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序章 入学

・・・ピピピピッ ピピピピッ

「…んー…」

(眠いぃ…)

「…zzz……」


「双葉!そろそろ起きな!」

「ひゃいっ!今何時?」

すぐにスマホで時間を調べると、7時40分だった。そう、時間がヤバいのだ。

「寝坊しちゃった!早く支度しないと!」

私はすぐに支度を始める。私の名前は渡辺双葉。今日から高校生になるんだ!けど寝坊しちゃって大ピンチ!急がないと!

「双葉!朝ご飯は?」

私は咄嗟にトーストを咥える

「ひはんかないあら!ひっへいあふ!(時間が無いから!いってきます!)」

「ちょっと!双葉!」

走って行かないと間に合わない!

「遅刻遅刻〜!」

私は通学路の先にある曲がり角を曲がろうとした瞬間・・・

曲がり角の先に人がいた。

(ぶつかる!)

咄嗟に目を閉じた。その瞬間・・・

「うおらぁぁぁぁぁぁ!」

(え?今の何?)

「ごめんねぇーーーー!」

そう言って彼は走り去っていった。

(もしかして…危機一髪回避した?)

私は唖然として、

「あっ!急がないと!」

そしてまた全速力で学校へ向かうのであった。


「はぁ……はぁ……」

(間に合ったーー!)

私自身かなりギリギリだと思ってたけど、案外まだ時間があった。校門を入って左にある体育館らしき建物の壁に大きな張り紙がある。多分クラスのやつかも!見に行って…

「双葉ー!」

この声は!

「綾野ちゃん!」

「どうしたんだそんな息切らして」

「いやぁ〜寝坊しちゃってさ〜」

「え、まだ時間余裕あるけど」

「なんか…勘違いしちゃったみたい…テヘッ」

「双葉は本当に可愛いな。さ、クラスの張り紙見に行こうぜ!」

「うん!」

この子は足立綾野ちゃん。気が強いけど大人っぽいところがあってとても頼りになるの!憧れちゃう!

「人が多くて見えないな…」

「見えないね〜」

「まぁ時間経ったら見えるさ」

「それまで待とっか」

私と綾野ちゃんは中学校からの親友なの!成績も運動も何でも出来ちゃうんだよね〜しかもとっても綺麗なの!本当に凄い!

「綾野ちゃんさ、髪型変えた?」

「あぁ、ボブにしてみたんだ」

「可愛くて似合ってるよ!」

「フッ…ありがとうな」

「そろそろ人が少なくなってきたかな?」

「よし、行くか!」

私達は大きな張り紙の方へ向かった。

「うーん…どこだろうね?」

「あった!5組だ!」

「えー!私全然見つからないよー!」

「双葉は渡辺の"ワ"だから、下の方じゃないか?」

「えーっと…」

「ほら!私と同じ5組だ!」

「嘘?!やった一緒だ!」

私は綾野ちゃんと抱き合った!

「良かったー!」

「私も双葉と一緒で嬉しい!」

(良かったー!)

「じゃ、教室に向かおう!」

「うん!」

私達は教室へ向かった。ちなみに4階だった。

「はぁ、はぁ、ちょっと疲れちゃった」

「これから大変だな」

「5組の教室はこれかな?」

「ちょ、それ3組だぞ!5組はあっちだな」

「危なかった〜、間違えるところだった」

「間違えたら凄い…気まずいヤツだったな」

5組の教室に歩いて行く二人。

(緊張する…!)

戸を開ける

ガラガラッ


教室の中は静かだった。大多数の人が緊張している様子で座っていた。きっと私と同じで緊張してるのかなと思った。

けど・・・

居た。

通学路でぶつかりそうになった彼。私は…いやクラスの皆が思った。

(髪めっちゃ染めてる!しかも!黄緑?!)

(普通金髪じゃね?!座り方凄っ!)

(入学したてなのにスゲェ足組んで座ってる!肝座りすぎだろ!)

彼は…何も気にしていない様子だった。緊張も何もしていない。多分。こちらを全く振り返らないその様子は、まるで何もかもに興味が無いように感じた。

(なぁ、双葉)

(ど、どうしたの?)

(アイツ、絶対ヤバいヤツだ)

(そ、そうだね…?)

(…何かあったら私が守る。だから安心して)

(あはは…ありがとう?)

私達は黒板に貼ってある座席表を見て席に座る。

(私と綾野ちゃんの席、反対側だ!)

よりによって綾野ちゃんが右側の一番前で私が左側の一番後ろ…凄い離れちゃった…


暫く経って、戸が開く音がした。

ガラガラッ

「さて…おはようございます」

『おはようございます』

皆が担任らしき人に挨拶をする。

「どう?緊張してる?まぁするよね〜今日から5組の担当になります八村磨紀です。よろしくお願いします」

担任の八村先生の話が始まる。自己紹介とか雑談とか。でも、私は話に集中出来なかった。

(彼が気になり過ぎる!)

