光。もしかして君の髪や目が青くなっていたからじゃないか?怒りとは別の感情。私の予想だと"冷静、冷酷"のようなものかもしれない。
「なるほど…魂か…」
「…また私の予想だが、赤と青があるんだ、もしかして"黄"もあるんじゃないか」
「色の三原色か」
亮真は深く考え込む。すると、
「…"喜び"…」
亮真が口を開く。
「赤が怒り、青が冷静なら、黄色は喜びじゃね」
「…なるほど…」
亮真はニヤリと笑う。源郎の目が正しければ、亮真のその黄緑色の髪が微かに黄色がかった気がした。
「私達の武器が魂ってわけか…」
「タマシイってあのタマシイ?」
双葉は首を傾げる。
「…魂…」
「なんかファンタジーっぽいな」
「お前らが納得いかないのはわかる、それより、ほら」
車窓の外には、〇〇ンモールが映っていた。
「流石に休日だし、車多いね〜」
「安心しろ庶民達よ」
嬢子が自慢気に言う。
「わた…妾達専用の駐車場を手配した」
「すごーい!流石嬢子ちゃん!」
入り口の目の前に車を停める。
「おい…本当にここに停めていいのか?なんか慣れないな…」
「気にするな、さっさと降りなさい」
五人全員降りると、
『ようこそ、中山様』
数人の店員がお出迎えしていた。
「…怖…」
「お前町支配でもしたのか?」
「ワンチャンしかねないぞ…」
「これが妾の財力だ、フフン」
胸を張りながら店内へ入っていく。
「来なさい、子分達」
「はーい!」
双葉と嬢子がノリノリで入る。
(…来なきゃよかった…)
亮真は心の中で後悔するのであった。
「何…あの人…」
「絶対金持ちじゃん…」
嬢子と双葉が歩く後ろには、この店の関係者であろう人々がゾロゾロと後ろをお供していた。
「おい十川新羅、なぜ離れて歩くのだ」
「…なんか…いいや…」
(なんか…一緒に歩きたくない!)
新羅は必死に他人のフリをしていた。
「おい足立綾野、なぜ先に行くのだ」
「なんか…なんでだろうねぇ…?」
(新羅!こういうのはあえて前を歩くのがバレにくいのよ!)
綾野は心の中で謎の持論を展開していた。
「おい亮真、何故天井を歩いて…」
「ん?」
『天井ぉーーーーーー?!』
「そりゃお前と一緒に歩くのがなんか嫌だからだよ」
「凄い!どうやってやるの?」
「お前基本的に何でも出来るけど、限度ってものがあるだろ!」
「…怖…」
「高遠亮真!降りてこい!」
「はーい」
降りた。
「いらっしゃいませ、中山様」
中山一行は服屋に来た。
「子分達よ、私が好きな服を一着買ってやろう」
「本当に?!ありがとう嬢子ちゃん!」
「だっ、抱きつくな…」
嬢子は少し顔を赤らめる。
「…これが…百合…!」
新羅は脳にこの光景を必死に焼き付けていた。
「俺なぁ…服に興味無ぇんだよな」
「そんなのお前の今の見た目見ればわかる」
亮真の服装
白いTシャツ
ジーンズのズボン
黒いロングソックス
スニーカー
「普通過ぎ」
「これが動きやすいんだよ」
「…なんでダサくないんだよ…」
「さぁ」
綾野の目が止まった。
「これ、可愛いな」
「ほーん…」
明るい青のトレーナー。
「私に似合うか?まぁ聞いてもわからないか」
「お前は黄色の方が似合う」
「そ、そうか…?」
少し顔を赤くする綾野。
「ほら、バナナ色だs」
亮真の顔は綾野の拳で潰れ、死亡した。後の裁判で綾野は無罪、亮真は懲役10000年となった。
一方…
「見て見て!これ似合いそう!」
「まぁ、わた…妾は何でも似合うからな」
「ふふっ、私は妾も私もどっちもいいと思うけどな〜」
「妾の方がより偉いからな」
「そうなんだね〜」
「…」
店の外のベンチに新羅が座っていた。
(やっぱり、居づらいな…)
「何をしている十川新羅」
「…え、あ、…」
「仕方がない、この妾が選んでやる、ついてこい」
「あ…はい…」
嬢子の後に続く新羅。明るい店内に少し目が眩んだ。
「十川新羅、お前の服には鮮やかさが無い、彩りをつけろ」
