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ももち浜学園一知名度が低い部活・同好会ランキング第一位に軽音部が輝いた。
学校新聞で募集をかけたところ、そもそも知名度が低い部活が分からないという返信が多過ぎて、学校新聞で二カ月に渡り、部活紹介を行った。
その中で所在地不明の同好会が三つ存在し、その一つがオカルト研究会。
部長、オカルト太郎。
副部長、犬田次郎。
タローとジローの南極物語みたいである。
部活紹介の欄に、「火の玉が爆発だ!」と手書きの文字が書いてある。
瑠々は部員と接触したようである。
「オカルト研究部が三位なの?」とひとみは不満げである。
と言うのも、二位に軽音部が入っているからだ。
そしてもっとも知名度が低かったのが砂文字研究会であった。
「砂文字研究会?」
ひとみはなんの部活か思いつかない。
砂文字と言えば、ナスカの地上絵しか思いつかない。
とは言えあれは動物なんかの絵である。
砂文字ではない。
何をしてるのだろうと、部活紹介を読むも、実はももち浜大学の部活であるらしく詳細不明になっていた。
しかもそのせいで砂文字研究会は除外されることとなり、軽音部が一番となったのである。
軽音部が一位。
不名誉な一位にひとみは軽くショックを受ける。
にしてもだ、軽音部がそんなに知名度が低いなんて…。
私がいるのにどうしてそんなに知名度がないのだろう。
主役級のオーラをまき散らしてるはずなのに…とひとみは悔しくなる。
そして三位にロボコン同好会が入っていた。
「ロボコン同好会ってあるんだ、やっぱり」
人体君はロボコン同好会の作品なんじゃとひとみは思う。
ダンスに特化したロボット。
ダンシングロボット1号とか名前がついてるのかもしれない。
だとしたら人体模型を模したのは悪戯なのだろうか?
一度ロボコン同好会に聞いてみたいものだ。
HIPHOP系の服を着せたほうが良さそうではないか。
雛型か…。
予算がない故に苦肉の策で、旧校舎に放置してあった人体模型に部品をつけて改良したのかもしれない。
しかしこれほどの技術力があるのなら、高専ロボコンでもエリート大学付属高校に勝てそうではないか。
なのにこの知名度の無さ。
がんばれ!ロボコン同好会。
私的には百点をあげたい。
そうだ、少なくとも今の私にとって人体君は癒しになっている。
アニマルセラピーと同様の役割を果たしている。
やはりいつか感謝を伝えに行こう。
「ロボコン同好会か…」とひとみは記事にしっかり目を通す。
と部員の名前を見る。
部員は不明と書いてある。
場所は…!。
なんと軽音部の真下ではないか。
旧校舎の一階にロボコン同好会は存在するようだ。
全く物音をさせず、一体全体、いつ、ロボットを製作しているというのだろう。
そう言えばこの前初めて音がしたっけ。
私が人体君の目を覗き込んだ時に…。
怪しい、この部屋、覗かれてるのでは…。
そして裏で竜ケ崎先輩が糸をひいてるんじゃ…。
人体君はやっぱりロボットなのでは…。
だとしたらかなりのレベルである。
ロボコンで優勝も狙えるのではないだろうか…。
ロボコンか…とひとみは思う。
理系女子というわけではない。
苦手な教科が存在しないだけなのだ。
ただロボコンのイメージは理系男子。
しかも眼鏡をかけてそう。
同好会というのだから部員も少ないはず。
やっぱり定員割れでロボコンに出れないパターンもありそうだ。
安易にロボコン同好会の門を叩いてもロボコンに出れない可能性は高そうだ。
それに同好会。
金のかかるロボコンには部費がないのは致命傷だ。全国優勝など夢のまた夢かもしれない。
とは言え、これほどのロボットを創れるのだとしたら、十分に全国優勝を狙えるのではないだろうか。
いつか本当に部を訪ねてみよう。
ロボコンか…。
人型ロボットが活躍してる姿を見たことはない。
いわゆる何かに特化したロボットばかりのイメージだ。
輪を投げるとか、蟹の足のような手で相手を妨害したり、体当たりをしたり。
でも人型ロボットの方が技術的にははるかに上であろう。
もしロボコンに本気で挑んだら、全国優勝…、ひとみはよだれを拭った。
あるな…。
ロボコン同好会か…。
ひとみはランキングのことを一日中考えていた。
大体何よ、私のどこがハーメルンの笛吹きよ。
私がお化けか何かに見えるわけ。
嫉妬だ、きっと。
可愛い私を妬む気持ちが私を化け物に変えたんだ。
西洋の魔女狩りと同じね。
何が知名度が低い部活よ。
軽音部よ。華がありありじゃないの。
誰よ、そんなアンケートとったの。
新聞部の大スクープですって。
瑠々じゃない。
しばらく罰として私の髪を可愛くするのを拒否するわ。
これ以上可愛くなってモテモテになったらどうする気?
私には時間が無いのよ。
男子が私の前に行列したら困るじゃない。
私が鉄のメンタルを持っていたとしても、自分のことを好きでいてくれる相手をふるのは精神的に疲れるんだからね。
あんまり私の可愛さにスポットライトを当てないでよね。
学園の人気者はみゆ一人でいいんだから。
スターのみゆだけでいいじゃない…。
私はみゆの代わりになるつもりはないんだから…。
みゆの代わりに私を祭り上げないでよね…。
ひとみは悲しい気持ちになっていた。
みゆ、ごめん、あの日呼び出したりしなければ…とひとみは涙を拭う。
記憶が少し混乱してる。
やっぱりあの日私はガストでみゆと会ったりしてないんだ。
じゃあ誰と話をしてたんだろう。
私がみゆと思っていたのは…、人体君だったのかな…。
考えてみると、私の愚痴をただ聞いててくれたのは確かだし…。
みゆじゃなかったのかな、やっぱり…。
寂しいよ、みゆ。