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「このたびは私たちメイドたちのグッズが販売となりました」と遥はメイドたちの控室に入る。

部屋いっぱいの在庫の数。

赤一色の部屋。

「普段、メイドたちはここで寛いでるんですね」と遥は笑顔。

 しかし急に顔が暗くなる。

「見てください、この在庫の山、山、山」と控室をぐるりと撮影する遥。

「この山は富士山でしょうか」と箱の中身をチェック。

「出ました。ひとちゃんTシャツ」と次の箱を目指す。

「もっと高い山を登りましょうか。マッターホルン」と箱を開ける。

「出ました。ひとちゃんアクリルキーホルダー」と中身を観察。

「そして一番山積みになっているのはエベレスト」と遥は梯子を組み立て、最上部の段ボールの中身を取り出す。

「出ました、やっぱり、ひとちゃんタオル」と赤いタオルを首に巻いて降りてくる。

「全てが売れ残っています」

といきなり、遥は土下座した。

「お願いします。助けてください。みんなの給料が支払われてません」

 遥はじっと頭を床に擦りつけている。

「全部売れ残りです。私たちはこの売れ残りの山に押しつぶされて遭難しそうになっています」

と、佳奈美とピヨリが現れた。

「ああ、疲れた」と佳奈美は椅子に座る。

「なんかこの部屋息苦しくない」と佳奈美が言うと、ピヨリがクラクラし始め、倒れる。

「ピヨリ」と佳奈美がピヨリを抱き起す。

「今、メイドが控室で遭難中」とジュリアがマイクを手に現れる。

「人工呼吸しなきゃ」と佳奈美。

「それより部屋中の在庫を失くさないと」とアキちゃんがジュリアのマイクを奪う。

「このままではメイドたちはみんな在庫の山で遭難してしまいます」

佳奈美がSのポーズ。ジュリアがOのポーズ。そしてアキちゃんがSのポーズをきめる。

「『SOS』ってことね」と遥が声をあげる。

「みんなの力をお貸しください。クラウドファンディング実施中。ご支援お願いします」と遥は再び土下座をして、動画は終了した。


と、仁香が現れる。

「ひとちゃんのミサンガつくったんだけど」

段ボールを抱えてメイメイがやってくる。

そしてメイメイは段ボールをテーブルの上に置く。

「ひとちゃんグッズの新作が届いたの」と仁香は箱を開ける。

仁香は箱を開け、鼻歌を歌っている。

佳奈美はメイメイに近寄って、

「グッズの注文動向はどうなってますか?」

「ほんの少しだけ売れただけね」

「って言うか…」と佳奈美は驚いた。

メイメイが明らかに太っていたからである。

「先輩、太りました?」

「私、悩みごとがあると食で紛らわす人なのよ」

「で、それですか」

メイメイは明らかにマツコ・デラックス化し始めていた。


「嫌だ、先輩。激太りじゃないですか」と仁香は話に加わってくる。

「誰のせいだと思ってんの?」とメイメイは怒る。

「誰のせい?」と仁香は首をひねる。

 自分を指差し、メイメイを指差し、にっこり。

「それは先輩のせいじゃないですか」と頬っぺたを突っつく。

「先輩の頬っぺた柔らかい♡」と仁香は何度も頬っぺたを突っつく。

「雪見だいふくみたいでおいしそう」と仁香は頬っぺたにチューをした。

えっ?とメイメイは思う。

ええええええーとメイメイはパニックである。

「今、キスしたでしょ」

「しました」

「どうして?」

「だっておいしそうだし、かぶりつくわけにいかないから、アイドルみたいにイチゴ大福ちゃんにチューしちゃいました」

仁香は悪びれずに言った。

「女子に私の初めてを奪われた」とメイメイ。

「やだな、先輩も仁香の魅力にロックオンですか?私って罪な女です」と上目使いでメイメイを見上げる。

メイメイはその瞳に吸い込まれそうになる。

そしてダメだダメだと首を振る。

こうやって在庫の山をチャラにしようとしてる。

意識してなけりゃ天性の小悪魔だ。

と、メイメイはポケットからスルメイカを取り出して口いっぱいに頬張る。


メイメイは再びVRゴーグルをつけて、ドリーに会いに行く。

ドリーを前にすると、急に仁香にキスをされたことが脳裏を駆け巡る。

そしてドリーに対して申し訳ない気持ちがあふれ出す。

「ごめんなさい」とメイメイは謝る。

「お前の泣き顔なんか見たくないんだよ」と2.5次元のドリーが囁く。

「ごめんなさい」

「お前が泣くと俺まで胸が痛くなる」

「私そんなつもりはなかったの」

「お前が他の女に無防備だったからなんだぜ」

「ごめんね、ドリー」

「俺のためにもっと注意してくれよ」

「すっかり私汚れてしまったわ」

「お前はお前が思っている以上に何倍も魅力的なんだから、俺の見てないところで他の女が狙ってることを自覚しておいてくれよな」

「もう、ドリーの前に姿を見せられない」

「俺は何があってもお前の味方だ」

「ごめんなさい」

「俺はお前が大好きだからな。それだけは忘れるなよ」

 ゴーグルをしたメイメイの頬から涙が伝わって下にこぼれ落ちている。

「ドリー、許してくれてありがとう…」

ゴーグルを外すとメイメイはすっきりとした顔をしていた。

進化したAIは心の浄化までしてくれる。

事故にあったようなものだしと病気は治ったかのように見えた。

しかしそれは外見だけに過ぎなかった。

内面の傷がトラウマのまま残っていた。

それ故メイメイは爆食はさらに進んでいった。


「在庫の山とメイメイ様のお腹のぜい肉の割合は完全に一致しています」とスマートウォッチが警告する。

「メンタルトレーニングをしながら、フィットネスをお勧めします」と注意を受ける。


「フィットネスか?」とドリーの戦隊ヒーロー風フィットネス動画を何度も再生し、真似をする。

疲れて就寝、これが今のメイメイのナイトルーティーンになっていた。



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