第863話
木嶋は、父親の忠告を聞き入れた。
「お父さん、お母さん、それじゃあ•••《バッティングセンター》に出掛けてくるよ。」父親と、母親に伝えた。
母親は、
「なるべく、早く帰って来なさいよ。」木嶋に答えていた。
木嶋は、【木製バット】を右手に持ち、ドアを開け、《バッティングセンター》へ•••歩き出したのである。
【木製バット】を、《コン、コン》と、軽く鳴らしながら、家から、《バッティングセンター》までの、道のりを歩き始めた。
《バッティングセンター》に到着。
《バッティングセンター》は、全部で•••《5ゲージ》あった。
その中で、3人が、打ち込んでいた。 その姿を観た•••木嶋は、打球の鋭さに驚いていた。
「やはり、体格が•••ガッチリしていると違うな。自分と比べて、打球の角度が違いすぎる。」
「カキーン、カキーン」金属バットの良い打撃音が、室内に響き渡っていた。
「自分が、あそこまで•••良い打球音を出せるのだろうか?【木製バット】では、出ない。《バッティングセンター》に置いてある【金属バット】に切り替えようかな!」
心が、激しく揺れ動いていた。
確かに、【金属バット】は、真芯に当たらなくても、当たれば飛距離が出る。
【木製バット】は、真芯に当たらないと、飛距離が出ないのである。 「どっちで打とうかな?悩むな•••折角、【木製バット】を家から持ってきたのだから、それで打とう。」
木嶋の顔が、《スッキリ》していた。
「良し、【木製バット】で打つことに決めた。どこの《ゲージ》にしよう?」
《バッティングゲージ》の右上に、球種が記載されていた。
《ストレート》か•••
《変化球》か•••
《変化球》は、一度•••《タイミング》がズレると、合わせるのが難しい。
「最初は、《ストレート》で打ってから、《変化球》に、《チャレンジ》しよう。」
《バッティングゲージ》に向かった。
《ストレート》を打つ前に、Gパンのポケットから、お金を取り出し、《コイン投入口》に入れた。
《ピッチングマシン》が動く前に、軽く•••素振りをした。
《ピッチングマシン》にも、《フライング》がある。
そのときに、《ズッコケ》ないようにしないといけない。
《ヒュン》
最初の投球である。
木嶋の【バット】が出なかった。
「【ストレート】は、こんなに速かったかな?」木嶋が戸惑っていた。
《バッティングセンター》に来るのは、2カ月振りであった。
一週間に一回でも、通っていれば《スピード感》に違和感を感じない。
久しぶりに来ると、慣れるまで、時間が掛かりそうだ。
木嶋は、
「今日は、長くなりそう。」
気持ちを切り替え、《バッターボックス》に入り直したのであった。