第657話
木嶋は、空き缶を手に取り、自動販売機横にある…《空き缶専用のごみ箱》に捨てた。
父親は、立ち上がったときに、足元が、おぼつかないことがある。
木嶋は、常に…父親の後ろを歩いていた。
父親は、
「お母さんたちは、まだ…食品売り場なのかね」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「お父さんのと、自分食べたいものを買うようなことを言っていたよ。早く行かないと、お姉ちゃんたちが、《デパート》から出てきてしまうよ。」父親に伝えた。
父親は、
「そうかい。早歩きしようかね?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「早歩きをしたら、心臓に良くないよ。」父親に答えていた。
父親は、
「もうすぐ…《デパート》に着くな!お母さんたちに、連絡をしなくていいか?」
「今、電話をするから…そこにある椅子に座っていればいいよ。」木嶋は、父親に話したのである。
携帯の発信履歴から、お姉ちゃんの番号を《スクロール》した。
「プッ、プッ、プルー」呼び出し音が鳴り響いている。
5コールしたら、留守電に変わった。
「またか…!」そんな心境になるのも、無理はなかった。
木嶋は、
「お父さん、今…お姉ちゃんの携帯に掛けたら、留守電になっていたので、これから…お母さんの携帯に電話をするよ!」父親に告げた。
父親は、
「お姉ちゃん、また…留守電なのか?仕方ないね!お母さんも、電話に出ないのではないか?」木嶋に問いかけていた。
木嶋は、
「そうかも知れないね!」父親に苦笑いをしたのである。
再び…携帯の発信履歴から、母親の携帯に掛けたのである。
「プッ、プッ、プルー」呼び出し音が鳴っている。
母親が、電話に出た。
「もしもし、今…どこにいるの?」木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「今…《デパート》の食品売り場の前にいるよ。お父さんは、椅子に座っているよ。」母親に答えていた。
母親は、
「食品売り場の前にいるのね?お父さん、歩けるの?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「お父さん、歩くと言っているから大丈夫じゃないの?」母親に伝えた。
母親は、
「じゃあ…お父さんを連れて、鮮魚コーナーに来てくれる?」木嶋に、父親を連れてくるように話したのである。
木嶋は、
「了解です。お姉ちゃんも、一緒にいるんでしょ?」母親に聞いていた。
母親は、
「お姉ちゃんも一緒だよ。」木嶋に伝え、電話を切ったのである。
木嶋は、
「お父さん、鮮魚コーナーに行くよ!」父親に告げた。
父親は、
「鮮魚コーナーか…。《本マグロ》でも食べたいね。」木嶋に答えていた。
木嶋は、
「《本マグロ》もいいね。買うなら…《大トロ》がいいね!でも、金額が高いからね。」父親に話していた。
父親は、
「《大トロ》がダメなら…《中トロ》でもいいよ。」木嶋に告げた。
木嶋は、
「あとは、交渉次第だね。」父親に伝えたのである。
父親の歩く《スピード》が、いつもより…早く感じていた。
木嶋は、
「自分の好きなものを買える楽しみがないと…《張り合い》がないからね。」思わず…納得していた。