第776話
お姉ちゃんは、
「お父さん、心配かけてゴメンなさい。」父親に話していた。
父親は、
「お姉ちゃんは、人のことを考えないから•••。お母さんだって疲れるのは、当然だよ。車椅子に乗る?」母親に聞いていた。
母親は、
「車椅子に乗りたいね。お母さんが乗ったら、お父さんは、どうするの?」父親に問いかけていた。
父親は、
「椅子に座るからいいよ。ゆっくり歩くからいいよ。何か•••温かい飲み物が欲しくなってきたね。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「温かい飲み物ね!何にしようか?お姉ちゃん、飲み物を買って来ていないよね?」お姉ちゃんに尋ねていた。
お姉ちゃんは、
「何も、買っていないよ。地下街で、買い物していたときに、買わなかったの?」木嶋に答えていた。
木嶋は、両腕を組み、思案していた。
「そう言えば、地下街で、何かを買ったような記憶があるよ。お母さん、バッグの中に入っていないの?」母親に聞いていた。
母親は、
「チョット、待ってね。バッグの中を調べるからね。」木嶋に話し、車椅子に座りながら、バッグの中を探していた。
「地下街で、買った飲み物は、車で、【羽田空港】に来る途中で、飲み切ってしまったね。」お姉ちゃんに答えていた。
お姉ちゃんは、
「【展望デッキ】の近くに、自動販売機は、ないのかな?」木嶋に告げた。
木嶋は、
「自動販売機があるか?ないか?見回って来るよ。」お姉ちゃんに伝え、その場を離れて行った。
今いる場所から、直線距離を歩いてみた。
「暗闇の中で探すのは、一苦労だな。ライトを持ってくれば良かった。」一人で呟いていた。
「この周囲には、自動販売機はないのかな!【反対側の展望デッキ】は、売店と、自動販売機はあったのに•••淋し過ぎる。」頷いていた。
木嶋は、駆け足で•••母親たちが待つところに戻って行った。
お姉ちゃんが、
「自動販売機は、あったの?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「こっちの【展望デッキ】には、自動販売機がないよ。《マイボトル》を持ち込んで、飲んでいたよ。」お姉ちゃんに話したのだ。
お姉ちゃんは、
「同じ、【展望デッキ】でも、こんなに差があるんだね。最初から、いつもの【展望デッキ】に行けば良かった。後悔しているよ!」木嶋に答えたのである。
母親は、
「自動販売機がないなんて、どう言うところなんだろうね!」怒った口調で、木嶋に伝えた。
木嶋は、
「お父さん、いつも行く•••【展望デッキ】に行こうか?」父親に尋ねていた。
父親は、
「そうしようかね!」木嶋の意見に、同意をしたのである。
お姉ちゃんが、
「私が、車椅子を押して行くから、お父さんを頼んだよ。」木嶋に話し、母親と一緒に•••【展望デッキ】を、あとにした。
木嶋は、
「お父さん、行くよ。」父親に声を掛けた。
父親も、
「うん。」木嶋に答え、歩き出したのであった。
「ピローン、ピローン、ピローン」
聞き慣れた着信音が、鳴り響いていた。