第840話
電車が陸橋を渡っている。
居眠りをしていても、その音で気がつくこともあるのだ。
「まもなく、電車が到着致します。お忘れものがないように、お願いします。」女性車掌さんのアナウンスが聞こえていた。
「やっと•••地元に帰ってきたな。」安堵の表情を浮かべていた。
見慣れた景色が見えてきた。
「プシュー」音を立てながら、ドアが開いた。
木嶋は、すかさず電車から降りたのである。
「今、何時なんだろう?」
ふと、左腕にしている腕時計で時間を確認した。
「午後10時になるところか•••。今日は、戻ってきたのが遅かった。まっ•••明日は、休みだから、ゆっくりしようかな!」
一人で、呟きながら、【東海道線】のホームを歩いていた。
すると、木嶋の携帯が•••
「ピローン、ピローン、ピローン」鳴り出していた。
「こんな時間に、誰かな?」疑問心を抱きながら、携帯電話(けいたいでん
わ)の画面を覗いていた。
「あっ•••真美さんからだ。」
急いで、電話を取ったのである。
「もしもし、木嶋です。」
「真美です。木嶋君、今•••大丈夫かな?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「今、電車から降りたばかりですよ。」真美さんに答えていた。
真美さんは、
「今日は、気を遣わせてゴメンなさい。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「そんなことないよ。逆に、楽しかったよ。」真美さんに話したのである。
真美さんは、
「私は、木嶋君と一緒になりたいと思っていたんだ。」
木嶋は、いきなりの告白に、驚きを隠せずにいた。
木嶋は、
「真美さん、いきなり•••何を言うのですか?」真美さんに反論した。
真美さんは、
「木嶋君と、クラブ『H』で出会ったとき•••はるかさんと、私が、席に着いたことは、覚えているかな?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「真美さんと、はるかさん、出会ったときのことは、今でも•••鮮明に脳裏へ焼きついています。」真美さんに告げた。
真美さんは、
「木嶋君の隣りは、はるかさんだったよね?」
「うん、はるかさんだったよ。」真美さんに伝えた。
真美さんは、
「最初に、私が座れば良かったと•••今でも、そう感じています。」木嶋に話していた。
木嶋は、
「なぜ、そう感じたの?」真美さんに聞いていた。
真美さんは、
「最初に、私なら•••はるかさんに、目が行くことはなく、その場限りで終わっていたと•••」木嶋に答えていた。
木嶋は、
「真美さんらしくないね。《夜の仕事》を辞めることが、精神的に堪えているね。」真美さんに伝えた。
真美さんは、
「それも、あるかもね!木嶋君は、はるかさんが、いいのかな?」木嶋に尋ねていた。