“愛している”という言葉以上に君をどこまでも想い続けている。
僕の彼女は、突然! 僕の目の前からいなくなってしまった。
事故だった! 彼女は暴走して来た車に轢き殺されてしまう。
運転手は、高齢者でブレーキとアクセルの踏み間違え。
その日は、僕とデートをする約束だった。
そして彼女は、待ち合わせの場所に向かう途中だった。
滅多に彼女が行かない場所で、その日は待ち合わせをしていた。
僕が彼女に言ったんだ。
『明日は、いつも待ち合わせしない場所で待ってて! 君が喜んで
くれる場所に、必ず連れて行くから!』
『うん!』
・・・彼女は、嬉しそうに僕に頷いてくれた。
あれが、最初で最後の彼女の笑顔になるとは思いもしなかった。
僕には、【後悔】しかない。
勿論、後悔しても彼女は戻ってこないしどうする事も出来ない。
僕は彼女との、“これからの未来”も考えていた。
彼女と結婚して、家庭を持ち、子供がデキて、幸せになる!
いつも僕が近くで彼女を笑わせる。
そう想っていた。
でも、その願いはもう叶わない。
*
・・・数ヶ月後。
彼女のお母さんから僕に連絡があった。
彼女は、僕に“1つだけ隠し事をしていたらしい”
『ごめんね、彰吾君呼び出したりなんかして。』
『・・・い、いえ、いいんです! でも僕に話って何ですか?』
『ユラが、死ぬ前に彰吾君にはどんな事があっても話さないでほしい
って言ってたから、ずっと彰吾君には黙ってたんだけど。』
『・・・は、はい。』
『実は、あの子! “ドナー登録”をしていたのよ。』
『えぇ!?』
『あの子の心臓は、別の女性に移植されているわ!』
『・・・・・・』
『あの子は、亡くなってもう居ないけど、あの子の心臓は生きてるの!』
『・・・でも、』
『そうよね、いきなりそんなこと言われても受け止められないわよね』
『・・・あぁ、ははい。』
『もし? あの子の心臓に会いに行きたいなら、ここに電話して!
あの子の心臓を持った女性に会えるわ』
『・・・・・・』
・・・正直、彼女が亡くなった事もまだ僕は受け入れられない。
まだ、どこかで彼女が生きているように感じていたからだ。
でも? それは、彼女の心臓をもらった女性が生きているからかも
知れないと思った。
彼女が、亡くなったと思えないこの想いは、彼女が別の女性の心臓と
して生きているから!
何となく、僕のモヤモヤした気持ちが晴れていく。
きっと、この気持ちはそういう事だったんだと気づいからだ。
・・・僕は覚悟を決め! 数日後彼女の心臓をもらった女性に
会いに行くことにした。
『・・・あの、あなたが?』
『はい! 彼女のお母様から貴方の事は聞いていました。連絡があったら
会ってあげてほしいと。』
『・・・そうですか、』
『聞いてみますか?』
『えぇ!?』
『“彼女の心臓の音です”』
『は、はい。』
・・・彼女の心臓は、力強く鼓動を打っていた。
【ドクンドクン】としっかり動いて生きている。
それに、彼女の心臓をもらった彼女が何気に亡くなった彼女に似ている。
彼女がよくする仕草やクセ、好きな食べ物や好きな色、雰囲気まで似ていた。
心臓をもらった人が、亡くなった人の性格や好きなモノが好きになるといった
事をテレビで見たことがあった。
彼女もまた、僕の大好きだった彼女に凄く似ている。
『また、会いに来てくれますか?』
『勿論! あなたが良ければまた会い来ていいですか?』
『はい!』
僕は、亡くなった彼女の心臓の音を聞くために、何度も足を運んだ。
でも、いつしか?
僕は亡くなった彼女の心臓をもらったこの女性を好きになっていく。
彼女と一緒に居ると? 亡くなった彼女と一緒にいるように感じた。
日に日に、彼女は亡くなった彼女に似てくる。
僕は、彼女をいつまでも愛し続けると誓っていた。
僕は愛している”という言葉以上に君をどこまでも想い続けている。
その事が、はっきりと僕の中で分かった瞬間だった。
最後までお読みいただきありがとうございます。