明らかに異質な何かを放っている。それが気になって気になってしょうがなかった。

「そろそろ始業式に行くので、体育館履きを持って廊下に並んでいきましょう。並び順は出席番号順で、自分たちで出来るかな?じゃ並びましょ」

皆が席を立って廊下に向かう。

(私…一番後ろだよね)

私は列が出来るであろうところの一番後ろに並ぶ。

「双葉、何してんだ?」

「あれ?綾野ちゃん?」

「多分…こっち前だぞ」

「えぇ?」

間違えちゃった!

「全く、おっちょこちょいだなぁ」

「えへへ…」

私は本当の列の後ろに向かう。すると、

「今朝は悪かったな」

と声が聞こえた。振り返るとそこには例の彼がいた。

(話しかけられた…そういえば彼の顔まだはっきり見てないなぁ…)

そう思いながら私は列の後ろに並んだ。

「じゃあ、行きましょう」

私達は体育館へ向かった。


(ふわぁ〜…話長いなぁ…)

校長先生の話って長いよね。でもなんかタメになりそうなこと言ってそうだし。聞かないと!

「えー人生には3つの大切な袋があり…」

(ふむふむ…って結婚式の時の話じゃん!)

その後は睡魔との戦いに明け暮れたのであった。


(終わったー!)

やっと入学式が終わった。自分の太腿をつねって何とか耐えた。

「入学式お疲れ様です。さて、これで晴れて、高校生となりました!今日はね〜皆で自己紹介しようと思ったけど…時間が無いからまた明日かな。配りもの色々して、今日は終わりです!さてまずは…」

そして先生から色々と配られた。見てみたけどよくわからなかった。多分両親ならわかると思う。

「最後に、藤成高校から特性シャーペンがプレゼントされまーす。はいどうぞ」

なんかシャーペンが配られた。側面に"F H S"って書いてある。

(多分あんまり使わないかな…)

「さて、今日一日お疲れ様でした。明日から授業が始まります。明日も、元気な姿を見せて来てください!じゃあ起立!」

皆一斉に起立する。

「気を付け、礼」

『ありがとうございました(す)』

数人間違えてた。


「双葉!帰ろうぜ!」

「うん!」

荷物や配りものをカバンにつめて帰る支度をする。

「お腹空いたなー」

「今日の昼飯が気になる」

「私も」

教室を出て、廊下を歩き、階段を降りる。

「やっぱり4階だとキツいかも…」

「こればっかりはしょうがないよなー…」

「疲れちゃった…」

「おい、玄関そっちじゃないぞー」

「あっ、えへへ…」


「半日だったけど、疲れたな」

「お腹空いちゃった」

「ハハッ、さっきもそれ言ってたじゃん」

「そうだっけ?えへへ」

私たちは少し遠回りをして河川敷で他愛もない会話をしていた。それだけなのに。

ウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ

警報が鳴り始めた。

「まさか!双葉!避難するぞ!」

「う、うん!」

この警報は、「この世界に突如現れる"怪物"が現れた時の警報」である。

「走るぞ!双葉!」

私と綾野ちゃんは近くの建物を探そうとした。なのに…

グルルルルルルルル…

「嘘…」

さっきまでいなかったはずなのに、そこに、

居た。

その巨体は5mほどだろうか。豚の顔をした二足歩行の"怪物"が居た。まるでオークのような。その二つの目ははっきりとこちらを向いていた。革の鎧のようなものを身に着け、大きな槍を携えていた。

「綾野…ちゃん…」

頭の中が真っ白になった。

(逃げなきゃ!)

怖かった。怖くて足が動かない。

グガァァァァァァァ!

槍を向けて突進してきた。私は咄嗟に目を閉じた。その瞬間・・・

「甘い」

綾野ちゃんが身体から"武器"を取り出した。

「黒熊手!」

両腕に携えたその黒い大きな義手。それで怪物の攻撃を受け止めた。しかし、相手は巨体の怪物。力の差は目に見えていた。

「下がってろ!双葉!」

「でも…!」

「安心しろ、こんなこと、何度もあっただろ?」

「…うん!」

私は綾野ちゃんから離れて遠くから見守る。

「さて…十分暴れられるなァ!」

綾野ちゃんは相手の攻撃を受け流しながら、

「ウラァッ!」

怪物の鳩尾に一撃を加えた。

グハァァァァァァァ!

(効いてる!)

怪物が仰け反った隙を見逃さずもう一発、

「喰らいな!」

顔面にパンチをお見舞いした。

ガァァァァ…ァァ

怪物は仰向けに倒れた。気絶しているようだ。

「綾野ちゃん!」

「安心しな、もうすぐ怪物課の人が来る」

「それにしてもやっぱり綾野ちゃんは強いね!」

この世界の人類は皆、それぞれの"武器"を持っている。常日頃持っているわけじゃなくて、身体の中から自由に取り出せる感じ。

「いいなぁ…私にもカッコいい武器欲しいなぁ…」

「私が守ってやるよ、だから安心しな」

人類全員が武器を持ってる訳じゃないの。なんというか、殆どの人は針とか細い棒くらいしか出せないの。でも、私はそれすら出せないんだよね。綾野ちゃんみたいにちゃんとした武器を出せるのはごくわずか。

「さて、そろそろじゃないか?」

遠くからサイレンの音が鳴る。怪物課の人が来てくれたらしい。

「そこのお嬢ちゃん二人!」

「こりゃ凄いねぇ」

私は怪物課の人達が来て安心・・・

グガァァァァァァァ!

