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12/12

第12話: 祝10万人の夜と、ゲーマー教師

――配信終了直後。


初コラボ配信が終わった直後、通話の中にはまだ熱気が残っていた。

 マリモカートで奇跡の一位を取ったヴェラッド、惜しくも二位だったミタマ、コースアウトを繰り返したキララ、そして新人のイザナ。

 四人は配信終了後も、裏でそのまま打ち上げのような雑談を続けていた。


「いやぁ〜俺が一位取るとか、誰も想像してなかっただろ!」

 ヴェラッドが興奮気味に笑う。

「……ほんと奇跡。正直、意味わかんない」

 ミタマが小さくため息をついていたが少し笑いながらキララを小馬鹿にした。

「キララ、最後調子乗りすぎてた」

「う、うるさいっ! あれは狙ったエンタメだし!」


 画面越しの賑やかさに、イザナは小さく笑った。

 しかし、自分だけが気づいていない“ある変化”が、静かに進んでいた。


「ところでさ、イザナ」

 キララがふと声を上げる。

「おめでとう」

「え? なにが?」

「登録者数、もう見た?」

「いや、まだだけど……」

 ミタマが淡々と告げた。

「十万人、超えたよ」


「――は?」


 一瞬、時間が止まったように感じた。

 慌てて自分のチャンネルページを開くと、そこには確かに『100,021』という数字が光っている。

「う、うそだろ……まだ三回目の配信だぞ……?」

「現実だって。おめでと」

 ミタマの小さな祝福に続き、ヴェラッドとキララも口々に「おめでと!」と声を揃える。

 イザナはただ、胸の奥が熱くなるのを必死にこらえながら、「あ、ありがとう……」とだけ呟いた。


Twitterで祝10万人ポストをしたところ、コメント欄が花火のように祝福で溢れていった。



◆翌日

 教室に入った優真は、昨日の余韻を引きずったまま席につく。

 そこへ、クラスメイトの蓮がニヤリと笑って近づいてきた。


「おはよー優真。昨日のコラボ配信、見たか?」

「え、あ、うん……」

 蓮は学校一のイケメンで、普段は爽やかそのもの。

 だがオタク分野になると語彙が一気にキモヲタ寄りになるという、特殊な男だ。


「ミタマ、やっぱ強いし可愛いし最高だったわ……尊い……」

 語尾がやけに熱っぽい。

「それにな、イザナ。新人なのにあの三人に混ざっても全然浮いてなかった! プレイもうまいし、ツッコミもキレッキレ! マジで伸びるぞあれ!」

「そ、そうだな。ほんと、いい配信だったよ。みんな優しかったし……」

 言った瞬間、優真は心臓が跳ねた。

 “みんな優しかった”――まるで自分がその場にいたかのような言い方だ。

 蓮の目が細くなる。

「……お前、なんかイザナ視点の感想じゃね?」

「っ!」

 優真の喉が鳴った。

 バレた――?


 だが蓮は次の瞬間、ニヤリと笑った。

「もしかして、イザナ推しになったんだろ? やっぱ推しのことは自分のことのように嬉しくなるよな!」

「…………あ、ああ。推し、だな」

 全く的外れの推測に、優真は内心で安堵の息をついた。


 気づけば教室には二人だけになっていた。

 そこへドアが開き、担任の松田先生が顔を出した。


「おいおい、次は移動授業だぞ。二人して残って何の話だ?」

 低い声とともに、じりじりと圧をかけてくる。

「き、昨日のコラボ配信について話してたんですよ」

「そうそう! 新人と大御所三人とのコラボで盛り上がってて!」

 蓮が元気よく補足する。


 すると松田先生の険しい顔が、ふっと緩んだ。

「……そのコラボって、新人のイザナのやつか?」

「え、まっちゃん知ってるん?」

「⁉︎」

 優真の心臓が再び跳ね上がった。

 あの松田先生が、自分の名前を――?


「まあ、少々な」

 松田は咳払いをして言葉を濁す。

「先生がV見てるなんて意外です。てっきり論文か辞書ばかりかと」

「いやいや、流石にずっとは読んでない。たまにゲームだってしてるし」

「え! まっちゃんゲームしてるん?」

「まっちゃん呼びはやめろ。……まあ、イーペックスとかパロラントとか、いろいろやるぞ」

「結構ガチ勢じゃないですか。ランクとかって――」

「ソロマスだな」


「「ソ、ソロマス!?」」

 蓮と優真の声が同時に裏返った。

 論文を片手に持つ厳格な教師――その裏の顔は、ソロマスター帯のガチゲーマーだった。


◆夜

帰宅後特にやることがなかったのでYouTubeを開いた。

「おっマユさんの動画上がってるじゃん」

マユさんはVtuberではなくいわゆるゲーム実況者だ、これからのVtuber生のために最近ゲームの勉強によく見ているのだが見ているうちに普通に推しになった。

普段はゆったり系なのだがゲームに熱中してしまうとかなり荒々しくなってしまうのであまりコラボはしていないがそれがまた魅力だと感じている。


ほとんど配信メインなのだがマユさんは普通に働いているらしく配信の時間帯は寝ているか配信しているかなので直接配信を見たことはないのだが、どこかマユさんには既視感があるような気がする、

まぁ気のせいだろうが…


松田はその夜、PCの前に座っていた。

モニターに映るのは配信ソフト。

配信者名:マユ

ほんわかしたキャラクターアイコンが画面隅に並ぶ。


マユ「こんばんわ、本日もイーペックスのランク上げをやっていきます!」

・こんばんわ

・開始直後だけ癒される〜

・ワクワク

しかしゲームが始まるや否や――


マユ「ふざけんな!今の当たってただろ!!」

・今回5分21秒

・平均値だな

・うぉおおそこダァ!!

・外れてたくね?

・いや当たってるだろ!!!

ほんわりとしたアイコンからは想像もできない、

鋭く荒々しい声。

FPSの戦場を駆ける彼女の動きは、プロ顔負け。

しまいにリスナーが毎回彼女が怒鳴るまでの時間を測るのは恒例化している。

――登録者数【59万人】。

圧倒的な実力を持ちながらも、

ソロに徹し、誰ともコラボしない理由はただひとつ。


マユ「……人付き合いって、難しいんだな」

ボソッと呟いたがマイクには拾われなかった。


まだキャラ紹介していないのですが、松田先生のフルネームは松田 結衣でマユは本名から頭文字をとっただけのわりと安易な名前になっている。

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