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「ねえ、ひとみ。恐怖の新聞って知ってる?」とみゆが聞く。

「何、それ?」

「学園の七不思議の一つらしいんだけど…」と、その時みゆは少し怯えた表情を浮かべていた。

「知らない」

「オカルト研究部が特定の相手に送り付ける新聞らしいの…」

「知らないや、見たこともない」

とみゆはカバンから「恐怖の新聞」を取り出した。

「これ、どう思う」

ひとみは新聞を手に取る。

「小学生モデルで有名だった久保田みゆ。交通事故で即死って、何、これ!」とひとみは思わず新聞を握りしめる。

またいじめかとひとみは思った。

「ひどい悪戯ね」

ひとみがいじめにあって不登校だった話は何となく知っている。

かつてあかりが中学時代のいじめっ子を懲らしめたこともあり、少しだけ心配していたことだ。

いじめにあう人は一端いじめを回避しても違う連中に狙われることが多い。

それは違和感を感じたり、嫉妬したりする要素が他の人から見ても同じだからだろう。

例えば顔が外人言うだけでいじめにあったり、言葉の活舌が良くないというだけでいじめにあう例は多い。

イケメンや美人と言うだけで嘘を風潮されたりすることも多い。

ドラマなんかでよくある展開、「あの子、いい噂聞かないよ」とかライバルの悪い側の女子があることないこと言いふらすなんてことは、現実世界でも普通に起こっていること。

目新しいことでもなんでもない。

だからみんな共感する点があるのかもしれない。

ただほとんどの場合、あの時助けてやりたかったと思うだけで、何もしなかったという後悔を持っているもので、自分がいじめっ子を懲らしめた的な経験を持っている人はほとんどいないと思う。

だからこそ悪役が最後にひどい目にあっていく勧善懲悪な展開に視聴者はすっきりするのだろう。

いじめを目の当たりにして止めたいと思う人のほとんどが何もしなかった後悔を持ち、心のどこかで反省してるはずである。

いじめがテーマになったドラマなんかが流行るのも、そう言った心のモヤモヤをすっきりさせて欲しいという願いにストーリーが寄り添っているからかもしれない。

ひとみもよくその手の嫌がらせをうけてきた方だ。

ただひとみの場合は周りがそれを否定してくれることが多かったせいで、いじめにまでは至らなかった。

それは人徳みたいなもののおかげだろう。

でもそれは誰にもできることじゃない。

みゆの場合、小学生モデルという華やかな世界にいたせいで妬まれやすいフラグが立っている。

ただ大人しく自己主張をしないタイプの場合、噂に対して否定もしない上に、助けてくれる人も現れないのが普通だ。

みゆの場合、小学校モデル時代、かっこいい系で売り出していたせいもあり、実物のギャップもまた裏切られたと思う相手がいるのも確かなようで、あかりや朋子がみゆにもっと近寄りがたい子かと思ったとか口にするのもその一つであろう。

実際みゆは未だにみんなに壁をつくっているのは否定できない。

みゆはひとみがいる時しかみんなに心を開かないからだ。

だからひとみはみゆの架け橋になってあげなきゃと常に意識してることは確かである。

ただそれはみゆへの同情なんかではない。

意識してそうしてるわけではないが、なぜと聞かれたら、それは単純にみゆが好きで、大好きだから、みゆがみんなに愛される存在になってほしいとしか答えようがない。

みゆは喜びもそれほど分かりやすく表現する方ではない。

でもたまに急に思い出し笑いみたいな笑顔を見せた時、ひとみはその微笑みに癒されるのだ。

「恐怖の新聞をもらった人は必ず記事の通りに死ぬらしいの…」とみゆは小さな声で震えてる。

「噂でしょ、七不思議でしょ。悪趣味にもほどがあるよ」

「悪戯かな…」

「いたずらに決まってるよ。みゆに嫉妬した誰かがつくったんだよ、絶対」

「それならいいんだけど…」

「良くないよ。犯人を見つけましょう」

「だから犯人はオカルト研究部」

「何、どこにあるの」

 オカルト研究部…、どこかで聞いたことが…。

そうか、竜ケ崎が言ってたっけ、軽音部の隣りの部室だ。

「学園の七不思議なのよ。恐怖の新聞って」

「七不思議…?」

「そう、新聞が送られた人は新聞通りのことがおきるの」

「なわけないじゃない。七不思議でしょ。人体模型が走るとか、そんなやつでしょ。絶対嘘だから。これはいじめよ。みゆを怖がらそうとしてるだけのいじめだよ」

「でも…。祟りかもしれないし…」

「何が祟りよ。何の祟りよ。みゆが何をしたっているのよ。今から乗り込んでやる」

「やめた方がいいよ」

「どうして」

「昔からいい噂を聞かないし…」

噂って何よ。ドラマの悪役が言いそうなセリフを言わないで。

こんないたずら絶対に許せない。

「オカルト研究部は七不思議の中でも最も恐れられてる部活なのよ」

ああ、もう、何!

都市伝説みたいな話でしょ。

あんなのほとんどこじつけの後付けじゃないの。

恐怖の新聞をもらった人が絶対に死ぬんなら、未来から戻ってきたってこと?

タイムマシーンなんかあるわけないでしょ。

大体もうすぐ死ぬ人にわざわざいつ死ぬかなんて教えるなんて意味がわからない。

死刑宣告をして怯える姿を眺めたいわけ。

どう考えたって嫌がらせじゃない。

「やっぱり許せない。とっちめてやる」

「でも私、怖い」

「大丈夫だよ。私が今からオカルト研究部に乗り込んでくから」

「だめよ。祟られるから」

何が祟りよ。そんな非科学的なことあるわけないでしょ。

「みゆは来なくていいからね。軽音部の隣りだから、怖いでしょ」とひとみは一人で旧校舎へ向かう。

オカルト研究部。

その扉はもう百年以上閉ざされたままと噂されていた。

しかしこの校舎が立ったのはそんなに前じゃない。

やっぱり噂でしかないのだ。

誰よ。

みゆをいじめるのは…。

ひとみは何度もオカルト研究部の扉をノックした。

そして無理やり扉を開けた。

すると、そこは宇宙空間。

ひとみが立っていた床も消え、たった一人宇宙に浮かんでいる。

そしてそのまま気を失った。

目覚めた時ひとみは恐怖の新聞の話の全てを忘れてしまった。


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