(…え?)

私は宙に浮いていた。声が聞こえる。

「双葉ァァァ!」

私は怪物に掴まれていた。怪物の口が開く。

私、死ぬんだ。

私は咄嗟に目を閉じた。すると・・・

怪物の動きがピタリと止まった。次の瞬間。

怪物の首が吹っ飛んでいった。

(…え?)

「ったく…油断するからそーなるんだ」

私の視界には、彼が居た。その手には刀を持っていた。

「あわわっ!」

私は手から落っこちた。

「…っと」

彼が私を受け止めてくれた。

「お前なぁ…あと少しで死んでたぞ」

(私、お姫様抱っこされてるー?!)

綺麗な二重、高い鼻、整った顔。

(か、カッコいい…!)

「…馬鹿みてぇに顔真っ赤だぞ」

「えっ…あっ…ごめん…」

「…まぁいいや、下ろすぞ」

彼は私を下ろした。首をはねられた怪物はみるみるうちに消滅した。

「…あっ!綾野ちゃんは?!」

「…アイツ、綾野っていうのか」

「綾野ちゃん?!大丈夫?!」

「なんか…立ったまま気絶してね?」

「綾野ちゃーん!」

綾野ちゃんがハッとした表情になった!

「双葉ァァァー!」

綾野ちゃんは私に抱き着いた。

「ごめん…ごめん…無事で良かった…」

「大丈夫だよ、私、生きてるよ?」

暫く抱き合った後、綾野ちゃんはまたハッとした表情になった。

「おい、黄緑」

「亮真だ、高遠亮真」

「おい亮真」

「なんだよ」

私は綾野ちゃんの言葉に唖然とした。

「私の双葉に抱きついたな?」

「え」

「お前にはわからないのか!知らない男に抱きつかれる双葉の気持ちを!」

「ワカリマセン」

「てめぇ…ぶっ飛ばすぞ」

綾野ちゃんが黒熊手を出す。

「綾野ちゃん!喧嘩は…」

「下がってるんだ双葉、私がコイツをぶっ飛ばす」

大して亮真くんは、

「やる気か?上等だよ」

あぁ…止められないかもしれない…


私は遠くから二人を見守った。

「かかってこいよ」

「じゃあ遠慮無く」

綾野ちゃんが亮真くんの方へ走り出した。

「黒熊手!」

綾野ちゃんが亮真くんに殴りかかった。しかし当たらない。連続でパンチを繰り出すが全て躱されている。

「クソッ、すばしっこい…」

「お前が遅いだけなんじゃないのかい」

「五月蝿い!」

一向に当たる気配が無い。暫く攻撃を続けたからか、綾野ちゃんは次第に疲弊していく。

「そろそろ本気出していいか?」

「あ?舐めてんのか?」

亮真くんは刀を取り出した。よく見たら今まで刀を取り出していなかった。

「フン、刀取り出したからって勝ちじゃ…」

「帥曹流 葵躑躅 元帥」

(すいそうりゅう?)

聞き慣れない言葉を聞いた次の瞬間、亮真くんが消えてしまった。

「クソッ!どこいきやがった!」

「チェックメイト」

「…っ!」

目を疑った。亮真くんが綾野ちゃんの後ろに立っていた。

「お前は俺を、倒せない」

何が起きたのかわからなかった。ずっと見ていたはずなのに、なんで…

「ッ!」

綾野ちゃんは顔を真っ赤にしていた。そして、一人で走り出してしまった。

「綾野ちゃん!」

追いかけようとしたが、その時にはもう姿は見えなかった。私は亮真くんの方を見る。

「なんか、悪いことしたかな」

そう言って帰っていった。私もここにいる理由も何も無いので、家に帰ることにした。


「あの〜私達、完全に空気でしたね」

「まぁな、俺達なんか所詮怪物課AとBだからな」

「ですね」


次の日

私は一人で登校した。

(綾野ちゃん、大丈夫かな…)

戸を開けると…

「はぁ?!また勝負すんのかよ?!」

「五月蝿い!私にリベンジさせろ!」

「ヤダ!面倒くさい!」

「四の五の言わずに付き合え!」

元気そうで何より。

「あっ!おはよう双葉!」

「おはよう綾野ちゃん!…と亮真くん?」

「双葉が亮真をくん付け?!亮真ァ双葉に何したァ!」

「なんもしてねぇよ!って力強っ!ゴリラかよ!」

「誰がゴリラだ!」

「じゃあワオキツネザルで」

「私は足・立・綾・野だ!!」

「綾野ちゃん…落ち着いて…」

これから、どうなっちゃうのかな。ちょっと楽しみかも。

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