第73話
木嶋の予感が的中する。 溝越さんが、木嶋の元に再び、歩いてきた。
「木嶋、申し訳ないのだが、土曜日、臨時出勤して戴けないか?」木嶋に伝えたのだ。
木嶋は、
「一日は、無理ですよ。友達との待ち合わせの時間があるので、午後3時までで良いでしょうか?」溝越さんに話したのだ。
溝越さんは、
「友達との待ち合わせと言うと…若い女性?」
「そうですよ。」木嶋が答えた。
溝越さんは、
「分かった。その時間まででいいよ。あとは、残りのメンバーで何とかなるとは思うよ!」
木嶋は、
「分かりました。」溝越さんに伝えた。
溝越さんは、
「悪いな!」そう言いながら木嶋の元から歩いて行ったのだ。
木嶋は、休憩時間になった時、仕事場に置いてある携帯を手に取り、はるかにメールをしたのだ。
「はるかさん、今週の土曜日、臨時出勤になってしまいました。待ち合わせ時間には、間に合うと思いますが、時間を長く作ることが出来ずに申し訳ありません!」はるかのメールを入れ、返信メールを待つことにしたのだ。
木嶋は、人と待ち合わせなどで変更が出た時や、遅れそうな時は、連絡をするのが木嶋流なのだ。
連絡をするのが当然と言えば、当然と思うが、中には、時間にルーズな人もいる。
木嶋も、人間なので、好不調の差が激しく、体調が思わしくない時には、予定があっても、体調を優先する。
木嶋の仕事は、身体が資本。身体を壊してまでは、好きな人との付き合いでも、遠慮をするのが礼儀なのだと考えているのだった。
仕事が終わり、携帯を覗いた。
メールの着信を知らせるサインが表示されていた。
「誰からだろう!はるかからのメールなら嬉しいな!」期待と不安を胸に秘め、携帯の受信ボックスを開いたのだった。
送信者は、はるかからだった。
木嶋は、少し小躍りをしながらメールを読み出したのだ。
「木嶋さん、お疲れ様です。今度の土曜日は、仕事みたいですが、臨時出勤があるなら仕事をした方が良いですよ!待ち合わせの時間に、間に合うように来て下さい!」
木嶋は、メールの内容に、ホッとしたのだった。
当初は、臨時出勤になるとは考えていなかったのだ。
はるかが、融通を利かせてくれれば、いつもよりは、長く、一緒に居ることも、話しも出来ると思っていた。
今の木嶋と、はるかに必要なのは、
「時間」なのだ。
一人で会社から家に帰り道、ふと想いにフケていた。
「はるかも、自分よりお金を持っている人と付き合っていても不思議ではない!それは、富士松さんにも同じことが言えるではないだろうか?富士松さんは素敵な人。」木嶋の思考回路が、《プスプス》と煙りを出していた!
木嶋は、考え込みやすい性格で、考えれば、考える程に、《ドツボ》に、【ハマリそう】であった。
木嶋は、
「こんな状況の時は、どうすればいいの判らなくなってきた!麻美さんに相談したくても、麻美さんは、はるかに批判的だし…玲さんに話すのも…この際、開き直ればいいかな!!」頭の中で閃いたのだった。
はるかと富士松さんに一目惚れしていて、胸が、張り裂けそうになるのだ。
これが、木嶋のウィークポイントになって行く。
この時、はるかとの友達として交際を続けて行く中で、予想をしない出来事が起こるとは、麻美や玲、会社の先輩方も気が付かなかったのだ。