第80話
木嶋は、スポーツショップで商品を見つめながら、思い悩んでいた。
「今のままでいいのだろうか?この先が読めない!」
この不安は、今に始まったことではない。
はるかと、友達としての付き合いが始まってからの懸案事項だった。
会社の送迎バスの中で、木嶋と同じ時間で、富士松さんが乗っているときがあるが、タイミングが悪く、はるかから電話が掛かってくるのだ。
そんな状況が、かれこれ1年が経過していたのだ。
富高さんと一緒に飲みに麻美や玲の店に行くたびに、いつも、はるかの話題になるのも、嫌気が差していた。
木嶋が、セレクトショップを出てから30分ぐらい経過していた。
歩き疲れていたので、スポーツショップ近くの椅子に座っていた。
木嶋は、携帯を取り出した。
着信履歴を見ると、はるかからの着信の多さに驚いていた。
「エッ…こんなにあったの?」
木嶋が、気がつかないはずであった。
はるかは、良く…ワンギリがあり、木嶋が、運よく電話に出ても、
「プチッ…」切れることが多く、そのやり方は、常日頃から腹の中では煮え繰り返っていたのだ。
木嶋は、怒りを堪えながら、はるかに電話をしたのだ。
「プルッ、プルー、プルー」呼び出し音が鳴っている。呼び出し回数が、10コールを過ぎたので、木嶋は、電話を切ったのだ。
はるかには、珍しく電話に出ないのだ。
木嶋は、気を取り直し…再び、はるかに電話をしたのだった。
「プルッ、プルー、プルー」呼び出し音が鳴っている。
はるかが、電話に出たのだ。
「もしも〜し、はるかですが…。ゴメンね。電話に出れなくて…。」
「木嶋です。先ほどは、セレクトショップを飛び出してしまいゴメンナサイ。着信にも、気が付かず申し訳ありません。」はるかにお詫びをしたのだ。
はるかは、
「木嶋さん、何回も掛けたんですよ!」木嶋に怒った様子で話していた。
木嶋も、はるかの様子を察知したのか…
「本当に申し訳ない!平謝りを繰り返していた。
はるかは、
「木嶋さん、今は…どこに居るのですか?」木嶋に尋ねていたのだ。
木嶋は、
「相鉄ジョイナスの2Fのスポーツショップを見ていたのですが…歩き疲れたので、椅子に座っているよ。」はるかに答えていたのだ。
はるかは、
「私は、どうしても『HERMES』のバックが欲しいのです。」木嶋に訴えていたのだ。
木嶋は、
「どうしても、あの『HERMES』のバックがいいのかな?」はるかに確認をしたのだ。
はるかは、
「私は、横浜に来るたびに、『HERMES』のバックが欲しくてプライスを見ているのです。プライスも、クリスマスなので、今、提示している金額が最安値です。」木嶋に、再度、《アピール》をしていた。
木嶋も、ようやく決断をしたのか…はるかの熱意に押されたのか…
「分かりました。今からセレクトショップに行きます。『HERMES』のバックを買いましょう。」はるかに伝えたのだ。
「ありがとうございます。」はるかは、喜んでいた。
木嶋は、椅子から立ち上がり、はるかの待つ、セレクトショップ2Fに歩いて行ったのだ。
「カッ、カッ、カッ」木嶋は、靴の音をしながら階段を上がっていた。
はるかが、
「木嶋さん、来るのが遅いですよ!」悪戯ぽく…木嶋に問いかけていた。
木嶋も、
「ゴメン。」苦笑いをするしかなかったのだ。
はるかが、三色の『HERMES』のバックを持ち、鏡の前で、飾っていた。
木嶋も、店員さんに話したのだ。
「この『HERMES』のバックを購入します。」
財布を取り出し、提示された金額を支払った。
はるかは、
「ありがとうございます。」木嶋にお礼を述べたのだ。
木嶋は、
「ギフトラップにして下さい。」店員さんに話したのだ。
店員さんは、
『HERMES』のボックスに、バックを入れたのだ。
木嶋は、腕時計を見た。
「はるかさん、もうすぐ、クラブ『H』に行く時間ですよ!」はるかに告げたのだ。
はるかは、
「アッ、本当ですね!」
バックのギフトラップが終った。
はるかは、
「木嶋さん、今日は、ありがとうございました。また後で、連絡をします!」木嶋に話し、『HERMES』のバックを持ち、セレクトショップを後にしたのだ。
木嶋は、そこから横浜駅に向かい、
「プルー」発信音が鳴る、東海道線に乗り、家路に着くのだった。