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月が見つめる朝と夜  作者: 御子柴 流歌
第4章: Symmetric Sunrise

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28/57

4-4. 感想を素直に告げることの功罪

        ○



 然程時間もかからずに出てきた2杯目になる――私のせいでユウマさんは1杯目になるけれど――ショコララテを、まずはよく冷ますところから始める。さっきのおじさんの一言が引っかかるので、いつもより出力は抑えめにして息を吹きかける。

 しかし、そのたびごとにふんわりと漂うチョコレートの香りが、良い。とにかく、良い。つい、引き寄せられてしまう感じの芳香。これは危険だ。


「あぁ、悪くないなぁ」


 おじさんはもうひとくち目を堪能しているようだ。


「ラテのミルク多めにしていれば、案外ビターチョコでも良いかもしれないな」


「カカオ成分が濃いモノは健康志向な人にも人気ですよ」


「……お。ありがたし、若者の意見」


 わざとらしく、おじさんは手の平にメモを取るようなジェスチャーをした。

 年齢(トシ)が出るリアクションだ、とか言ったらまた余計な反応をしてくるのが見えている。今は放置しておこうと思った。


「話には聞いていたけど、美夜ちゃんの口からそれを聞けたのは安心材料だな」


「おじさん、テレビとか見ないんですか?」


 一時、そこそこ話題にもなっていたはずだが。


「ワイドショーとかはあんまり見ないなぁ」


「そんな気はしてました」


 伯母さんから聞いた話では、ニュースかスポーツ中継くらいしかテレビを見ていないとのことだった。ドラマも見なさそうだし、だいたいこれくらいの年齢の男性なんてみんなそんなもんだろうとは思う。


「ちなみに、若人(わこうど)ふたりにはさっきと同じミルクチョコを使ってる」


 ――若人、って。


「甘さはありますけど、そこまで残る甘さじゃないのが良いですね」


 とくに気にする素振りもなく、ユウマさんは落ち着いたレポートをおじさんへ伝えている。どうやら甘いモノは苦手ではないらしい。


 時折、格好を付けたいのかどうなのか知る由はないが、周囲の視線が無いかを若干気にしながらコーヒーを飲んでいる同級生の姿を見ることがある。そのほとんどが、実は砂糖もミルクも多めなモノを飲んでいるか、ブラックに挑んで失敗しているかのどちらかなので、本当に締まらない映像だ。それにしても、一体あれは何なのだろう。一種の通過儀礼のようなモノなのだろうか。


 そういう姿を見た上で、なおも熱心にラテ・レポートをするユウマさんを改めて眺めてみる。


 ――別に、甘いラテを飲んだって良いじゃないか。


 背伸びなんて無駄なことはする必要ない。コーヒーが飲めたからって別に偉くなれるわけでも、オトナになれるわけでもない。人それぞれに好みがあるのだから、ムリをする必要はないのだ。


()()ちゃんはどう?」


「え?」


「味の感想」


「……あ」


 そういえば、2杯目にはまだ口を付けていなかった。


「もうそこそこ冷めてると思うよ」


「うるさいです、おじさん。味に集中できません」


「……ウッス」


 鳩のような首の動きを添えられて、いよいよもって小馬鹿にされているような気がしなくもないが、別にいい。おじさんからの猫舌イジりは構うだけ損なところはある。もちろん、それ以外にもいちいち反応していたらキリが無いようなことを平気でやってくる人ではあるけれど。


 日中とかに来てくれたお客様にもそういうウザ絡みをしてやいないか、少々気になってしまうところはあるけれど、今はとりあえず自分で言ったとおり、味に集中しようと思う。「……ふぅ」


 ――意外と、熱くなかった。


「どう?」


「丁度いい感じです。甘さも、苦さも」


 あと、温度も。


「個人的に『追いチョコ』が出来たらうれしいな、って」


「ああ、あるね。そういうのやってるとこ」


 追加料金でチョコ2倍とかにしてくれるところは、|大手の舶来系コーヒーショップ《スターバックス》なんかでは定番中の定番だ。カスタマイズが出来ると楽しいのは、何だってそうだと思う。


「時々はもうちょっと甘いのがいいなって時もあるだろうし、逆に今日はちょっとだけ甘さが欲しいなっていう時もあると思うんで、……実際にオーダーされて作るのはおじさんなんで、そこらへんが手間とかじゃなければの話ですけど」


「おや、心配嬉しいな。たぶん大丈夫だね。むしろその辺を売りにしてもいいかもしれないな」


 おじさんが満足できる回答が出来たらしい。


「それと……」


「うん?」


「……温度高め、イイと思いました」


「でしょ?」


「はい」


 だったら、素直に認めてあげた方がいいのかもしれない。そう思っただけだ。


「今回はお試しだから、駄菓子みたいなチョコを使ったんだけど。案外それでもイイんだなぁ……」


「え? おじさん、今なんて?」


「ん? いやぁ、だから、わりと安い、それこそスーパーとかで売ってるチョコを入れただけなんだけど、案外コスパ良く済むんだなぁって思って」


 さっきのコメント、撤回すべきな気がしなくもなかった。


 横を見遣れば、ユウマさんもこちらを向いていて、何やらコーヒーよりはやや温度が低い程度の生温い笑みを浮かべていた。


 ――なるほど、この人も同罪か。


 そう思いながら、残りのショコララテを一気に流し込んだ。

私はカフェラテもカフェオレも好きです。

無糖でいくか、だいぶ甘くするかで迷います。どっちかに振り切るのが好きです。

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