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「でもなんで七不思議の話なんかしてるの?」とひとみ。

みんなは思った。

ひとみが聞いたんでしょっと…。

「呪われるわよ、瑠々みたいに…」とひとみは両手を軽く持ち上げて、幽霊の真似をする。

「俺が一番ヤバいじゃん。一人で七不思議の話しちゃったよ」と木本が叫ぶ。

「呪われたら、お前のせいだからな」と胸に十字を切り、「神様、お願します」と祈り始めた。

「プールで泳いでると何かに足を引っ張られるとか…」と佳林が七不思議の話を始める。

「やめろよ、やめろ」と木本が佳林を突き飛ばす。

佳林はそのまま後頭部を机の端にぶつけて倒れた。

「空気の読めないやつだな。呪われたらどうすんだよ」

「イタたたた…」と佳林が起き上がる。

「河童がいるんでしょ」とあかりは七不思議の話をやめようとしない。

「それは昔排水口に子供の足が挟まって…、溺れたらしいよ」と朋子が続ける。

佳林もあかりも朋子も目に精気が感じられない。

ずっと上の空で天井を見上げてる。

「本当、それ…」と由加もまた目が死んでいる。

「怖い…」と愛香は白目をむいたまま。

「幽霊になって排水口に引っ張ってるんでしょ」と瑠々が木本に迫ってくる。

いや、クラス中の女子が木本との距離を縮めるように取り囲む。

「なんだよ、木本、モテモテじゃん」と中田は羨ましそうに呟く。

しかし木本は恐怖で震えていた。

まるでゾンビに囲まれているかのようである。

「そんな七不思議があるんだ」と木本はビビりながら声を出す。

佳林は死んだ目のまま木本に迫る。

「きゅうり、買いに行こうかな」と木本は呟く。

「きゅうり、好きよ」と佳林がブツブツ言っている。

「私もきゅうり、大好き」と女子がそれぞれ声をあげる。

「なんで、みんな、デスボイスみたいなんだよ」と木本は震える。


「七不思議に触れてはならぬ」とひとみの頭の中で声がする。

ひとみは強い痛みを頭に感じた。


すると佳林がいきなり木本の右手に噛みついた。

「イタたた」と木本は声を上げる。

「何やってるのよ」とひとみは佳林に飛び掛かる。

そして木本と引き剥がそうとする。

佳林は木本の手に噛みついたままだ。

するとあかりが木本の右手に噛みついた。

そして首を左右に振ると、木本の指が一気に全部ちぎれてしまった。

「ぎゃあー」と木本は悲鳴をあげる。

ひとみは佳林の口に指を入れて、無理やりこじ開けようとする。

暴れながら佳林は顔を左右に振り続ける。

すると右手の指もまた全て噛み切られてしまう。

ひとみが佳林の口を塞ごうとすると、佳林はひとみの手に噛みついた。

「痛!」とひとみは佳林の顔を見る。

佳林の顔が変わってる。

目が吊り上がり、口に牙が生えている。

やだ、狐憑き…とひとみは思う。

私の指も噛み切られる。

「走り出す人体模型とかも有名よね」と由加が言う。

 なんで七不思議の話をやめないのよ。

由加もまた狐に憑かれているようだ。

と、突然佳林の噛む力が弱まった。

佳林はそのまま床に倒れた。

柚子が佳林の額にお札を貼ったのだ。

そして周りのみんなにお札が貼られた。

最後にひとみにもお札が貼られた。

すると急に意識が飛びそうになる。

ふと目の前に麗華の顏が見えた。

れいちゃん、久しぶり…とひとみは声をかける。

しかしそのまま意識が遠のいていった。


「七不思議に触れてはならぬ」と声がする。

ひとみの頭の中でその言葉が呪文のように響き渡る。


「人体くん、人体くん」とひとみはうなされている。

そして、「それだ!」とひとみは突然大声を上げて目を覚ます。

「そこにいるでしょ、人体模型」と目の前の由加に話しかける。

「いるよ」と由加は平然と答える。

 あれ…。私、夢を見てたのかな………。

「何とも思わないの?」

「どうして?」

「普通、人体模型って動かないじゃない」

「嫌だ、ひとみ。いつもいるじゃないの」

「でも七不思議でしょ」

そうだ、七不思議の話をしてたんだっけ………。

「だって人体模型、走ってないし…」と由加は首をひねってる。

えっ、そこ!そこなの……。

人体模型が動いてることは驚かないの……。

「走る人体模型はレアだけど、人体模型はいつもいるし…」

「そういうもの?」

「そういうものでしょ」

 人体模型は肝臓を取り出して手に持っている。

心臓と肺と脳みそを外して、お手玉を始める。

これを見ても驚かないの?

「ねえ、気持ち悪くない?」とひとみは聴いた。

「どうして…?」

 いや、確かに七不思議だ。

こんな光景を見ても驚かないことが七不思議だ。

授業が始まると、再び人体くんは席につく。

あれ?確か木本君の指を佳林が噛み切ったんじゃなかったっけ…。

佳林はいないかと教室を見回す。

普通に授業を受けている。

佳林が振り返ってひとみを見た。

目が死んでる。

佳林はまだ狐に憑かれたままだ。

あかりを探す。

あかりも普通に授業を聴いている。

みんな、そこにいた。

普通にそこにいて授業を聴いている。

そして木本もまた授業を聴いている。

ただ、木本の両手に包帯が巻かれていた。

やっぱりあれは夢じゃなかったんだ。

木本君は両手の指を失ったに違いない。

なのに、この光景はなんだ。

普通ではないか。

あまりにも普通過ぎないだろうか…。

まるで何もなかったかのように時が流れている。

木本はきっと義手になるのだろう。

それにしてもあまりにも普通ではないか。

まるで何もなかったかのようだ。


「七不思議に触れてはならぬ」とひとみの頭の中に再び声が響き渡る。


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