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そしてユーチューバーとして改めて人気を得始めたメイメイにも心の変化が現れていた。
ずっと心の中に秘めてきた想い。
ドリーへの熱い想いを伝えようと決心したのである。
それまではただ単に憧れの存在でしかなかったドリーに対等の立場で告白したい。
それは足利家に勤めるようになってからずっと隠し続けてきた想いであり、その言葉を言うために頑張ってきたと言っても過言じゃない。
今なら言える。
登録者数が百万人を突破した自信。
これでやっとドリーと肩を並べられるようになったかもしれない。
今を逃したら、きっとまた先延ばしにしてしまうだろう。
告白するなら今しかない。
告白が重荷なるの望んでいない。
ただ知っててほしいのだ。
私の想いを…。
真剣な気持ちを…。
そう、恋心以上の感情。
憧れからの卒業。
そしてせめて女として私を見てほしい。
ただそれだけでいい。
彼女になりたいとかそんな大それた想いではない。
いや、なれるものならなってみたい。
でも女子同士だし…。
宝塚ファンが男役に心を奪われるみたいな…。
うーん…、説明はできない。
とにかく好きなのだ。
全てにおいて最高に恋してる。
愛してるまで想いを高めていくためのステップ。
ホップ、ステップ、ジャンプの前のステップぐらい…。
私はあなたにとって何点の女ですか?
きっと百点満点になります。
今は10点だとしても必ずそうなることを約束します。
ああ、何を考えてるんだろう。
とにかく言うのだ。
言葉にするのだ。
言葉にしないと伝わらない想いを少しだけ知ってもらうのだ。
仕事終わりに、胸を手でおさえ、じっとドリーを待ち伏せた。
私服のドリーの姿が目に入る。
ジーパン姿のドリーは私服でもイケメンである。
いや、むしろ私服の方がかっこいい。
高鳴る鼓動。
ドリーは告白のために普段より可愛い格好をしていた。
本当に好きと言えるだろうか。
そんなこと言って避けられたりしないだろうか。
いや、今告げないといつまでたっても想いを告げることさえできないに違いない。
受け入れられることが目的ではないのだ。
私の想いを、真剣な気持ちを知っていてほしいのだ。
そしてドリーがこっちへ走ってくる。
何で走ってくるのよ。
ゆっくり歩いてきてよ。
もう、すぐそこじゃないの。
ドキドキが止まらない。
どうしよう。
顔が真っ赤だ。
ヤバい。
「ねえ、メイメイ、相談があるの」とドリーが切り出した。
「えっ?」相談?
そしてそのままももち浜まで手を引っ張っていく。
男らしい。
かっこいい。
ああ、私が告白するんじゃなくて、告白されるとしたら、どれだけ素敵だろう…。
メイメイは目がトローンとなっていた。
手をひかれて、ベンチに腰をおろす。
海を見つめたまま、じっと黙ってるドリー。
なんだろう、相談って…。
ちょっと告白する機会を逃しちゃった。
と、ドリーはホッとする。
「実はさ…」とドリーはメイメイの目をじっと見つめてる。
何か言いにくそうだ。
明らかに言葉をつまらせてる。
これはまるで告白される瞬間ではないのだろうか。
「あのさ…」とドリーはモジモジしている。
やだ、顔が高揚してきたよ。
このままイケメン執事のようなセリフを呟くの…。
メイメイは今にも倒れそうである。
ドリーはサッと目線をそらす。
よっぽど躊躇っているんだ。
そんなに言いにくいことって、やっぱり告白以外考えられない。
いつも執事カフェを訪れるファンに言ってるのと同じことを口にするだけでしょ。
そして最後に私の頭をポンポンすればいいだけじゃない。
頑張って。
「お前は俺の女なんだから、俺がお前に何が言いたいのか、察しろよ。どうもお前に恋したみたいだ。だから俺の彼女になれよ」みたいなセリフが聴きたいの…。
ドキドキするから早く頭ポンポンして抱きしめてよ。