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ピンクの一ファンでしかなかった頃メイメイは、池袋の執事カフェに通い詰めだった。

秋葉原のメイド喫茶でバイトを始め、そのバイト代の全てをピンクのために使い込んだ。

そしてガチオタだったピンクの色に染めあがり、メイメイもまたガチガチのオタクになったのである。

毎日毎日執事カフェに通い詰めるようになると、プライベートでアニメイベントに出かけるようになり、親密なお友達になっていった。

ドリーの趣味の中にコスプレがあり、イベントなんかに二人でよく参加すると二人はいつしか注目の的になっていった。

ドリーはその見た目のせいもあって、男装好きの女の子に取り囲まれることが多かった。

「グイグイ来るくせに目が合うとすぐそらす。それってズルいだろう。俺だけお前に夢中になるじゃないか」とドリーが決めポーズを取ると、失神しそうな女子が悲鳴をあげた。

 そして悲鳴をあげていた女子にアゴクイしながら、

「そんなに俺に付きまとうなよ。俺の方が好きだって告白できないだろ」とドリーが言うと、女の子は真っ赤になって後ろに倒れる。

それを抱え込んで抱き寄せるドリー。

「顔真っ赤じゃん。無防備過ぎるだろ。思わずキスしたくなる」と言うと、悲鳴があがる。

相変わらずのイケメンぶりである。

コスプレイベントのドリーはかっこよく、さらりと女子をあしらうイケメンといった振る舞いで黄色い声を上げられてた。

そんなドリーを見ると、メイメイは誇らしい気分になることがある。

こんなイケメンのドリー様のお側に仕えることができて、メイメイは幸せですと思わずひざまずきたい衝動に駆られることもある。

憧れのドリー様が今身近にいる。

それだけで高揚した。

ところがドリーは本物の男性に対して苦手意識が強く、たまにカメラを抱えた男子に囲まれることがあった。

そうなるとドリーはメイメイに抱きついて震えている。

そしてメイメイが護衛役を務めたりする。

そんな時特別な騎士になれた気分になったりもした。

二人ともコミ障で友達が少なかったため、気が付くとお互いが唯一のお友達と呼べるほど近い存在になっていた。

そうしてどんどん仲が深くなっていった。

ただメイメイは推しメンであるドリーに対して一線引いて付き合っているところもあり親友にはなり切れていなかった。

ドリーが執事業を極めるために足利家に勤めるようになると、その姿勢に感銘を受けたメイメイはそれを追いかけて福岡にやってきたのだ。

そして足利家に勤めるようになり、本物のメイド業を極めようと技術を習得する毎日を過ごすようになる。

これが本物のメイドというものなのねと秋葉原のメイド喫茶との違いを肌で感じるようになったのである。

ピンクがメイメイに道を示してくれたのだ。

こうして本物のメイド業を極める日々が続いた。

しかし足利家ではたまにすれ違うだけで、言葉を交わすこともなく、メイメイの中にドリーロスが蔓延し始めていった。

週末はドリーは池袋の執事カフェに登場するのだが、仲良くなりすぎて店では高い壁を感じるようになっていた。

たまに熱い言葉を囁かれることもなくなったなと、しみじみと寂しさを感じるようになる。

熱い言葉をもう一度聴いてみたい。

単純にそれを頼めばドリーはすぐに答えてくれるのかもしれない。

しかしそれはできない話である。


「素直に甘えてみろよ。大人になるな。好きなら好きと言葉にすればいい」

今もたまにイベントに出かけて、黄色い声を浴びるドリーを見ては、自分が言われている気分を味わう。

それでも最近は遠い存在にしか感じられない。

手に届きそうな星なのに手を伸ばしてもつかめない存在。

そんな存在にドリーがなってしまった。

「好きな女が側にいてくれるだけで幸せなんだ。分かるだろ、お前のことだ」

ドリーはずっとかっこいい。


自分に足りないものは何?

それを突き詰めるために福岡に来たはずなのに…。

それがメイメイが変わるきっかけとなった。


メイド長になり、自由にメイドを扱えるようになってから、本気で足利家のメイドたちを秋葉原のメイド喫茶化に変貌させていく。

そのためにメイド服を萌え萌え化させていく。

それの活動の一つとしてユーチューブに動画をあげていくうようになる。

それが少しずつ実を結ぶようになり、やがて異常な人気となり、今に至っている。

これでメイメイはドリーに近づけたとは思えなかった。

それでも多くの人に求められる存在になっていくと、それが自信に変わり、続けることがドリーに近づく一番の道に違いないと思うようになっていった。

そしてドリーが執事たちの服装を色とりどりに変えた時、初めて自分の努力が報われた気がしたのだ。

こうしてドリーは桃執事ドリーになり、みんなからピンクと呼ばれるようになったのだ。


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