第639話
木嶋は、
「麻美さんが…店を辞めると言って来たんだ。」富高さんに、重い口を開いた。
富高さんは、
「麻美さん、店を辞めるんだ。残念だな!あまり、回数も行っていないので、淋しい気持ちはあるよ。」意外と冷静に受け答えていた。
木嶋は、富高さんの冷静さに…
「自分たちの行きつけの店が、無くなってしまうのは、残念だよね。富高さん、もっと…《驚く》と思っていたんだけど、意外なほど、冷静なので、麻美さんから、店を辞める話しを、聞いていたのかな?」尋ねていた。
富高さんは、
「いや、本人から…辞める話しは聞いていないよ。木嶋君と、一緒に、店に顔を出していないよ。前に来店した時に、《クラブ》を経営するのは、大変だと、ボヤいていたよ。」木嶋に告げた。
木嶋は、
「それは、確かに言えるよね!麻美さんの店は、最寄り駅の関内駅、馬車道駅から歩いて来るにも、距離(きょりがある。元々(もともと)…は官庁街。平日以外は、《プロ野球》や何か…《イベント》がない限り、人は、集まらないからね。自分が、麻美さんと同じ…経営している立場なら、確実に…《大変だ》と、溢していると思うよ。」富高さんに話したのだ。
富高さんは、
「そうだよね。麻美さん、いつまで、店にいるのかな?」
「1月末で、辞めると話していたので、その前に…富高さんと、一緒に来て欲しいと…嘆願されたよ。どうする?」木嶋は、富高さんに問いかけていた。
富高さんは、
「1月末と言うと…来月だね!木嶋君は、どうするの?」木嶋に答えを求めていた。
木嶋は、
「大切なのは、そこなんだよね。麻美さんが、辞めるからと言って…【行くべきか?】、【行かないべきか?】、正直、迷っているのが、現実だね。」今の気持ちを、富高さんに打ち明けた。
富高さんは、
「木嶋君でも、迷いがあるんだね。今まで、麻美さんが、店を移動するたびに、その店に…顔を出してきたのは、事実だよね。店を辞めると言って、実際は、他に移るんじゃないの?」疑心暗鬼になりながらも、木嶋に答えていた。
木嶋は、
「富高さんが、疑心暗鬼になる気持ちは、判ります。ただ、今回は、完全に辞めると言っていたので…【引退宣言】と捉えていいはずです。店を移る話しはないと思うよ。」
「自分も、麻美さんに真意を聞きたいから、店に、顔を出したいな!木嶋君、それでいいかな?」富高さんは、木嶋に聞いていた。
木嶋は、
「こんな話しで、申し訳ない。麻美さんには、メールで伝えます。これから…はるかさんと、会う約束をしています。もし…予定が空いていて、一緒に行きたいと話していたら、連れて行ってもいいかな?」富高さんに問いかけていた。
富高さんは、
「はるかさんが、一緒に行きたいと言うなら、行ってもいいよ。」木嶋に答えていた。
木嶋は、
「ありがとうございます。」富高さんに頭を下げていた。
会社の送迎バスが…最寄り駅に到着した。
木嶋は、富高さんと一緒に、最寄り駅の階段を降りて行く。
木嶋は、
「富高さん、明日…職場に伺います。」富高さんに告げた。
富高さんは、
「じゃあ…待っているよ。」木嶋に話し、横浜市営地下鉄の乗り場に向かった。
木嶋も、相鉄線の改札口に歩き出したのであった。