嬢子が手に取ったのはピンクのパンツだった。勿論新羅は戸惑った。
「…それは…」
「いいから試着しろ」
嬢子に圧倒され、渋々試着室へ向かった。
(…恥ずかしい…)
取り敢えず着替えてみる。
(うーん…)
ピシャッ
「着替えたか?十川新羅」
「わっ!……あ…」
「中々良いじゃないか十川新羅」
笑顔で褒めてくれた。それにつられて新羅も少し笑う。
「…ありがとう」
新羅はこれに決めた。
高遠亮真 プリント入りTシャツ
十川新羅 ピンクのパンツ
渡辺双葉 リボン付きスカート
足立綾野 ピンクのトレーナー
中山嬢子 ピンクのドレス
「全員ピンクになったな」
「まぁまぁ良いじゃん♪」
「またお越しくださいませ、中山様」
五人は店を後にした。
「腹減ったな」
「亮真くん懲役10000年じゃなかったっけ?」
「あんなの作者がふざけたに決まってるだろ」
「だよね〜」
グ〜
誰かのお腹が鳴る。
「私のお腹、鳴っちゃった」
「双葉もお腹空いてるし、お昼ご飯にしよう」
皆も同意した。
「俺はサー〇〇〇ワン行きたい」
「あそこはデザートだろ」
「…す〇家」
「ここには無いな」
「私ミ〇〇ードーナツがいい!」
「だからデザートだって」
今日の昼ご飯を皆で話し合っていると、嬢子があるものを見つけた。
「あそこの蕎麦屋が気になる」
「蕎麦!美味しそう!」
「じゃあそこにするか」
「…いいね…」
行こうとする四人だったが、あることに気付く。
「おい、店名見てみろ」
「どうした高遠亮真」
見てみると、
「…100割蕎麦…?」
「100割って…」
「100%ってことだね!」
「違う、1000%だ」
「…限界突破…」
「渡辺双葉、数学の勉強をしたほうがいい」
「えへへ…」
「まぁ…こういうネーミングにあえてしてるんじゃないか?」
「俺はここにしたい」
五人は空腹だった。もう今すぐ何か美味しいものを食べたいのだ。
「そこにするか」
「…賛成」
「私もー!」
「賛同してやる高遠亮真」
五人は店の中に入っていった。
「美味しかったー!」
めっちゃ普通の蕎麦屋だった。しかしショッピングモールの中の店なのに、店主が凄い気さくでおまけの天ぷらをくれたり、いい店だった。
「此の後はどうするか…」
「帰る」
「わた…妾が許可しない」
「どうしようかな~」
「…ゲーセン…」
四人一斉に新羅の方を向く。
「え、…あ、ごめん」
「行こう」
「妾も行く」
「行ってみたい!」
「連れてけ」
「…う、うん」
新羅は少し笑った。
店内は賑やかだった。
「凄ぇ音だな」
「これがゲーセンというものなのだな」
ふと見ると、双葉が居なくなっていた。
「おい!私の双葉が居ない!双葉ー!」
「こっち来て見て!綾野ちゃん!」
四人が声のする方に向かった先は、
「射的のゲームがあるよ!」
目を輝かせる双葉。
「勝負するか渡辺双葉」
銃を手に取る嬢子。
「負けないよー!」
双葉も手に取る。100円を入れ、スタートした。
バキュンバキュン!
銃の効果音が鳴り響く。
「頑張れ双葉ー!」
「当たらないよー!」
「こんなものか?渡辺双葉」
只管に銃を撃ち続ける。軈て、ゲームが終了した。
『1Pの勝ち!』
「ハッハッハッ!妾の勝ちだ渡辺双葉」
「負けちゃった〜」
威張り散らかす嬢子。
「次、私やろうかな」
「新羅、先やっていいぜ」
「…うん」
新羅の口角が上がっている。100円を入れ、スタートした。すると、
バンバンバンバン
新羅はほぼ全ての的に命中させていた。
「新羅くん凄い!」
「…伊達に銃を…使ってない…」
「くっ…負けない!」
綾野も必死に銃を撃つ。しかし、
『2Pの勝ち!』
「…こんなもの」
「負けたー!」
雄叫びを上げる綾野。
「高遠亮真、お前もやれ」
「へいへい、わあったよ」
「もう一度私やる!」
双葉と亮真は銃を手に取った。そして100円を入れスタートした。
(…電子の音がする…ここだ!)
