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月が見つめる朝と夜  作者: 御子柴 流歌
第5章: Delicate Daydream

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33/57

5-1. 本命校入試前日

第5章です。

答え合わせの序章。

       ●



 公立高校の入学試験がとうとう翌日に迫った。今日はその下見の日。昼の電車は思った以上に空席が目立っている。かなり短い編成で来ているのにも関わらず、載せていたのはほとんど空気。あたしたち下見の学生が乗り込んで、ようやく人並みの電車と言った様相だった。


 少し前に行われた私立校入試の下見の時もそうだった。午前中で学校は放課になって、そのままの流れで下見に行くというのがプラン。

 私立の入試では大抵の生徒が電車に乗って市外にあるそれぞれの試験会場に向かうため、2度あった下見の日はともに最寄り駅と、そこから発車していく電車が大盛況になった。


 それと比較すれば、今日はかなり少ない。理由は単純で、公立校ならば市内にもいくつかあるため。大部分の生徒はそちらを受験するので、公立校入試の前日も電車に乗るのは毎年多くはなく、今年の3年生も全体で言えばほんの一握りだけだった。


「座っていけるのはラッキーだったな」


「そうねー」


 隣には(さくら)()がいる。もはやこの構図にも慣れてしまった。慣れたくはなかったが、慣れてしまった。


 私立校のときは他にも同じ学校を受ける子がいたのでもっと大きなグループになって向かった。

 その大半はウチのクラスの子で構成されていて、そのせいで――という言い方をすると語弊が無くもないが、やたらめったらあたしと桜木をペアにしよう、物理的にくっつけようというプランが動いていたらしかった。


 その原因は間違いなく、あたしが体調不良で倒れて、それを桜木が事も有ろうか――その、『ナントカ抱っこ』であたしを運んだという、あの冬季体育祭という名のお楽しみ会のせいだ。

 最悪でもそのまま、ありのままを周りに伝えてくれるだけで良かったのに、おもしろおかしくあらゆる脚色を施した上で事の顛末を他クラスの子に教えるものだから、全員が面白がってくれやがったという、あたしにとっては悪夢以外の何物でもない状況が発生した。


 結果的に、何かにつけてあたしの隣には桜木がいるという状態がデフォルトになってしまった。


 しかも、A日程・B日程と学校によって2回に分けられている私立校入試の、その両方で同じ状況を作られてしまったから質が悪い。受験校が同じだったこともそれが状況証拠だと言わんばかりの扱いを受けってしまった側面があるわけで、正直面倒で仕方が無かった。同じ学校に進学しないんだったら、最後にひとつ楽しくイジリ倒してやろう――みたいな流れがあったんだったら、あたしはそいつらを末代まで祟ってやることも辞さないつもりだ。


 今日はあたしと桜木でひとつのグループといった状況。他にもあたしたちと同じ学校を受ける子がいるが、残念なことに他のクラスでそれぞれグループを作っていた。受験校は違えど同じ電車に乗る子はいたが、そちらもまた別でグループができていた。


 その結果、妙にその子たちがあたしたちの位置からはやや離れたドア近くに立ちながら、頻りにこちらを窺うようにしていた。だったらこっちに来いや、という話だ。恐らくは、そうやってイジる精神的余裕が無いせいだろう。

 この地域の中学生にとっては公立高校受験がメインで、私立は滑り止めという形態を取ることが多い。言うなれば私立校入試は入学試験の前哨戦であり力試しであり、模擬試験や学力テストにも似たような状況だ。自分の将来を左右する公立高校入試を目前に控えて、そんな余裕は無いのもしれなかった。


 まだ前日なんだから、勇気を出してこっちに来ればいいのに。しっかりとイジり返してあげたくて仕方が無いのだが。


「……どした?」


「別に」


「あ、そ」


 桜木はそういう視線をとくに気にした様子もなく――もしかすると、そもそも気が付いていないのかもしれないが――、あたしの様子にも大した興味を示さずに、またスマホを眺め始めた。ゲームをしているわけではなく、ただぼやっと何かを見ている。ネットサーフでもしているのだろうか。


 いつもはスマホを学校に持ち込むのは禁止されているが、下見の日は別だった。もちろん校内にいる時はどんな理由があろうとも電源を切るように厳命されている。ちょっとした特別感のようなモノに気分が高揚する生徒もいて、他クラスでは結局下見に出る直前まで没収されていた子もいたらしい。完全なる自業自得なので、とくにこれといった感情は湧いてこないが。



色恋沙汰はイジるのが楽しいが、早々にそこから脱却しないと痛い目に遭う。

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