第904話
木嶋は、最寄り駅までの道を歩き始めた。
「今年は、かれんさんと《二年参り》から始まり、地元での《デート》にも繋がった。何だか•••判らないな!はるかが、《ヤキモチ》を焼くんじゃないかと、《ハラハラ》してしまう。こんな年は、一生に一度•••あるか?ないかだからいいのかも知れない。」自問自答していた。
考え事をしながら歩いていると、《車》や、《バイク》、《自転車》の接近に気がつかない。
特に、冬場は•••寒さに震えて、両手をコートや、ズボンのポケットに入れて歩くことが多い。
それだけ、反射的に、避けられないこともあるのだ。
木嶋は、手袋をすればいいのだが、電車の中で、新聞を読む習慣があるので、煩わしいと感じてしまうことが、多々(たた)ある。
ふと、我に戻った木嶋は、気を取り直して、最寄り駅までの道を《スタスタ》と歩いていた。
最寄り駅までは、およそ•••10分ぐらいで着く。
最近の木嶋は、携帯の画面を、いじっていることがあるので、それ以上に、時間が掛かっていた。
唯一•••木嶋が、1人になれるときは、往復の通勤の中だけなのかも知れない。
昼休みは、小室さんの休憩しているところか?大森さんと一緒にいるか?のどちらかである。
最寄り駅に到着。
これから、また•••同じ日常が始まるのである。
京浜東北線のホームに降りて行く。
見知らぬ新顔がいても、不思議ではない。
同じ時間帯の電車に乗っていると、その人たちの《生活サイクル》も似通って来るのだ。
「間もなく、電車が参ります。危ないですから、黄色い線の内側に下がってお待ち下さい。」構内放送が流れていた。
黄色い線は、視覚障害者が使う•••【点字ブロック】である。
たまに、《駅》、《商店街》、《デパート》などで、《白い杖》を持っている人、《盲導犬》を連れて歩いている人を見かけたら、【点字ブロック】の方に、譲る•••【心構え】が必要である。
中には、【見て見ぬ振り】をする人もいる。
自分の父親や、母親も、いつ•••【障害者】になるかは、分からない。
【明日は、我が身だ】と、ことある事に、周りの人たちに言い続けている。
京浜東北線が、到着。
「プルー•••」
今日も、【発車ベル】が鳴り響いていた。