第637話
木嶋は、
「麻美さん、自分で立ち上げた店を…玲さんに託すのはいいが、これからの生活はらどうするんだろう?まだ、娘も小さいのに…」不安ばかりが…頭の中を過り…一人で、心を痛めていた。
胸を手に当て、ふと考えて見れば…
「はるかが、麻美さんの店で働きたいと言って、相談に行った時期はある。あれから、時間も経っているし、《タイミング》もずれている。頭を捻って考えても、店の中で…大きな《トラブル》に巻き込まれたとしか考えられない。今回は、慎重に話しをしないと、いけないな。」
続けて…
「どちらにしても、今日の夕方か?明日の昼休みに、富高さんに伝えないといけないな。」木嶋は、富高さんの職場に歩いて行くことを決めたのである。
「この年末にきて、はるか、かれんさん、麻美さんと、急にバタバタと…動きが激しいな。来年は、もっと…何かが、変わるのかな?」ボヤかずにいられなかった。
木嶋の不安が、よもや…的中するなんて、思いも、寄らなかった。
午後の仕事を終え…
木嶋は、富高さんの職場に行こうか?どうしようかと思案していた。
「いや、待てよ…今、話しに行くより…明日の昼休みに、歩いて行った方がいいかな?」
木嶋は、職場にある…掛け時計で、時間を見ていた。
「午後5時5分か…今日、残業じゃあなければ、話しに行くのも可能だが、行って戻って来るのに時間が掛かる。明日の昼休みに、話しに行こう。」明日にすることに決めたのであった。
残業の時間に入る前に、携帯を覗いた。
すると…着信を知らせるサインが、携帯の側面から出ていた。
「どんな知らせだろう?」
心臓の鼓動が…
【バクン、バクン】と鳴っていた。
普段は、強気な木嶋だが、不安になると、弱気な木嶋と、両方が存在する。
人は、弱いものである。
その弱さを、周りに見せるか?見せないかは?その人次第である。
携帯を手に取った。
「誰かな?」興味津々(きょうみしんしん)に、開いた。
着信があったのは、メールであった。
「はるか…からだ。」
メールを読み出した。
「残業なのですね。判りました。横浜に着いたら、連絡をお願いいたします。」
木嶋は、すぐに…
「了解しました。横浜に着く…おおよその時間は、午後8時ぐらいです。」はるかに返信したのであった。
そして…
「フー」と息を吐いた。
残業時間に入り、木嶋の元に、溝越さんが歩いてきた。
溝越さんは、
「木嶋、何か…あったのか?」木嶋に尋ねていた。
木嶋は、
「自分と同じ年代の女性が、店を経営しているにも係わらず、仕事を辞めるので、富高さんと一緒に、会いに来て欲しい…と言われて悩んでいます。」溝越さんに、今の心境を伝えたのだ。
溝越さんは、
「女性が、仕事を辞めるのは、結婚するからではないのか?」木嶋に話していた。
木嶋は、
「やっぱりね!」思わず納得してしまったのであった。