第89話
木嶋は、
「どうも、さくらさん、初めまして木嶋と言います。宜しくお願いします。」さくらさんに挨拶をしたのだ。
さくらさんは、
「木嶋さん、一番最初に挨拶をしましたよ。忘れましたか?麻美さんから話しを聞いていますよ。」木嶋に伝えながら、名刺を渡したのだ。
木嶋は、ポケットに手を入れながら、名刺を探していた。
「すいませんそうでしたね。自分も、名刺を渡したいところですが、生産現場にはないのですよ!」さくらさんに謝罪をしたのだ。
「木嶋さん、そんなに堅苦しくなることないですよ!」さくらさんは、木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「そう言ってもらえると助かりますよ!」さくらさんに苦笑いをしていたのだ。
「どんな仕事をされているのですか?」さくらさんは、木嶋に問い掛けていた。
木嶋は、
「車の部品メーカーに勤務していますよ!」さくらさんに話したのだ。
さくらさんは、
「車の部品メーカーに勤務されているなら、車のことは詳しいですか?」木嶋に尋ねたのだ。
木嶋は、
「車を、マニアみたいにいじらないと判らないことがたくさんありますね。仲間に聞いたりしますよ!」さくらさんに伝えたのだ。
さくらさんは、
「そうですか…。」少し俯き加減になっていた。
そんな表情を見せていたさくらさんだったのだが、麻美の方に振り向いたのだ。
麻美とさくらさんと二人しか分からない《シグナル》を出していたのだ。木嶋が、その《シグナル》に気が付かなかったのだ。
さくらさんは、
「木嶋さんには、可愛い彼女がいると麻美さんから聞いたのですが…本当ですか?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「彼女じゃありません。あくまで友達ですよ。仲のいい友達。勘違いされていますよ。」さくらさんに、少しばかり怒り気味に話したのだ。
さくらさんは、
「彼女だと思っていましたよ。麻美さんが、そのような表現で話していたので…。」木嶋に伝えたのだ。
「全く…麻美さんは…。」木嶋は、呆れていたのだった。
気を取り直してさくらさんに、木嶋は、話し始めたのだった。
「さくらさん、以前、麻美さんが横浜駅近くのクラブ『H』に、勤務していたことは聞いたことがありますか?」さくらさんに尋ねたのだ。
さくらさんは、
「えぇ。クラブ『H』に勤務していたと聞いたことがありますよ。木嶋さんの可愛い彼女と、そこで知り合ったのですか?」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「紛れも無くクラブ『H』で知り合いました。麻美さんと最初に会ったのもそこですよ。」さくらさんに話していた。
木嶋の額と背中から汗が出てきた。冷や汗かも知れない。
さくらさんは、
「木嶋さんと麻美さんの接点もそこなのですね…。」木嶋の話しに、関心を示していた。
木嶋は、畳み掛けるように、
「麻美さんは、色んなお店に移動するので、先ほどまで、さくらさんが、話しをしていた富高さんと一緒に飲みに行きますが、どのお店も長続きしなくて嫌になりますよ!麻美さんは、ワンダラーですよ。」さくらさんに伝えたのだ。
さくらさんは、
「麻美さんが、移動するたびについて行くのは大変ですね。ワンダラーか…。この言葉の意味は、放浪ですよね。そう言われても、麻美さんは反論出来ませんね!」木嶋に話していた。
木嶋は、
「麻美さんが、お店を出すなら、名前は、ワンダラーで良いんではないでしょうか?」さくらさんに聞いてたのだ。
さくらさんは、
「お店を出すなら命名候補ですかね。」木嶋に話しをするのが精一杯だったのだ。