第898話
木嶋は、携帯の画面を覗いた。
「はるかからだ!何て•••《タイミング》が良すぎるのだろう!」一人でボヤいていた。
本音は、はるかから連絡が来るのが、嬉しい反面、先ほどまでの楽しいひとときが失われて行く。
木嶋は、深呼吸して、電話に出た。
「もしもし、木嶋です。」
「木嶋さん、はるかです。お久しぶりで〜す。」はるかは、木嶋に話していた。
木嶋は、
「お久しぶりです。はるかさん、今•••どちらにいますか?」はるかに問いかけていた。
はるかは、
「今は、横浜にいます。木嶋さんは、地元ですか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「そうです。先ほどまで、かれんさんと一緒にいました。」はるかに答えていた。
はるかは、
「木嶋さん、かれんさんと会っていたのですか?私•••会うことは知りませんでした。」
「急に決まったので、はるかさんに、話すことが出来なかった。ごめんなさい。」なぜか?電話で、頭を下げていた。
人と言うのは、面白いもので、電話口で謝る人がいるが、相手に見えないので、真意が伝わっているのかが、解らない。
それでも、その人と会ったときは、頑張ってしまう自分がいるのである。
はるかは、
「木嶋さん、いつも•••私へ正直に話して頂けるので、助かります。中には、《開き直る人》がいるので•••。」木嶋に告げた。
木嶋は、はるかも、他の男性と会っているのでは•••ないか?と言う疑問心を、常に抱いていた。
「はるかさん、今度•••いつ会いますか?」はるかに尋ねていた。
はるかは、
「そうですね〜。いつにしましょうか•••?木嶋さんのご都合が良い日にちは、ありますか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「来週、会社に行かないと、《生産のボリューム》が分からないので、また、連絡をします。それで、いいですか?」はるかに同意を求めていた。
はるかは、
「分かりました。会社に行ったら、《メール》でもいいので、連絡を待ってますね!」木嶋に話し、電話を切ったのである。
木嶋は•••【フー】とため息をついた。
「何とか•••交わしたが、会ったときが怖い。このまま、はるかさんが、いなくなればいいのに•••。」偽ざる心境である。
気持ちが、《はるか》から、《かれんさん》に傾いているのが、自分にも分かっていた。
しかし、はるかに、別れ話しをする勇気は、木嶋には•••ない。
そんなことを、口に出した瞬間、収拾がつかなくなるのは、見えていた。
木嶋は、
「いずれは、いなくなってしまう。それまでは、我慢かな!」自分に言い聞かせていた。