第70話
玲との会話を終えた木嶋は、麻美のことが脳裏を掠めていた。
「玲さんに、話したように、麻美さんにも、映画のチケットのことを話さないとイケないな!」
この時、時刻は、夕方6時であった。
「麻美さんの出勤時間は夜7時。まだ、家を出る前。電話すれば出るかな!」木嶋は、コートのポケットに入れていた携帯を取り出した。
「プルッ、プルー、プルー」呼び出し音が鳴り響いてる。
麻美が電話に出た。
「もしも〜し。麻美ですが…。」
「木嶋です。お久しぶりです。元気でしょうか?」木嶋は、麻美に尋ねたのだ。
麻美は、
「私は、元気にしていました。木嶋君の声を聞けて嬉しいです。」木嶋に話したのだ。
木嶋は、
「随分、嬉しいことを言いますね!照れるじゃないですか?話したいことがありまして電話をしました。」麻美に話していた。
麻美は、
「木嶋君に話したいことがあるのです。」木嶋に問いかけるように話し始めたのだ。
木嶋は、
「凄〜い嫌な予感が漂っていますが…。」麻美に尋ねたのだ。
麻美は、
「最近、木嶋君、勘が鋭くなりましたね。」
木嶋は、
「やっぱり、そうなんですかの?富高さんに何て話せば良いのかな?」麻美に怒った口調で話していた。
「富高さんが、今月末に来てくれるのは個人的には、嬉しく思います。しかし自分が店の雰囲気に慣れないのです。」木嶋に話したのだ。
「富高さん、確実にトラウマになるよ!店に行くのだって、拒絶反応を起こすよ!」麻美に話していた。
富高さんが、麻美がいる店に行く度に、麻美が辞めてしまう。偶然にしては出来過ぎている。
木嶋は、玲に聞いても、【理由が分からない】と話すのだ。
木嶋は、
「いい加減にしてほしいよ!移動先まで、ついていく自分たちが大変なんですよ!」麻美に何度も言っている台詞を今回も、木嶋は言ってしまったのだ!
麻美は、これくらいで凹み程、神経質ではない。図太くないと夜の仕事は出来ないと木嶋は、心の奥底で感じ取っていた。
玲も麻美も、子供がいるのだった。考えて見ると、木嶋は、今だに独身生活をしている。子供や奥さんがいてもおかしくない年齢でもある。
はるかと友達としての付き合いはあるが、告白をするタイミングを見つけられずにいるのであった。
麻美は、はるかには、批判的である。木嶋も、忠告は何度もされてはいるが、心が揺れ動くのは良くないのだ。
揺れ動くと言うことは、はるかに対する裏切り行為しかならないのだった。
「木嶋君、はるかさんと仲良くやっているの?」麻美は、木嶋に尋ねたのだ。
木嶋は、
「はるかさんとは、仲良くやっていますよ!麻美さんに、チョット聞きたいことがありますが大丈夫かな?」麻美に聞いていた。
「何だろう。聞きたいことって…凄く、ドキドキしてしまうのですが…。」
「そんなに緊張しなくてもいいですよ!大袈裟にしないでよ!」木嶋は、麻美に笑いながら話し…
「麻美さん、映画は観に行きますか?」
「映画は、子供と一緒に良く観に行きますよ!何か…お得な情報があるのかな?」木嶋に聞いたのだ。
木嶋は、
「先日、地元のチケットショップで映画のチケットを、値段も安かったので、衝動買いをしました。期間も半年間あります。どうでしょうか?」麻美に尋ねていた。
麻美は、弾んだ声で…
「これから年末年始で観たい映画もあるので、譲って下さい。木嶋君の手元に何枚あるのかな?」木嶋に聞いたのだ。
木嶋は、
「手元に…10枚あります。全部、麻美さんに譲ることは出来ません!自分も観たい映画があるので…この映画のチケットは、玲さんにも3枚譲ります。あと残り枚数は…7枚です。」麻美に伝えたのだ。
麻美は、
「玲さんに、3枚譲ったなら…私も、同じ3枚下さい。」木嶋にお願いしたのだ。
木嶋は、快く、
「分かりました…3枚ですね。いつ渡しに行けばいいのかな?」麻美に尋ねたのだ。
麻美は、
「木嶋君が、富高さんと一緒に来る日で良いですよ。」
「分かりました。富高さんと店に行くまで、若干、日にちがありますが、待っていて下さい!その時に、玲さんの分も預けますので、渡して戴きたいと思います。」木嶋は、電話口で頭を下げたのだった。
麻美は、
「分かりました。玲さんには、私から連絡をしてチケットを渡しますね。来店までの間、楽しみに待ってます!」木嶋に伝えて、電話を切ったのだ!
麻美との会話を終えた木嶋は、肩の荷が降りたように、力がフッと抜けたのだった。
木嶋の携帯が、鳴り出したのだった…。