第45話 歳下好きなのは普通にそういう性癖だ
席を立った俺はひとまずチーズケーキとプリン、エクレアを取ってトレイに乗せる。食べたいものは色々とあったがまだまだ時間はあるため無理に取る必要はないだろう。それは叶瀬と雨宮先生も同じだったが玲奈は違った。
「……なあ、芦田はそんなに大量に取ってきても大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ、それに何回も取りに行くのは面倒ですし」
「流石に限度ってものがあるだろ、後になって玲奈が泣きついてくる未来が容易に想像出来るぞ」
「玲奈先輩って相変わらず後先考えないですよね」
「皆んな心配し過ぎだよ」
なんと玲奈は台車まで使って複数のトレーに大量のスイーツを乗せて持って返ってきたのだ。見ているだけで吐き気がしそうなくらいには大量にある。
確か玲奈は子供の頃も回転寿司で食べきれないくらいお皿を取りまくってめちゃくちゃ怒られてたしその頃からマジで変わってないな。そんな事を考えながらスイーツを食べ始めていると叶瀬が口を開く。
「それにしてもこのメンバーで食事するって中々新鮮じゃないです? 先輩や玲奈先輩とは何だかんだよく一緒に食べますけど」
「確かに生徒の俺達とは違って雨宮先生は教師なので中々機会がないですもんね」
「だな、引率をするような部活の顧問もやってないし生徒と食事をするような機会はほとんど無いな」
だからこの間一緒にラーメンを食べに行った事はかなりレアだったに違いない。まあ、あれは職質された時に助けたお礼だったため例外だろうが。
「それなら雨宮先生も女子バスケの顧問になったらどうですか? そしたらもっと生徒とご飯を食べる機会も増えますよ」
「女子バスケだけは勘弁してくれ、暁を筆頭にした奴らから絡まれまくる未来しか見えない」
「そう言えば紗羅のせいで授業中に処女だってカミングアウトしちゃいましたもんね」
「やっと忘れかけてたのに嫌な事を思い出させるな」
そう言い終わった雨宮先生は机の上に置いてあったケーキをパクりと食べる。あれだけカロリーを気にしていたのにケーキを食べたという事はやけ食いかもしれない。
そして雨宮先生がヤンチャ女子の巣窟である女子バスケットボール部の顧問になんてなったら間違いなく毎日のようにいじられそうだ。
「じゃあそろそろあれをやらない?」
「良いですね、そうしましょう」
「ん、あれって何だ?」
「俺も全然ピンと来ない」
あれという言葉だけでこれから何をするのか察した叶瀬とは対照的に俺と雨宮先生は何のことか全く分からなかった。
「あれって言ったらやっぱり恋バナしかないでしょ」
「完全に修学旅行の夜のノリじゃん」
「悪いが私に恋バナで話せるようなネタなんて特にないぞ」
「先輩も雨宮先生もやりましょうよ」
俺と雨宮先生は難色を示していたが玲奈と叶瀬に押し切られて付き合う流れになってしまう。
「まずは好みのタイプについて話そうよ、私は同い年かな。それ以外はちょっと考えられないんだよね」
「私は歳上以外は眼中に無いですね、やっぱり歳上の包容力は同い年や歳下には出せないと思うで」
「何を言ってるんだ、歳下一択だろ。私に癒しを与えてくれるのは歳下以外あり得ないから」
ノリノリな玲奈と叶瀬は分かるが意外な事に雨宮先生もかなり食い気味に参戦してきた。玲奈と叶瀬の好みは知らなかったが雨宮先生は部屋の中にあったエロ漫画の系統がそっち系だったので意外性は全くない。
「えっ、もしかしてそれ目的で教師になったんじゃ……」
「もしそうなら普通にドン引きなんですけど、先輩も注意した方が良いですよ」
「いやいや、教師になるのは子供の頃からの夢だったから関係ない。歳下好きなのは普通にそういう性癖だ」
「ドヤ顔でそんな事を言っても全然格好良くないですよ」
俺は呆れ顔でそうツッコミを入れた。すると雨宮先生は反撃と言わんばかりに言葉を返してくる。
「そういう沢城はどうなんだ?」
「あっ、それ私も気になる」
先輩は歳下ですよね?」
「どう考えても同い年でしょ」
「歳上に決まってる、なんて言ったって大人の余裕があるからな」
気付けば三人から集中砲火を浴びせられていた。ひとまず何か答えないと収まりそうにないため無難な答えを選択する。
「……やっぱり年齢とかに関係なく好きになれる人かな」
「その答えは一番つまらないから無しで」
「そうですよ、ちゃんと選んでください」
「どっちつかずな男は嫌われるぞ」
やはり今の答えではダメだったらしい。正直に答えないと許してもらえない事は目に見えているので観念して答える。
「歳上だ、これで満足だろ」
「やっぱり沢城は分かってるじゃないか」
「えー、歳下じゃないんですか。ちょっと理解できないんですけど」
「誕生日は私の方が潤より少し早いからそういう意味では歳上って言えるかも」
玲奈と叶瀬、雨宮先生は三者三様なリアクションを取っていた。ちなみに俺が歳上が好きな理由は初恋が絡んでいる。案の定三人から理由をめちゃくちゃ追求されたがそこは頑なに答えなかった。
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