第91話
「ガタン、ゴトン」電車に揺られながら、
木嶋と富高さんは、近くに空いていた座席に座ったのだ。
富高さんは、電車の中で、クラブ『U』で感じたことを話し始めた。
「今回、クラブ『U』って場所で初めて飲んだよね!《高級な店》の雰囲気があったよ。自分たちが入っていけないみたいだったよ。木嶋君は、どう感じたのかな?」富高さんは、木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「麻美さんが移動する店は、富高さんが、今、話していた通りだと思います。自分たちの給料では、中々、来れない場所ではないかなと思います。はるかさんを、擁護する訳ではないですが、クラブ『H』で飲んだ方がいいように思いますが…。」富高さんに話したのだ。
富高さんは、
「自分から見れば、クラブ『H』も、『U』も変わらないと思うよ。木嶋君は、良く続いていると感心しているよ。」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、リュックからクラブ『U』へ行く時に、購入した缶ビールを取り出し、
「富高さん、これどうぞ!」ビールを手渡したのだ。
「木嶋君、まだビールを買ってあったの?」富高さんが不思議そうに話していた。
木嶋は、
「魔法ですよ。魔法!」富高さんに話したのだ。
富高さんは、
「魔法ね!木嶋君が魔法を使えるなら、はるかさんに掛けた方がいいよ!」富高さんは、木嶋に説得するような話し方をしていたのだ。
「富高さん、自分が魔法なんか使えないですよ!さっきのは、冗談ですよ。冗談!」木嶋は、富高さんに伝えたのだ。
富高さんは、
「本当に、信じたじゃない?木嶋君も、冗談キツイよ」木嶋に話し、
木嶋は、
「たまには、冗談も言わないとね!」富高さんに伝えたのだった。
「それも、そうだね!」木嶋に伝え、
「ハハハ」と、木嶋と一緒に笑っていた。
電車は、桜木町駅に着いた。
「富高さん、横浜駅で横須賀線か東海道線に乗り換えますか?それとも、このまま京浜東北線でいいですか?」木嶋は、富高さんに尋ねたのだ。
「木嶋君、チョット調べてくれるかな?」木嶋に依頼をしたのだ。
「OK!チョット待って下さい。」
木嶋は、ポケットから携帯を取り出したのだ。
「今、桜木町駅から船橋までは…横浜駅で横須賀線に乗り換え、東京駅で直通で船橋まで行くルートと、このまま秋葉原駅で乗り換えて、総武線で行くルートの【2通りルート】ありますが、どちらにしますか?」木嶋は、富高さんに尋ねた。
富高さんは、
「横浜駅で、乗り換えるのがベストな選択だと思います。今日は、かなり飲んでいて、階段の昇降が大変なので、このまま秋葉原駅で乗り換えて行きますよ。」木嶋に話したのだ。
「自分に、気を使わなくてもいいのに…」木嶋は、富高さんに申し訳ない気持ちだった。
富高さんは、
「自分も、ゆっくり帰りたい時もあるんだ。」木嶋に伝えたのだ。
その言葉を聞いたとき、木嶋に張り詰めていた緊張感が、
「フッ」と解き放たれたように、身体から力が抜けて行ったのだ。
電車は、横浜駅に着いたのだ。
時刻は、午後11時20分ぐらいを過ぎたばかりであった。
「横浜駅は、人混みが凄いね!」富高さんが、驚いた表情を見せたのだ。
木嶋は、
「この時間帯は、クラブ『H』に行ったり、同期会の帰り道、横浜駅で乗り換えたりるのですが、いつもこんな感じだよ。」富高さんに話したのだった。
「そうなんだ。自分は、会社の最寄り駅で、飲む回数が多いから関内駅や横浜駅で途中下車はしないからね。木嶋君と飲みに行く機会がない限り通過だね。」富高さんは感心しながら、木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「自分も、横浜駅は単なる乗り換え駅。関内だって野球シーズンに行くのみだよ!飲みに行く場所が増えて良いんじゃないのかな!」
「そう考えた方がいいかな?」富高さんは、木嶋に伝えた。
電車が、横浜駅を発車して、陸橋を越えて、木嶋が降りる最寄り駅に着いたのだ。
リュックを背負い、電車から降りて、木嶋は、手を振った。
富高さんが乗っている電車が、最寄り駅から発車したのを、木嶋は、見送ったのだった。