第718話
かれんさんは、
「木嶋さん、早く•••早く•••」木嶋を急かしていた。
木嶋は、
「新年早々(しんねんそうそう)から、出掛けてばかりだ。自分の身体は、大丈夫なのかな?」自分自身で不安になっていた。
公園に到着した。
かれんさんの家から、歩いて•••5分ぐらいの距離である。
公園内を見渡すと、小学2年生ぐらいの女の子が、4人で《羽根つき》をしていた。
木嶋は、
「《羽根つき》か•••!正月らしくていいね。どこかで、凧上げしている•••男の子はいないのかな?」辺りを見渡した。
すると•••木嶋の視界に、一人の少年が、凧を上げていた。 近くにある•••10階建てのマンションよりも、かなり高く上がっていた。
木嶋は、
「風は、少しあるが•••あの高さだと、上げているのを維持するのにも、かなりの労力がいる。近くに行って見てみよう。」珍しく好奇心が湧いたのである。
普段なら、誰が•••何かをしていても、振り向くことはない。
かれんさんや、はるかと一緒にいれば、反応するのである。
木嶋は、
「頑張っているね!」凧を上げている少年に声を掛けた。
少年は、
「うん。ありがとうございます。お兄さんは、あまり見かけない人だね!この近くに、知り合いでもいるの?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「お兄ちゃんは、この公園近くの彼女の家に泊まっているんだ。」少年に答えていた。
少年は、
「お兄さんの彼女って•••今、《羽根つき》をしているお姉さんかな?」ズバリと、確信に迫っていた。
木嶋は、
「何で•••判ったの?」少年に、迷わず聞いていた。
少年は、
「《羽根つき》をしているのは、自分の妹なんだ。」素直に話していた。
木嶋は、
「妹さんなんだ。僕は、何年生かな?」少年に問いかけていた。
少年は、
「僕の名前は、《智》と言って、小学3年生。妹の名前は、《菜摘》って言うんだ。」胸を張って、木嶋に答えていた。
木嶋は、
「《智》君と、《菜摘》ちゃんね。あとの女の子は、友だちかな?」智君に聞いていた。
智君は、
「うん。妹の友だちだよ。《羽根つき大会》が、学校であるから、練習をしているんだ。」木嶋に伝えた。
木嶋は、
「へぇ〜。学校で、《羽根つき大会》があるんだ。パパやママも、観に行くのかな?」智君に尋ねていた。
智君は、暗い顔をしていた。
「どうしたの?」智君に、再び、聞いていた。
智君は、
「僕のパパとママは、正月休みを返上して働いているんだ。」木嶋に話していた。
木嶋は、
「正月休みを返上して働いているって•••
何の仕事をしているの?」智君に問いかけた。
「コンビニだよ。」そう答えるのが、精一杯であった。