第864話
投球は、まだまだ続くのである。
「ヒューン」
マシンは、一定の投球間隔で投げ込んでいる。
「タイミングが、合わないな!」
バッターボックス内を移動して、《一番後ろ》から、《一番前》に立とうとしていた。
バッターボックスの一番前だと、《ストレート》に合わせやすいと考えたのだ。
「ヒューン」
また、空振りである。
木嶋に焦りの色が出始めていた。
「今回は、一球も、当たらない。相当ヤバイな!」木嶋は呟いていた。
「ヒューン」
微かに、【木製バット】に、ボールが擦ったみたいである。
「これが、【金属バット】なら、音が聞こえたのに•••。」
自分ながら、選択を間違えたと思ってしまうこともある。
ここまで来たら、何としても、一球ぐらいは、【木製バット】に当てたいと思っている。
「ヒューン」
少し、始動を早めてみた。
すると、先ほどは•••擦っただけのボールが、《真後ろ》に、打球が上がり始めた。
「おっ•••我ながらいい感じだ。それでも、まだ•••遅い。
」
自分自身に《手応え》を掴みかけていた。
「まだ、一球だけでは•••分からない。続けて当たらないことには、《タイミング》が掴みづらい。」
先ほどと、同じ感覚で打てるか?甚だ•••疑問である。
「ヒューン」
打球が、前に飛ぶようになった。
「やっと、前に打球が
飛ぶようになった。それでも、消化不良だ。次のボールを待とう。」
待てど暮らせど、マシンから•••ボールが来ない。
「あれ•••?」
マシンのランプを確認した。
木嶋から、右下のランプが消えていた。 「もう、終わりだったのか!20球は、早く終わってしまうな!もう一度、《チャレンジ》だ。」
Gパンのポケットから、お金を取り出した。
「やはり、《バッティングセンター》は気持ちが、《スカっと》する。不健全なことをするよりも、身体を動かしていた方がいい。」そう感じるのも、不思議ではなかった。
コイン投入口に入れた。
右下のランプが点灯した。
「先ほどと、同じタイミングで打てるのだろうか?」不安な気持ちでいっぱいである。
誰にでも、そのようなことがあると思う。
木嶋は、自信家ではない。
強気なときもあれば、弱気になるときもある。
「良し•••また、頑張るぞ。」
自分自身に鼓舞,
「ヒューン」
「気持ちを鎮めて•••先ほどの《タイミング》で打てる。」自己暗示したのであった。