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X. 月光が嫌いだ
意味深なターン。
午前4時の冬。
朝はまだ遠い。
窓ガラス越しに空を見上げれば、薄気味の悪い笑顔で月がこちらを覗いていた。
月光は嫌いだ。
いつの頃から嫌いかは思い出せないし、思い出す気も更々無い。
何なら、嫌いなことにわざわざ理由を付ける必要も無いと思う。
嫌いだから嫌い。
だけどそれでいい。
何も問題は無い。
嫌いだという事実だけがそこにある。
そのことはどうやったって変えようが無いのだ。
真昼間の空に、帳尻あわせをするように浮かんでいるような、そんな月明かりが嫌いだ。
真夜中の闇を、これ見よがしに照らし出すような、そんな月明かりが嫌いだ。
月はいつだって人を惑わして狂わせるから――。
――だから昔から、月光は嫌いだ。




