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月が見つめる朝と夜  作者: 御子柴 流歌
第1章: Morning Mist

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1-7. 売られた喧嘩は買う主義

        ●        ●




「じゃあ、これで最後な」


「うっス」


 (さくら)()がよくわからない体育会系っぽい返事を先生にして、荷物を受け取る。その内のいくつかをあたしにも回してもらい、ふたりで体育館へと向かう。


「そういう返事って、何か野球部の専売特許みたいなところない?」


「それ、たぶん偏見」


「……ま、たしかにそうだろうけども」


 お笑いのネタでもあった気がするけれど。まぁ、別にいいだろう。


 翌日に学年レクを控えた放課後、委員会メンバーはしっかりと準備に借り出されていた。

 もちろん体育館では下級生たちが部活動をやっているので、大部分の準備は明日の朝になる。

 今日はレクで使う機材などを、部活の邪魔にならない程度のところに広げておくだけだ。


 ただ、予想していたよりその荷物が届くのが遅くなった。

 そろそろ体育館を使う部活が入れ替わるタイミングなので、そこと重なったのはラッキーだったが、こちらとしても予定があるのであまり遅い時間になってしまうのは困る。

 少し急ぎ気味で体育館への廊下を進む。


「ところで、作戦担当さん」


「ん?」


「明日の首尾は?」


「……まぁ、大丈夫なんじゃね?」


「相っ変わらず軽いねえ」


 桜木は少々考えつつも鼻で笑って返事に代えてきた。

 ちょっと生意気な反応が癪に障ったので、空いていた左手で脇腹をくすぐってやることにした。


「あ、お前! 落とすだろ、やめろバカ!」


「まぁまぁ。フフフ、良いではないかぁ、良いではないかー」


 思った以上に良いリアクションが返ってくる。ただ単純にノリ良く返してきたという雰囲気ではなかったところを見ると、脇腹を触られると弱いタイプなのかもしれない。

 どうやら偶然にもコイツの物理的な弱点を見つけることができたらしい。

 今度からもう少し頻繁に攻めてやろうかと思った。

 ――その後の反撃が来るのもイヤなので、少しばかり桜木のリーチからは外れるくらいの距離を取ることにしておく。


 体育館に着くと、男女それぞれのバドミントン部がネットの片付けを終えて体育館から出てくるところだ。出入り口のあたりには、次に体育館が割り当たっているバレーボール部が控えていた。


 搬入口の都合上、ステージとは反対側の出入り口から体育館に入る。ステージではすでに他の委員の子たちが作業中だ。何人かがこちらに気付いて手招きをしている。最後の荷物を置けば今日の準備は終了だった。


「あ! (あさ)()せんぱーいっ!」


 この場で自由解散となったのでさっさと帰ろうとしたところで、思いっきり声を掛けられる。当然だけど声の主は女子バレーボール部の後輩たちだった。


「先輩、久々にどうですか!」


「レシーブ練習付き合ってほしいです!」


「彼氏できましたか、先パイ!」


「コラッ! 今、全然部活と関係ないこと言った子いるでしょ!」


 話の流れと勢いを悪用した約1名に、今はとりあえず軽い指摘だけをしておく。

 ――練習時間ではちょっとだけキツいボールを振ってあげることにしよう。


(くり)(さわ)じゃないか、ここ来るのは久々だなぁ」


「あ、どもです」


 女子バレー部顧問の(おお)(ぬき)先生もやってきた。


「どうすんの?」


「まぁ、頼られたらねえ」


 桜木が訊いてくる。

 状況的にここを断る理由はそれほど無いし、断れる気もしないのも確かだった。

 通常はジャージ登校が認められている我が校ながら、この時期にもなると制服登校が原則になってくる頃だ。

 制服しかないのなら話は別だが、幸か不幸か今日はまだジャージ登校なので今も思いっきり着用中である。


「ホントですか!」


「でも、最近あんまり顔も出せてなかったから、腕鈍ってるかもしれないからね。その辺含めてお手柔らかに」


「ありがとうございます!」


 満面の笑みを後輩たちに向けられて、ちょっとだけ気持ちが良くなっている自分も居た。我ながら現金なモノだった。


「んじゃあ、がんばれよ」


「あれ? 応援してくれるんだ?」


「……そういうんじゃねえよバカ」


 捨て台詞を吐きながら、他の委員の子たちといっしょに体育館を出て行く桜木。何故かその様子を後輩たちも見つめていた。

 不思議に思っていると、彼女たちが急に揃ってこちらに振り向いてきた。

 あまりの勢いで、思わずビクッとしてしまった。


「もしかしてあの人ですか?」


「は?」


 あの人とは?


「え? 違うんですか? すっごい彼氏さんっぽい感じでしたけど」


「はぁっ!?」


 思わず大声を出してしまう。


 桜木が? 彼氏っぽい雰囲気?


「無い無い! ……無い無い無い無い!」


 倍にして重ねてしまった。

 いや、でも、本当にそれだけはマジであり得ない。たとえ明日の最高気温が30度を超えて積もっている雪が全部融けたとしても、たとえ実は地球は丸くなかったなんてことが判明しても、たとえ国会議事堂が宇宙人に占拠されたとしても、そんなことは絶対にあり得ない。


「そこまで全力で否定されると、ねー」


「逆にちょっとアヤシイですよ?」


 だけれど、余計に決めつけにかかってくる後輩たち。


 ――怖い物見たさというヤツなら仕方ない。


「あんまりしつこいこと言ってると……、わかってる?」


 2年生連中の顔から色が消えた。


 パワハラ? 

 そんなモン知ったことか。失礼な態度にはそれ相応の報いが必要ってなモンだ。


「……アンタたち、このあと覚悟してなさいよ?」


買った結果は次話にて。

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