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知名度の低い部活動のすべてが旧校舎に存在していたことはひとみにしてみれば驚きであった。

ところが、「何となくは聞いてたんだけど、旧校舎って本当にあったんだ」とあかりは瑠々に質問を投げかける。

「へき地です。誰も来ないような辺境の地に旧校舎はあるんです」と瑠々が言う。

ずいぶんな言われようではないか。

ポツンと一軒家じゃあるまいし…。

そこに山があれば普通は登るでしょ。

鬱蒼とした林だとしても探検したくなるもんでしょ。

まるで魔界の入り口か何かみたいな言われようだ。

ところが実際、ほとんどの学生が一度も旧校舎と関りを持つことなく、存在すら知らないまま卒業するのが普通であった。

何がその場所を閉ざされた場所に変えているのかひとみは考える。

道の入り口に立ち入り禁止の看板が立っているせいだろうか。

それとも所々に首だけ斬り落とされたようなお地蔵様が立っているせいだろうか。

林に分け入ってすぐの場所にボロボロの服を纏ったマネキンが首を吊ったようにぶら下がっているせいなのか。

さらに道を進むと風で林が揺れ、その音がまるで女の声に聞こえてくる時もある。

はげ落ちた朱色の鳥居がまるでドミノ倒しでもしたかのように倒れたままになっている。

でもそれくらいのものだ。

たまに土の中から李愛に足を掴まれることもあるが、驚くのは最初だけである。

誰も入らないのが逆に不思議である。

「知らなかった…」とあかり。

すると、「私も」とほとんどの生徒がそう言うではないか。

 旧校舎の存在がそんなに知られてないことに驚いてるのはひとみくらいである。

 当たり前のように部室を訪ね、部員として活動をしていたからだ。


ほぼ毎日のように配信される学校新聞の人気は高く、瑠々が記事を書くようになってから、ほどんどの生徒が既読するツールになっていた。

今や瑠々はももち浜学園のインフルエンサーとして不動の地位を獲得していた。

それに対して学園二大新聞の一つ、オカルト研究会が発行する「恐怖の新聞」の存在は忘れ去られようとしていた。

ただ「恐怖の新聞」に関してはほとんどの人が読んだこともなく、オカルト研究会じたい瑠々が調査するまで存在すら疑われていた部活である。

そんなオカルト研究部に軽音部は負けたのである。

知名度が低い部活ランキング第一位。

それはとんでもない偉業であった。

「ねえ相変わらず面白いわね」とあかり。

「ほんと、瑠々の記事は最高よ」

 インフルエンサーの瑠々の記事によって、軽音部にスポットライトが当たった。

「軽音部って何?」

「そんな部知らない」と大騒ぎ。

 園内ツィーターでトレンド入りを果たしたのである。

 瑠々のおかげで軽音部が突然有名になった。

知名度の低さで学園ナンバーワン。

 そんなので一番を目指したわけじゃない。

一番にならないと気が済まないひとみに新しい冠が加わった。

「私がいるとなんでも一番になるのね」とひとみは負け惜しみを言う。

瑠々の記事はこう分析していた。

部活はしない。

文化祭にも参加しない。

どこにあるかも分からない。

オカルト研究会と同じで長い間存在を疑われていた部活である。

ただ唯一多額の部費が毎年支払われているので、存在してるのは間違いないだろうと。

その学園都市伝説ともいえる諸々の同好会の発見は校内新聞によってスクープとして報じられた。

全て瑠々が仕組んだことである。

そして記事はさらなる闇に踏み込んでいく。

多額の部費である。

軽音部に支払われている部費がどう使われているのか?

調査、続行中と記事はしめていた。

あれだ、セルマー社のサックス…とひとみは思う。

しかしあれは吹奏楽部に送られている。

だとしたら何に部費を使っているというのだろう。

駄菓子か!

いや、あれは数の子先生のポケットマネーだ。

じゃあなんだ…。

漫画の本?

いや、コスプレ衣装。

きっと竜ケ崎は多額の部費を横流ししてコスプレ衣装をつくっていたのだ。

これはとんでもないことになるぞ。

生徒会長がその特権を活かして、部費を横流し。

サックスのことだって問題になるかもしれない。

そうなったらどうなる。

退部か。

いや、退学もある。

どうするの、竜ケ崎先輩。

最後の悪あがきを見せるのかな。


瑠々は校内放送特別番組「さゆきの部屋」に出演。

さゆきの校内放送で、「今度調査してみて改めて軽音部の知名度の無さに驚きました。だって私のお友達が軽音部だったので、みんなも知ってるものだとばかり…」とインタビューに答えた。

「学園の七不思議も知れ渡ってないのにビックリしちゃった」と付け加える。

 瑠々はインタビューの最後に、

「それと文章を書くのが好きな方、新聞部に興味のある方、一緒に七思議を調査しませんか?新聞部は常に新しい人材を募集しています。来たれ!新入部員」と瑠々は大声をあげた。

 結局新聞部の部員募集に利用されたようである。

 瑠々はきっとほくそ笑んでいるのだろう。


と、突然、放送部があわただしくなる。

「生徒会長、どうしたんですか」とさゆきの焦る声。

「ええ、この場を借りて皆さんに命令を下したいと思います」と竜ケ崎の声。

 どうしたのとみんなが校内放送に耳を傾ける。

「本日、ただいまより生徒会長命令を発令します」と竜ケ崎の声が学校中に響き渡る。

 先生たちも聞き耳をたてている。

「明日からももち浜学園の制服を萌え萌えのコスプレ衣装に変更します」

一瞬みんなは目を見合わせる。

本気なのとひとみは驚く。

コスプレ衣装でしょとざわめき出す。

「この学校をももち浜萌え萌え学園に改名します」と宣言した。

どうしちゃったの、竜ケ崎先輩。

暴走し過ぎでしょ。

最後の悪あがきなの。

「生徒会長命令です。普通のかっこうの生徒は学校には立ち入り禁止です。そして女子はパンツ系のコスプレはNGです。必ず膝上十五センチのスカートをはいてきてください」

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