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第19話 エロ漫画は電子よりも紙派だし、発売されたらなるべくすぐに買いたいんだ

 叶瀬に散々連れ回されてから一夜が明け、日曜日になっていた。今日は何も予定がないためゆっくりするつもりだ。

 それもあって朝もしっかり二度寝までしてから十時過ぎに起きた。起きてからもベッドでごろごろしていた俺だが買おうと思っていたラノベの発売日が昨日だった事を思い出す。


「……面倒だけど買いに行くか」


 俺は電子書籍よりも紙の本で読みたい派だ。ひとまずベッドから起き上がりパジャマから着替えた俺は洗面所で髪を濡らして寝癖を直す。そしてワックスで適当に髪をセットして家を出る。


「内容はWEB版からどのくらい変わってるんだろ」


 俺がこれから買おうとしているゴッデストライアルオンラインというタイトルのラノベは元々作家になろうというネット小説投稿サイトに掲載されていたものだ。

 そこに掲載されている作品は出版社からオファーの声がかかって書籍化やコミカライズなどをする事があるらしい。

 面白い作品である事は勿論、作家になろう内のランキングや評価ポイントなども関係してくるため商業化するのはほんの一握りしかない。

 1000ポイント取れば上位5パーセントになるサイトで書籍化の目安が30000ポイント以上なのだから普通は無理だ。


「まあ、あれだけバズったら書籍化しない方が逆に難しい気はするけど」


 GTOゴッデストライアルオンラインはログアウト不可能でゲームオーバーになれば死ぬVRMMOを主人公達がクリアするために奔走する作品だ。

 ここだけ見ればよくある設定の作品でしかないが第一章の最後で大どんでん返しが起こる。それはGTOというゲームが実は異世界召喚する勇者を効率よく選ぶために女神が創り出した選考装置だったという事だ。

 そこで第一章のVRMMO編が終わり第二章の異世界編へと話が移っていくわけだが、この展開は完全に予想外でありSNSなどで大きな話題になりありとあらゆるランキングの1位を独占した。

 ちなみに今回書籍化される部分は第一章らしいがかなり加筆したらしいのでWEB版既読勢でも楽しめるとの事だ。

 そんな事を考えながら歩き続けて本屋へと到着した俺が早速ラノベの棚へ行こうとしていると不審者が目に入ってくる。

 全身黒づくめな服装をしていて帽子とサングラスをかけている女性は見るからに怪しかった。俺はそんな女性を見て誰かに似ていると思い始める。


「……あっ、もしかして雨宮先生か?」


 背格好や歩き方が雨宮先生に似ていた。もしかして本人だったりして。そんな事を思いながらこっそりついて行くと女性はエロ漫画のコーナーへと入っていく。


「もしかしてエロ漫画を買うところを誰かに見られたくなくてあんなおかしな格好をしてるのかな」


 もしあの女性が雨宮先生なら多分そんな理由な気がする。万が一教師がエロ漫画なんて買っている姿を生徒に見られたら中々のスキャンダルだ。


「でもあんな目立つ格好をするのは逆効果だと思うけど……」


 百七十六センチほどある身長で全身黒づくめの女性が目立たないはずがなかった。だから周りからもめちゃくちゃじろじろ見られまくっているし、俺も気になってつい見てしまったのだから。

 しばらく観察していると女性は俺の方を向いた瞬間固まり、手に持っていた漫画を床に落とした。あっ、絶対雨宮先生だ。


「雨宮先生、こんなところで会うなんて奇遇ですね」


「すまないが人違いだ」


「声色を変えて誤魔化そうとしても遅いですって」


「……何で私だと気付いたんだ、変装は完璧だと思ったのに」


 俺が問い詰めると雨宮先生はあっさりと認めてしまった。これ以上嘘を吐いても無駄と気付いたからに違いない。


「変装するならもっと上手くやった方が絶対良いですよ、そんな目立つ格好をしていたせいで俺にバレたんですからね」


「今度はもっと目立たないようにしないと……」


「そもそもエロ漫画買うなら電子書籍にするか紙の本を通販サイトで買えば良いんじゃないですか?」


「エロ漫画は電子よりも紙派だし、発売されたらなるべくすぐに買いたいんだ。わざわざ家に届くまで待ってられないからな」


 まさかの俺と同じような理由だったようだ。雨宮先生と俺は案外気が合うかもしれない。


「てかエロ漫画を買いに来た事に関してはあっさり認めるんですね、てっきりさっきみたいに誤魔化すのかと思ってました」


「!?」


 雨宮先生はしまったと言いたげな顔になって動きを止めた。うん、完全に処女とクラスメイト達に知らてしまったあの日と全く同じミスをしている。


「まだバレたのが俺で良かったですね、もしこれが玲奈とか暁さんだったらまたネタにされてましたよ」


「もうこれ以上言うのは許してくれ……」


 雨宮先生は恥ずかし過ぎて今にも死にそうな顔になっていた。もし俺が同じ立場でも絶対そうなる。ライフは間違いなくゼロになっているに違いない。

【読者の皆様へ】


数話ほど雨宮先生の話が続きます


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