第38話 そうですよ、私ってかなりハイスペックなので
オムライスの材料を買い終わって家に帰った俺達はひとまずスーパーのレジ袋からダイニングテーブルの上に材料を取り出す。
「じゃあこれから先輩のために美味しいオムライスを作るのでそこに座って私の勇姿を一瞬たりとも目を逸らさず見ててください」
「えー、ずっと見てる必要なんてあるか?」
「だって先輩は私に対して料理が苦手そうなイメージを持ってるとかって言ってたじゃないですか、だからもう二度とそんな事を言わさせないようにしっかり見てて貰います」
どうやら叶瀬はこの前の俺の発言を根に持っていたらしい。叶瀬はめちゃくちゃ記憶力が良いので迂闊な事を言うと今回のように後で掘り返される可能性があるため注意が必要だ。
本当は叶瀬が料理している間も勉強時間にしようと思っていたが仕方がない。それに叶瀬はそんな事をしないと思うが万が一性欲に負けて何かを盛る可能性も残念ながら否定しきれないため見ていた方が安全だ。
そんな事を考えているうちに叶瀬は料理に取り掛かり始める。初っ端から見ていられないほど酷かった玲奈とは違い全てがスムーズだ。
「どうですか、これで私の料理の腕を信じる気になりました?」
「そうだな、まだ実際には食べてはないから味は分からないけど少なくともちゃんと料理が出来そうとは思ったぞ」
普段から料理をやり慣れていなければこんなにも手際良く出来るはずがない。お世辞抜きにそう思えるほど叶瀬の動きは洗練されている。昨日の玲奈とは大違いだ。
「ちなみに勿論味もしっかり美味しいので期待しててください」
「ああ、これだけ料理出来るオーラを出しながら作ってるのに味が不味かったらめちゃくちゃびっくりする」
その後も叶瀬が料理する姿を横から見ていたがとくに問題はなく卵の部分まで完成させた。後はチキンライスに被せてケチャップをかけるだけだ。
「あっ、ケチャップまで私がかけるのでそこに置いたままで大丈夫です」
「オッケー、分かった」
何もしていないしオムライスのケチャップをかけるくらいは手伝おうかと思ったが叶瀬がやると言っているのでそこも任せよう。そう思っている間に叶瀬は卵をチキンライスに被せその上にケチャップかけ始めた。
「やけに丁寧にケチャップをオムライスにかけてるなと思ってたらわざわざハートの形にしてたのか」
「男子はこういうのが好きだって聞いたので先輩のために特別にやってあげてたんですよ、嬉しいですか?」
得意げな表情を浮かべながら聞いてくる叶瀬に対して俺はわざとらしく凄まじい片言の棒読みで返答をする。
「嬉しいなー」
「……あんまり心がこもってなかった気もしますが今回は許してあげます、これで完成したので熱々のうちに食べましょう」
そう口にしながら叶瀬は二人分のオムライスをダイニングテーブルまで運んできた。それから俺達は席についてオムライスを食べ始める。
「うん、味もめちゃくちゃ美味しい」
「でしょ、これでもう二度と私が料理下手とは思わないはずです」
「このオムライスを食べてそう思うやつは普通に考えていないと思うぞ」
とにかくこれで俺の中から叶瀬が飯まず女子というマイナスのイメージは完全に消え去った。それにしても叶瀬は本当にスペックが高いな。
顔が可愛いだけでなく頭も良い上に料理まで上手いのは本当に凄い。叶瀬を見ていると天は二物を与えずという言葉は絶対に嘘だと強く感じる。
「叶瀬って俺が思ってた以上に凄いやつだったんだな」
「そうですよ、私ってかなりハイスペックなので」
「さっきからやってるそのドヤ顔はなんか腹が立つけどそこは素直に認めるよ」
もしも叶瀬が後輩ではなく先輩だったら大変だったに違いない。多分今以上に振り回されている姿が容易に想像出来てしまう。そんなやり取りをしつつ食はどんどん進みあっという間に完食した。
「美味しかった、作ってくれてありがとう」
「どういたしまして、先輩が望むならまた作ってあげても良いですよ?」
「そう言われると割とマジで悩むレベルだわ」
「前向きに考えておいてくださいね」
あんまり叶瀬にばかり構っていると玲奈が色々と文句を言ってきそうだがそこは許して貰いたい。胃袋を掴まれた男は貞操逆転なんて関係なく弱いのだ。
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