第72話
確かに、映画を観るには観戦チケットが当たり前だと思うのは当然である。
今、映画を観るには、シネマコンプレックスが多いのが特徴である。
木嶋が、高校生になった時に、地元では、単独で映画興行を行っていた所が、一つの建物の中に入り、共通窓口にて、観たい映画タイトルを言って、料金を支払う方針に変わり戸惑いを感じていたのだ。
木嶋にとっては、映画館は、近くて遠い場所に思えた。
一人で、映画鑑賞をするには淋しく感じるのだ。
「何故、一人で映画を観るのだろう!好きな人と一緒に観れば、そんな不安を感じなくてもいいはずだ。」心の奥底での叫び声が聞こえている。
「富士松さんでも、誘って映画を観に行きたいな!当たって砕けろの精神があれば大丈夫だ。」木嶋は、富士松さんに伝えようとしていた。
富士松さんと話しをするには、どのような形を取ればいいのか判らずに、悪戯に時間だけが過ぎ去って行くのだ。
はるかの、誕生日プレゼントを買いに行く日は、12月21日の土曜日であった。
木嶋は、はるかとデートを心待ちにしていたのだ。
仕事が終わり携帯の画面を覗いた。
木嶋は、
「誰だろう!」不安感が頭を過ぎっていた。
はるかからのメール着信だった。
「はるかです。お久しぶりです。来週、21日土曜日のことで連絡をします。待ち合わせ時間ですが…夕方5時に、横浜駅で待ち合わせでも良いでしょうか?」木嶋に問いかけメールが送信されていた。
木嶋は、
「夕方5時ですね。分かりました。本音を言えばもう少し早い時間が希望ですが…何とか調整は出来ませんか?」はるかにメールを送ったのだ。
はるかは、
「時間の調整はしては見ます。友達との予定が早く終れば、木嶋さんとゆっくり話しが出来たりするのですが…中々、思うようにはならないのです。」木嶋にメールしたのだ。
木嶋は、
「了解しました。21日の当日の待ち合わせ場所に着いては、自分も、会社が臨時出勤にならなければ、横浜に早く来る予定でいますので、一度、電話を下さい。」はるかにメールをしたのだ。
はるかは、
「分かりました。」木嶋にメールを終えたのだ。
「夕方5時か…。臨時出勤さえなければ、時間的には余裕があるはず。最近、有ったり無かったりだし…確率的に、50/50かな!こう言う時に限って、臨時出勤があるような気がする。」木嶋は、そう感じながらも、翌週になるのを待っていた。
翌週になり、木嶋の予感が的中する。
木嶋の元に、溝越さんが歩いて来たのだ。
「木嶋、今度の土曜日、臨時出勤して生産活動をしたいのだが、出て戴きたい。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「今度の土曜日は、出ることが出来ません!」溝越さんに話したのだ。
溝越さんは、
「何か予定でもあるのか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「友達と約束があるのです。」溝越さんに話したのだ。
溝越さんは、
「約束があるなら仕方がないかな!どうしても人がいない時には再考してもらうかも知れないがいいかな?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「その時は、相談させて戴きます。」溝越さんに話し、その場を立ち去って行ったのだ。
木嶋は、
「溝越さんのことだから、また、来るかな?」そう思いながら仕事に励んでいたのだった。