何も無いところに銃を撃つ亮真。すると、そこ先に的が飛び出し、命中させた。
「…は?」
新羅が口をあんぐりさせる。
ババババババババ
「亮真くんも凄い!」
まるで銃弾を命中させるゲームではなく、亮真が撃った場所に的が現れるゲームのようだった。
「高遠亮真、未来の◯魔と契約したのか?」
「いや〇〇〇ソーマンじゃねぇよ」
「…まだ…未熟…だった…」
結果は一目瞭然だった。
『1Pの勝ち!』
「また負けちゃったけど楽しい!」
「次はどこ行こうか?」
「子分達、あそこにマ◯オカートがあるぞ」
「…行こう」
そこに向かおうとした瞬間、
「ねぇねぇそこの君達〜」
いかにもな男の集団が五人の方に来る。
「なんの用だ」
「亮真くん…」
「君達さ〜メダル持ってねぇかなぁ〜?」
「無い」
毅然とした態度で亮真は接する。
「あ〜ぁん?もう一回言ってみろ?」
後ろの方で拳を鳴らす音が聞こえる。四人は亮真の後ろに隠れていた。
「俺らはメダルなんか持って無ぇぜ」
キッパリと言う。
「仕方ねぇなぁ〜」
どんどん亮真に近づくいかにもな男達。
「亮真…!逃げよう…!」
「まぁまぁ、俺に任せろ」
そして先頭にいる男が亮真の前で止まる。
そして…
「これ、あげる」
「ありがとうよ」
「俺達よぉ〜メダル取りすぎちまってよぉ〜」
「良かったな」
「じゃあな、楽しめよ」
男達は去っていった。
「怖かった〜」
「お前ら、なんで隠れてんだ?」
「う、五月蝿い」
顔を赤くする綾野。
「そ、それよりマ◯カーするぞ!」
その後も、ゲーセンを楽しんだ五人なのであった。
「次どこ行く〜?」
「帰る」
「帰らせんぞ」
「…メイド喫茶」
「それもいいかもな十川新羅」
どうも気が重い。
ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ
「…怪物か…」
「え?どこにいるの?」
しどろもどろしている双葉。ある違和感に気付く。
「ねぇ…体が重いよ…」
体に重いものが乗っている感覚がする。まるで重いリュックサックを背負っているような。しかし、平気な人間がいた。
「大丈夫か双葉?」
「うん、綾野ちゃんは…?」
「私は大丈夫だ」
足立綾野。そしてもう一人。
「丁度いいな」
高遠亮真。
「どうやら、体が重くなっているのは私達だけじゃないらしいぞ」
周りを見ると、全員体勢がキツそうだ。
「これが何かはまだわからないが、どうやらこのショッピングモールに現れたらしいな」
更に観察すると、亮真はあることに気付く。
「あっちの人々、座り込んでいるな」
「それがどうした?」
「ここよりキツいってことじゃないか?」
「そうだな、で、何かわかったのか?」
「あっちに怪物がいると予想する。」
「じゃあ、行くか」
二人はショッピングモールの南側へ駆けていった。
怪物がいるであろう場所に向かう二人だが、段々と足取りが重くなっていく。
「おい、疲れたなら休んでていいんだぜ」
「私はまだ疲れてない」
特に、綾野はもう限界寸前というところに見える。しかし、何かがおかしい。
「ここが最奥ってところだが、怪物の姿が見えないな」
「…っく…」
「おい、本当に大丈夫か?」
「なんで…そんな…平気そうな顔を…」
「んなもん俺だからだよ」
「…ゔっ…」
倒れ込む綾野。
「はぁ…無理しやがって…」
「先に…行け…」
「よいしょっと」
亮真は綾野を抱っこした。そして反対の北側へ向かう。
「お前は自分の限界ってモンを忘れてるんだよ」
「…」
(亮真に…抱っこ…されてる…)
「大丈夫か?顔赤いぞ」
「…五月蝿い」
(…温かい)
「この辺で寝てな」
亮真は少し離れたところに綾野を降ろした。
「…ありがとう」
「ん」
綾野の心臓は、いつもより激しく、そして早く動いている。
体が重い。恐らく普通の人は身動きすら取れないだろう。しかし、この男は違う。
「この辺にいるはずだがな…」
