第81話
木嶋は、最寄り駅に電車が着いた。
ホームに降りたった。
「フー」息をついた。 「自分が、はるかに、惑わされているかな?」ふとした疑問に駈られていた。
それは、麻美や玲が、木嶋に良く言われているのだ。
【はるかは可愛い。】
木嶋好みの女性である。
それは、【富士松さん】にも言えることだ。
はるかの誕生日に、メールをしたのだ。
「はるかさん、誕生日、おめでとうございます。成人したのだからお酒は、解禁になったね!」
直ぐに、はるかからの返信メールがあったのだ。
「木嶋さん、ありがとうございます。これで、クラブ『H』でも飲めるようになりました。嬉しいんです。何よりも、木嶋さんと飲みに行くことも出来ますね!」ニッコリの顔文字入りのメールだった。
木嶋は、歩きながら、
「そうだね。今まで、はるかさんと飲みに行けなかったので、これを機会に行きましょう。成人式が終わってからだよ。」はるかにメールを送信した。 木嶋は、夜空を見上げたいた。
雪が降ってきたのだ。
気温が高いのか、雪は、重たく湿っていた。
「何も、今日じゃなくてX'masイブに降ればいいのに…。はるかの誕生日祝いには良いかな!」木嶋の心は、晴れずにいたのだ。
『何故だろう。いつもならこんなことがないのに…』口笛を吹きながら、空しさが込み上げてきた。
木嶋にとっては、二年越しのはるかの誕生日当日にお祝いをしたかったのだ。去年は、はるかと出会ったばかりで、気にはしていなかった。
今年、木嶋は、はるかの誕生日を一緒に過ごせると期待を持っていたのも事実であった。
はるかは、約束を守る女性だ。
木嶋との会う日にちを決めるのも、はるかである。信頼をしているたのだ。
木嶋の地元は、一時期、光のイルミネーションを華やかに彩っていたが、世間は、折しもの不況によって、年々、衰退の一途を辿りはじめていたのだ。
「一度くらい、はるかさんと富士松さんにイルミネーションを見せたいな!」両手をポケットに入れ、雪の中を一歩、踏み出していたのだ。
木嶋は、はるかに《恋》をしてしまったのだ。
「本気になってしまいそうだ。富士松さんとは会社の中では話しすら出来るキッカケない。いつまでもズルズル行くのも…。難しい選択になるかな?」木嶋は、思い悩んでいるのだ。
「麻美さんの店に、富高さんと一緒に行くとき聞いてみよう。多分、《はるか》に否定的な意見が多いから《富士松さん》にした方が良さそうだ。」木嶋は、予想をしていたのだ。
会社の仕事納めの日。木嶋は、富高さんのいる場所に昼休みに歩いていた。
「富高さん、いつもの時間の送迎バスでお願いします。」富高さんに伝えたのだ。
富高さんは、
「木嶋君、いつものバスね。了解しました。仕事が遅く終わりそうなら、現場に行くから…夕方5時に終わると思うよ。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「了解しました。何もなければ予定通りのバスに乗ります。」富高さんに話し、その場を立ち去っていた。
仕事終わりのチャイムが、
「キーン、コーン、カーン、コーン」鳴り響いている。
木嶋にとって、慌ただしい一年が終わろうとしていた。