辺りを見渡すが、それらしい怪物は居なかった。その代わり、この状況の中で少し違和感のあるモノを見る。
(あの人…立ってる…)
「あの、すみません」
周りの人は重さに耐えられず身を横にしている中で、立っている女性。
「何でしょうか?」
「何故、貴方だけ立っているのでしょうか?」
「それは…貴方も一緒では…?」
「確かに」
「皆さん何故倒れているのでしょうか…」
「…」
(もしかして…)
「どうかしました?」
「人間にあるはずの瞳孔が貴方に無いのは何故?」
女性は黙る。
「昔からそういう病気で…」
「何故、貴方の口の中に臼歯が生えていないのでしょうか」
「…」
「貴方…いや…お前は…」
その瞬間、強烈な蹴りを鳩尾に入れられる。その威力は普通の人間には考えられないほどだった。
「あーあ、完璧に変装したと思ったんだけど」
次第に女性の身体が変化していく。
「お前…この事件の張本人だな…いや、怪物…!」
「私をあんなのと一緒にしないで欲しいわ」
肌が黒く変色し、紫色のラインが体中に走っている。スタイルの良い体、それは怪物とは言い難いモノとなっていた。
「…じゃあ、"怪人"とでも呼べばいいか?」
「まぁ、怪物よりはマシね」
まるで外国人のモデルのような姿。そして、
「私の名前は"グラビティガール"よ」
「へっ、怪人のくせに名前があるんだな」
亮真は刀を取り出す。
「おっと、そこから動かない方がいいわよ?」
その瞬間、亮真の体が急激に重くなった。
「…ッ!」
「重力を操る、本当に素晴らしい能力だわ!」
しかし、亮真は一歩前に足を踏み出した。
「重力がなんだって?」
「あら、まだ動けるのね」
(コイツ…まだ動けるの?!)
グラビティガールは更に重力を強くする。
「これでどうかしら?」
それでも亮真は一歩踏み出す。
(どうして…?何で動けるのよ!)
強く、そして更に強くしても、亮真は足を踏み出す。更に、あることを掴んでいた。
「お前…何故直接攻撃しない…?」
「うっ…!」
「もしかしてよぉ…お前も重力よ影響を受けてんじゃねぇのか?」
「そ、そんなことは…!」
「だからそこから動けねぇんじゃねぇのかよぉ!」
亮真は笑う。それを見てグラビティガールは気を立てていた!
「それでも!アンタはこの重力の中でノロマじゃないの!」
「動いてみろよ!ババァがよ!」
「五月蝿い!五月蝿い!殺してやる!」
グラビティガールは更に重力を強める。
「重力で…潰れなさい!」
亮真はニヤリと笑った。
「お前…弱っ」
グラビティガールの中でプツンと糸が切れる音がした。
「アンタなんか!ぶっ殺してやるわ!」
その勢いのまま重力を更に強くする。
「死ね!死ね死ね死ね死ね!」
「…お前…は…」
「五月蝿い!喋るな!」
「…馬鹿だな…」
その瞬間、グラビティガールの頭上の照明が取れる。その強い重力の力のまま照明がグラビティガールを押しつぶした。
ガシャン!
亮真の体は一気に軽くなる。
「…くそ痛ぇ」
すると、
「怪物課です!怪物はどこに居ますか?!」
怪物課であろう人と、後ろから防護服を身に纏う警察が来た。
「そこの少年!大丈夫か?!」
「あー大丈夫っす」
「怪物を見なかったかい?」
「この下」
亮真は潰れた照明を指さす。
「…少年?」
「はい?」
不思議そうに亮真を見る怪物課の人。
「体が…浮いてるぞ」
「え?」
その瞬間、亮真は落下した。真上に。
「少ね…うわっ!」
怪物課の人も一緒に真上に落っこちた。幸い、近くに居なかった人に影響は無かった。
「痛っ」
怪物課の人は尻もちをついた。
「痛たた…少年は無事か?」
「無事だ」
すると、天井…ではなく真上の床に潰されている照明の中から出てきた。
「アンタ…絶対に殺してやる!」
「…ッ!マズい!」
重力が横向きになった。横に長いショッピングモールだ。横向きに落ちれば流石に亮真も耐えきれないかもしれない。
(どうにかしないと…!)
すると、
「俺に掴まれ!少年!」
瞬時に怪物課の男に抱きつく。そして武器、"鎖鎌"を取り出した。
「行けぇぇぇ!」
鎖鎌の鎌の部分を投げ、壁に突き刺した。そして、鎖を命綱にして宙ぶらりんの状態になる。
「助かった…やったぞ少年!」
「ありがとうな」
やたら暑苦しいこの怪物課の男。
「私の名前は宇津礼二だ!少年の名はなんだ?」
「俺の名前は高遠亮真だ」
「あぁ!君が課長の息子か!」
「まぁ…」
「これからよろしく頼む!親友よ!」
宙に浮いた状態で激しく握手をする礼二。すると、天井が突如壊れ、空に落ちていった。
「まさか…」
重力が真上に変わる。
「親友よ…これは…」
「終わりよ、死になさい」
壁を歩いてグラビティガールが話しかける。
「じゃあね〜」
上品に手を振ると、鎌を引っ掛けていた壁が崩れ、亮真達は快晴の空に落っこちた。
「親友ー!」
「アーッハッハッハ!私はアンタの死に様を眺めてるわね!」
「…ふっ」
「親友!このままだと宇宙に放り出されてしまうぞ!…親友…?」
礼二が亮真を見る。さっきまで黄緑だった髪が青くなっていた。
「…帥曹流 青躑躅 元帥」
青い閃光がグラビティガールの方に向かう。
「アンタ…!」
しかし、あと一歩のところで届かなかった。
「無駄な足掻きはやめなさい!大人しく死にな!」
すると、
(なんだ…?)
亮真の髪が青から青緑、黄緑、そして…
(髪が黄色に…?)
亮真はグラビティガールを見る。その表情は狂ったほどの笑顔だった。
「キャハハハハハ!これで死ねぇ!アハハハハハ!」
亮真は構えを取る。
「帥曹流! 黄日葵! げんすいっ!」
グラビティガールに向けて突きを繰り出した。その刀身は黄色く。そして…
「えっ…」
グラビティガールの脳天を何かが貫いた。
「どう…して……」
グラビティガールの身体が段々と消滅していく。
「アハハハハハ!ヒヒヒヒヒッ…」
亮真はずっと笑い続けている。
(コイツは…何なの…?)
そして、グラビティガールの身体は完全に消滅した。
亮真は抜けた天井から入り、ショッピングモールの床に着地する。グラビティガールに青躑躅で接近したときに地上に近づいた為、高くない位置から着地が出来た。
「…そろそろか」
「親友ーー!」
空から落ちてくる礼二をキャッチする。
「助かったぞ!親友!お前は命の恩人だ!」
「そりゃどうも…」
すると、
「亮真!」
綾野が来る。
「やってやったぜ、安心しろ」
「良かった…」
ほっと胸を撫で下ろす。
「親友よ!もしかしてガールフレンドか?!」
その瞬間、綾野は顔を真っ赤にした。
「ちっ、違います!って、貴方誰ですか?!」
「俺は亮真の親友の宇津礼二だ!親友!このガールフレンドを幸せにしろよな!」
「だから私は…」
すると亮真はふざけたように、
「勿論、幸せにしてやるぜ」
綾野は更に顔を赤くする。
「…馬鹿…」
綾野はいつもより弱く、亮真の頭をポンと叩く。
「亮真く〜ん!」
双葉、新羅、嬢子が来る。そして双葉が亮真に飛び付いた。
「ちょ、抱きつくなって…」
「無事で良かっ…た…?」
双葉が違和感に気付く。
「亮真くん…腕…折れてる…?」
澄まし顔で言う。
「折れてるけど」
「えっ」
「え」
「…え?」
全員が同じ反応をする。
「早く病院に行け高遠亮真!」
「そうだよ!って腕触っちゃった?ごめんね!」
「お前…どんだけ馬鹿なんだ…」
「親友!俺がお前を病院へ連れて行くぞ!」
礼二が亮真を抱っこする。
「今助けるぞー!親友ゥーー!」
「ちょっとー!亮真くんを返してー!」
「戻って来いそこの馬鹿男!」
「礼二さーん!ちゃんと救急車呼んでくださーい!」
三人が止めようとするが、もう遅かった。
「…何これ」
新羅は呆れながら見ていた。
怪人 グラビティガール
見た目は外国人モデルのような体型をしている美人さん。しかし、肌が黒く、紫色のラインが体中を走っている。重力を操ることが出来、重力を強くして相手を拘束したり、重力の向きを変えたりすることが出来る。今までは重力の影響を自分も受けていたが、怒りにより覚醒。自分自身や周りの重力を細かくコントロール出来るようになったのだ。